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夜を駆ける

 雨ばかりだった今年の夏には、思い出があまり多くない。

 そんな中で、強く思い出に残った出来事が一つある。

 横浜アリーナで参加した、スピッツの結成30周年の記念ライブである。



 スピッツというバンドは今年で結成30周年であるが、デビューして26年になる。そして私は22年前からずっと熱心にこのバンドの音楽を聴いている。彼らの音楽のほとんどを、リアルタイムで聴いてきた。

 バンドの歴史は、それを聴くリスナー自身の歴史でもあると思う。昔の曲を聴けば、その曲がリリースされた当時の自分のことが思い出される。特に音楽というのは不思議なもので、昔良く聴いていたメロディーを聴くと、それを聴いていた当時のことが鮮明に脳裏に蘇ってくる。それで今回のライブは、自分の過去を振り返る機会にもなった。

 ところでスピッツは、今回のツアーに先立ち、これまでのシングル曲が集約されたベストアルバムが発売していた。それで今回のライブもそのアルバムに収められたシングル曲が中心になるのではないかと思っていた。しかし、蓋を開けてみるとシングル曲にこだわらず、新旧織り交ぜたさまざまな曲が演奏された。

 シングル曲はもちろん好きだし、気に入っている曲も多い。ただ、どんなバンドでもアルバムに収められたあまり有名でない曲にそのバンドの音楽の神髄を感じるようなことがある。今回はまさにそんな曲もいくつか演奏された。

 その曲順はもちろん、リリースされた順になっているわけではない。彼らがいろいろと意図した上での順番であろう。それで、曲ごとにそれを熱心に聴いていた頃の出来事が思い出されるから、自分の人生の思い出を行ったり来たりするような感覚であった。当時通っていた学校、バイト先、勤め先の情景などが、次々と浮かんでくる。まさに走馬灯を回すかのごとくであった。ライブが進んでいくにつれ私は走馬灯を回し過ぎだ、とさえ思った。

 そんな中、ライブ中盤で「夜を駆ける」という曲が始まったときには、頭の中で「あ、あの曲か」と認識するまでもなく、途端に青森のことが想起された。確かにその曲がリリースされた年、私は青森を旅していた。ただ、ライブが終わってから調べてみると、実際には青森を旅してから一ヵ月後にリリースされた曲であった。でも、その当時の一番の思い出である青森の旅と強く結び付いていたのだろう。それにしても「あぁ、この曲が出た頃に青森を旅したことがあったな」ということを認識する以前に、イントロのピアノ音を聴いただけで青森のことがパッと思い浮かんでくるとは、自分でも恐ろしくなってきた。

 そうやって、その時々で自分が熱心に聴いていた曲は、いわばその当時の自分にとっての主題歌でありテーマ曲である。身勝手な言い方をすれば、十年とか二十年前のそういう主題歌やテーマ曲を、今になって生で聴けるのは贅沢だなと思った。それができるのも、このバンドが長く活躍し続けてきたからこそである。そのことには、本当に感謝したいと思った。

 ところで、この日の座席は、スタンド席の3階、しかもだいぶ端の方であった。ステージを右下に見下ろすような位置である。

 アリーナ席であれば当然、みな立ち上がってノリノリになるわけだが、私のいたスタンド席のあたりの観客はほとんど皆ずっと座ったままであった。もちろんそれぞれに手拍子を打ったり振付を楽しむ人もいたが、ずっと座っていても良かったのはありがたかった。私はステージをじっと見つめ、一曲一曲を大事に想いながら、ずっと聴き入っていた。ライブの場合、参加するというイメージが強い。ただ音楽を聴きに行くというより、バンドと一緒に歌ったり踊ったりすることがライブの楽しみである。でも、この日の私はまさに聴きに行ったという感じであった。それもまたライブの楽しみ方と言える。それだけに、この日のライブは思い出深いものとなった。

 特に、このステージでは、ヴォーカルの草野マサムネの声がとてもよく通っていた。もちろん、歌は上手い。バンドの奏でる音も良かった。ライブでは聴く位置や会場の設備によって音のバランスというのはなかなか難しいものだが、ヴォーカルの声が良く通っていたのは何よりのことであった。本当に、いいライブであった。

 そしてそんな素晴らしいステージを通して、自分の半生を振り返る時間にもなった。わりと初期の頃の曲が多かったから、私も自分の若い日のことを思い出すことが多かった。そうやって振り返ってみると、自分はなんてダメな若者だったんだろうなという気がしてきた。

 若き私はいつも遠慮がちで、何事にも中途半端であった。もっと学問なり、サークルなり、趣味なり、バイトなり、恋愛なりに、のめり込めば良かった。のめり込みもせず、どこかイジイジとしていた。自分でもやるせなかっただろう。でも、そんな自分のそばにスピッツの楽曲があった。そして、自分を救ってくれた。

 そして今も、スピッツの楽曲がそばにある。





 私が青森を旅したのは2002年8月のことである。その年の12月、東北新幹線が盛岡から八戸まで延伸開業するのに伴い、同区間の在来線の東北本線は第三セクターへ切り離されることになっていた。そして、そこを通っていた寝台特急のうち、青森行きの「はくつる」が廃止されることも決まっていた。その「はくつる」に乗り、私は青森へ向かった。
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 そして今回のライブで聴いた「夜を駆ける」が収録された「三日月ロック」というアルバムが発売されたのが2002年9月であった。青森の旅の途上で「夜を駆ける」を聴いていたわけではないのだが、その時期の私の思い出として、青森を旅したことが脳裏に強く残っていたのだろう。つまり、私にとって「夜を駆ける」のは、まさに廃止直前の寝台特急「はくつる」であったということになる。

 夜を駆ける 今は撃たないで
 滅びの定め破って 駆けていく


 きっと、今年リリースされたスピッツの曲をあと何年かして聴いたとき、今の自分のことが思い出されるだろう。そのとき、どんなことが想起されるだろうか。

 青森のことを思い出した「夜を駆ける」のように、どこか思い出深い旅をしたときのことが思い浮かべられるようでありたいと、いま願っている。


寝台特急「はくつる」 東北本線青森駅にて
2002.8.9
by railwaylife | 2017-10-31 23:15 | 寝台特急 | Comments(0)

車内のドアの話

 毎朝の通勤で利用している電車は、乗るときはけっこうぎゅうぎゅうだが、途中いくつかの乗り換え駅でだんだん空いてくる。それで、乗車のうちの後半は座席に就けることが多い。そのときによく座る場所が車両の一番隅である。やはり、人間というか生き物は隅っこが好きなものである。

 そうやって隅っこに座ると、すぐ目の前にとなりの車両との境のドアがあり、そこを開け閉めする乗客の姿を目にすることになる。

 電車が動いてる間に、車両間を移動する乗客は多い。特に朝は、急いでいる人たちが降車駅に着くまでにその駅の階段やエスカレータに近い車両へと移動しているのだろう。

 そういう人たちを見ていると、車両の移動をするときにはだいたいの人が開けたドアを閉めないで行ってしまう。急いでいるからそれどころではないのかもしれないが、開けっ放しで行ってしまう人は家や職場でも開けたドアを閉めなかったりするのかなあ、なんて私は考えたりしている。

 ただ、最近の車両のドアは取っ手のところに「自動で閉まります」と書いてあったりする通り、人が閉めなくても勝手に閉まるようになっている。どういう仕組みになっているのかはわからないが、たいていは電車がカーブして傾いたときなどにぴたっと閉まる。
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 もっとも昔の車両は、車両と車両の間にドアなどないこともあった。京王井の頭線を昔よく利用していたという知人が話してくれたことがあったが、当時の井の頭線の電車は車両の間にドアがなくて、その継ぎ目も広く開いていたから、端の車両に乗っていると反対の端の車両まで車内が良く見渡せたという。座席に座っている乗客の足がずらっと並んで見える。そんな光景が、昔の井の頭線の一番の記憶だそうだ。

 最近の車両は必ずドアが付いているし、先に書いたように自動で閉まるようにもなっている。以前に何かで読んだことがあるが、車両間のドアを閉めるのは、ある車両で火災が発生したときに他の車両へ延焼するのを防ぐ目的があるらしい。だから、やはり開けたドアは閉めておくのが正しいのかもしれない。

 と言っても、私は電車が動いているときに車両を移動するのはあまり好きではないので、通勤電車ではドアの開け閉めを気にすることはほとんどない。



 ただ、寝台特急に乗ったときは、よく車両の間を移動したものであった。
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 食堂車やロビーカーが付いていれば、その車両へ移動することがあった。また、途中駅で機関車の付け替えがあるようなときは、その駅に着く前に先頭の車両まで行っておいて、付け替え作業を見るのに備えたりしたものだった。特に自分が個室寝台に乗っているときは、個室に施錠すれば心おきなく列車内を移動できた。

 そんな移動のとき、車両間のドアが寝台の種類によって違ったりして面白いものであった。また、寝台列車の場合はデッキから客室へ入るところにもドアがあるので、車両を移動するときは開け閉めするドアが多く大変だった。もちろん、そのときは開けたドアを必ず閉めるように心掛けていたし、個室寝台車両のドアには自動のものもあった。初めてそのことを知ったときは感動したものであった。

 いま、食堂車やロビーカーの付いている列車に乗ることはないし、機関車の付け替えが途中であるような列車もない。だから、車両の移動をするということもほとんどない。

 乗車中に車内のドアを行き来するのは、せいぜい新幹線や特急列車で、車両端の洗面所へ行くときくらいである。それも最近はだいたいが自動ドアだから、開け閉めを気にする必要もない。

by railwaylife | 2017-10-28 10:00 | その他 | Comments(0)

そうこうしているうちに霜降

 やけに暑くなったり、急に寒くなったり、雨が続いたり、台風が来たりしている間に日常が忙しくなったり体調を崩したりして、気が付けばもう10月も下旬である。毎年のことながら、その年が残り三、四ヵ月になるとやけに慌ただしくなり、一日一日の経過も早くなっていく。まるで渦に呑み込まれていくようにして、年末まで一気に時が流れてゆく。

 そんな日々が続くからこそ、時々は立ち止まってそのときそのときの風景をしかと眺めたくなる。

 昨日は二十四節気の一つ、霜降であった。

 文字通り霜が降りる頃という意味だが、台風が持ってきた暖かい空気で気温は上がった。そして、台風が雲を持ち去ったおかげで、秋の日差しを眺めることもできた。
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 霜が降りるには程遠い陽気だったが、久々にこの時期らしさを感じることはできた。


東京メトロ
7000系電車 東急東横線多摩川駅~新丸子駅にて 2017.10.23
by railwaylife | 2017-10-24 23:30 | 東京メトロ | Comments(0)

蒼いE7

 E5系を蒼く染めて味をしめたので、他の車両も蒼く染めてみたくなった。

 そこで、E7系も蒼くしてみた。
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 このE7系には、まだ乗ったことがない。

 だから、この車両で往く旅路のイメージはまさに、蒼く茫洋としたものである。


新幹線
E7系電車
「あさま」
620号 東北新幹線上野駅~大宮駅にて 2017.10.14
by railwaylife | 2017-10-23 23:30 | 新幹線 | Comments(0)

蒼いE5

 秋雨のシトシトと降る俯瞰風景の空には、色がなかった。

 そんなときは、風景に文字通り色を付けたくなるものである。

 それで、ホワイトバランスをいじって少し遊んでみた。
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 行き交う緑のE5系も、蒼い色に染まった。


新幹線
E5系電車
「はやぶさ」
61号 東北新幹線上野駅~大宮駅にて 2017.10.14
by railwaylife | 2017-10-22 23:00 | 新幹線 | Comments(0)

鉄道開業百四十五年

 昨日、2017年10月14日で、日本の鉄道は開業百四十五周年を迎えた。

 今から百四十五年前の1872年10月14日(旧暦では9月12日)、新橋-横浜間に列車が走り始めた。

 その列車の車窓には、どんな風景が広がっていただろうか。

 海原が、大きく広がっていたことは間違いない。海岸は、今より線路に近いところにあったはずである。その海原は、秋空の下で青く輝いていただろうか。白い雲の下で、鉛色に沈んでいただろうか。いずれにせよ、それに乗客が目を奪われたとき、日本の車窓風景の歴史も始まったと言ってよい。



 昨日の鉄道の日、遠くへと向かう列車を何本も見送った。
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 列車が白い空へ向かって去って行くのを見送るとき想うことは、その列車にその後広がる車窓風景であった。

 これからも、鉄道の旅で車窓風景を楽しみ、日本の車窓風景の歴史を紡いでいけるようでありたい。

 鉄道開業百四十五年の日に願うことであった。


新幹線
E5系電車 東北新幹線上野駅~大宮駅にて 2017.10.14
by railwaylife | 2017-10-15 14:00 | 新幹線 | Comments(0)

生活名所路線は生活路線

 昨日10月9日は、東急池上線の1日フリー乗車DAYであった。池上線が、一日無料で乗車できるという日である。

 私もその無料乗車を利用し、普段街歩きをしている会の人たちと一緒に池上線沿線の名所・旧跡を巡ってみた。
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 この企画は、池上線開業90周年を記念してのことだったそうだが、その意図は「生活名所」たる池上線沿線を多くの人に知ってもらいたいというところにあったようだ。

 池上線沿線には、東横線沿線にあるナカメ・ガオカ・ムサコといったような人気の街があるわけではない。そこにあるのは、人々がふつうに生活する街である。でもそれを「生活名所」と名付け名所にすることで多くの人を呼び込み、沿線を活気付けようというのが目的であったのだろう。

 その点では、一定の成果があったのではないかと思う。実に多くの人が池上線を利用し、沿線の商店街が大賑わいになっているのを目の当たりにした。

 ただ、無料になった池上線を利用して思ったのは、この「生活名所」を往く池上線は、改めて言うまでもなく「生活路線」だということである。

 その「生活路線」として普段からこの路線を利用している乗客にとっては、無料乗車はさぞ迷惑なことであっただろう。休日の日中なのに、平日朝のラッシュ並みの混みようが続いた。買い物のカートにすがりながら電車の乗り降りに難渋するお婆さんがいた。車両の隅に押しやられながらベビーカーの赤ちゃんに気を遣う若いお母さんがいた。普段の休日なら、何の気なしに電車を利用していたことだろう。その日常を、無料乗車を目当てに押し寄せた人たちが奪ってしまった。自分も含めて、悪いことをしてしまったのではないかなあという気はした。ただ、こうなることは主催者側も事前にわかっていたはずである。

 ローカルな路線に「生活路線」として利用している人以外の利用者を取り込もうと努力するのは大事なことだと思う。でも、そのために普段から「生活路線」として利用している人たちが不自由を強いられるのは本末転倒のような気もした。

 今度は、普段から利用している人を大切にするような企画があってもいいんじゃないかなと思った。


写真は無料乗車を利用して巡った池上線沿線の名所
1枚目 東日本最長の長さを誇るという戸越銀座商店街(戸越銀座駅下車)
2枚目 池畔に勝海舟夫妻の墓所がある洗足池(洗足池駅下車)
3枚目 日蓮宗の影響が色濃い雪谷八幡神社(石川台駅下車)
4枚目 関東では最古の五重塔がある池上本門寺(池上駅下車)
5枚目 松竹キネマ撮影所の歴史を伝える松竹橋(蒲田駅下車)


私はどうもハレ(非日常)の場面が苦手である。たとえ賑わいや盛り上がりや華やかさに欠けるとしても、ケ(日常)の場面をじっくり、ゆったりと眺める方が性に合っている気がする。だから、近いうちに改めて池上線沿線を訪れたいと思っている。そうすればきっと「生活名所」の本来の姿を目にすることができるだろう。

by railwaylife | 2017-10-10 23:00 | 東急 | Comments(0)

鎗ヶ崎を抜けて

 始発の渋谷駅付近が地下化された今、代官山駅先のトンネルを抜け中目黒駅にかかるこのあたりは、東急東横線の下り電車が初めて明るいところへ躍り出る場所となった。
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 ところで、この場所のすぐ近くにある、駒沢通りと旧山手通りの交差点は「鎗ヶ崎」という名である。

 ずいぶん物騒な名だが、淀橋台地の先端が鎗の穂先のように突き出ているのでこの名があるそうだ。東急東横線は、この鎗ヶ崎の下をトンネルで抜けている。つまり、淀橋台地の一番細いところを抜けて目黒川の谷へと出ていることになる。


ここで一句、

 鎗が先 抜けて目黒の 花見かな


東京メトロ7000系電車 東急東横線代官山駅~中目黒駅にて 2017.7.30
by railwaylife | 2017-10-09 10:00 | 東京メトロ | Comments(0)

第三世代

 東京メトロ日比谷線の車両の歴史を紐解くと、最初の世代は営団3000系、東武2000系、東急7000系、次の世代が営団03系、東武20000系、東急1000系、そして今回登場した東京メトロ13000系、東武70000系は三世代目ということになる。
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 物心付いたときは最初の世代が走っていて、次の世代が登場しやがて日常になっていくのを目にしてきた。そして今、この三世代目が登場してきたのを目の当たりにしている。

 これから二十年くらいは、この三世代目が活躍することだろう。

 その次の世代の車両を、私は目にすることがあるのだろうか。


東京メトロ
13000系電車 東京メトロ日比谷線中目黒駅~恵比寿駅にて 2017.7.30
by railwaylife | 2017-10-07 12:20 | 東京メトロ | Comments(0)

七万見参

 2017年7月7日にデビューした東武70000系を初めて目にしたのは、まだ暑かった7月末のことであった。
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 最近の東武の車両は、コーポレートカラーというものを纏っていない。形式ごとに、投入される線区に合わせたラインカラーを纏っていると言える。

 それもあって東武らしさというのがなかなか感じにくいのであるが、この車両も東武の顔の一つとして、これから長く活躍していくことを願っている。


東武
70000系電車 東京メトロ日比谷線中目黒駅~恵比寿駅にて 2017.7.30
by railwaylife | 2017-10-04 23:50 | 東武 | Comments(0)