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古戸越を往く

 横浜方面から来た湘南新宿ラインの電車が、品鶴線から山手貨物線に入るときに通るのが大崎支線である。

 この大崎支線が品鶴線から分岐するのが旧蛇窪信号場と呼ばれるところで、付近の古い地名にも蛇窪というのがある。

 なにやら恐ろしい地名だが、近くにある上神明天祖神社という社にある弁天社に行けば、その由来と思しきものを知ることができる。

 そこの弁天社の由緒によると、鎌倉時代、本殿の左手に清水の湧き出る洗い場があり白蛇が住んでいたという。ところが、いつの間にか洗い場がなくなってしまったため、白蛇は土地の旧家森谷氏の夢枕に出て、一日も早くもとの住処に戻れるようにしてほしいと訴えたそうだ。森谷氏がこの話を社の宮司に伝えたところ、宮司は元の場所に池を掘り中央に小島を作って石祠に白蛇を祀ったという。この話が蛇窪の地名の起こりではないかと思う。

 そんな蛇窪は文字通り窪地になっているようで、大崎支線と品鶴線の分岐点近くには流路の痕跡を窺うこともできる。道が細い路地と交わるところに小さな橋の欄干が残っているからである。どうやら細い路地は昔の水の流れの跡のようである。

 その窪地を往く大崎支線の線路は、品鶴線と分岐してからしばらくは低い築堤の上に敷かれている。

 築堤の距離はわずかなものであるが、途中にはそれをくぐる道がある。

 そうやって線路の下を道がくぐるところを、架道橋と呼ぶ。JRの場合、その架道橋にはそれぞれちゃんと名前が付けられていて、ここの架道橋は古戸越架道橋という名であった。

 この「古戸越」には、ひどく惹かれるものがあった。

 それは、最初の「古」が戸越にかかるのか、架道橋にかかるのか、ということである。

 もし架道橋にかかるなら、新戸越架道橋や戸越架道橋が別にあるのではないか、という気がする。また、もし戸越にかかるなら、それが地名だったり古道の名だったりするのではないかと思った。

 私としては、後者の方が面白いなと思っている。そうすると、もしかしたら古戸越架道橋をくぐる小さな道は古道かもしれない。そんな妄想が膨らんできて、この古戸越架道橋という名が何とも魅力的に思えてきたものである。

 そんなわけで、もし暇があったら、古戸越の意味について調べてみたいと考えている。

 その備忘のために、小さな古戸越架道橋を窮屈そうに渡って行く湘南新宿ラインの列車を捉えてみた。
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 それにしても、この大崎支線はカーブが多いから、15両編成と長い湘南新宿ラインの列車は、まるで蛇のようにくねくねとしながら進んで行く。



 まさか、湘南新宿ラインの電車は白蛇の化身ではないか。

 地名が蛇窪だけに、そんなふうに想われた。


湘南新宿ライン
E231系電車 大崎支線大崎駅~西大井駅にて 2012.6.2
by railwaylife | 2012-06-30 21:47 | 湘南新宿ライン | Comments(0)

三番目あらわる

 昨日の朝、地元の駅でいつもよく乗る時刻に東横線の電車を待っていると、見慣れない編成が入って来た。

 最後尾の車両には「4003」というナンバーが振られていた。

 昨年から東横線に現れた、5050系4000番台の3編成目ということになる。初めて見る編成だから、ここ最近営業運転を開始したのだろう。

 ただ、新しい編成にしては、車内に入ってみても新車特有の匂いがなかった。

 それで銘板を見てみると、製造年が2011となっていた。どうやらこの編成は、落成後しばらく地下鉄副都心線直通に備えての試運転に従事していたらしい。その間に、新車の匂いは消えてしまったのだろう。

 とは言え、また新しい編成が東横線に現れたことには変わりない。そしてこの編成もまた、あたりまえのように私の日常に登場するようになるんだろうなあという気がした。
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 それにしても、こうして身近な路線に凄まじい勢いで新しい車両が導入されてゆく過程を見られるというのは、とても貴重なことだと思う。

 振り返ってみると、今から八年半ほど前の2004年初め、みなとみらい線直通運転開始に合わせてY500系が登場し、それから程なくして5050系の導入も始まったわけだが、それ以前のラインナップで今も残っている編成というのは、本当に片手で指折り数えられるくらいになってしまった。つまり、総入れ替えに近い状態ということである。

 来年の副都心線との直通運転開始まで含め、この十年くらいの東横線の変化というのは、まさに劇的であると言える。

 そんな変化の過程のほんの一部を、昨日は目の当たりにしたところであった。


東急
5050系電車(4103F) 東急東横線渋谷駅にて 2012.6.29
by railwaylife | 2012-06-30 10:27 | 東急5000系列 | Comments(0)

目黒線の背景

 先の「9000系の背景」に載せた東横線の9000系とまったく同じ風景であるが、写っている電車は目黒線を往く東京メトロの9000系である。
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 この橋梁は東横線とともに目黒線も通っているので、東横線の風景でもあり目黒線の風景でもあることになる。

 とは言え、先の「9000系の背景」と何ら変わり映えしないわけではあるが、私にとっては目黒線の風景というのも、大切なものになっている。いつのまにかこのブログにも「東急目黒線」というカテゴリができてしまっている。

 だから、たとえ二番煎じになったとしても、これはこれで目黒線の特異な風景の一つとして、わざわざ記事をもう一つ作ってでも載せておきたいものである。


東京メトロ
9000系電車 東急目黒線多摩川駅~新丸子駅にて 2012.6.2
by railwaylife | 2012-06-28 23:12 | 東急目黒線 | Comments(1)

自由が丘駅3番線

 以前にも何度か撮影をし、このブログにも載せたことがあるが、この場所で電車を眺めるのが私はけっこう好きである。
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 東急東横線自由が丘駅3番線ホームに停まっている電車を、下から見上げる場所である。

 呑川支流九品仏川緑道の橋梁上でもあるそこは、自由が丘駅ホームの横浜方先端にあたる。ただ、ホームは島式で線路の内側にあるので、電車を見上げている位置からホームはよく見えない。それだけに、電車がなんだか自由が丘の街中に無造作に停まっている感じがある。そんなところが面白い。

 また、この3番線は、後続の急行・特急電車を待ち合わせる各駅停車が待避のために入線するところでもある。それで、3番線に入って来た電車は急行なり特急なりをやり過ごすために長々と停まっている。だから、ゆっくりと電車を眺めることができる。

 やがて、となりの4番線から勇ましく優等列車が発車して行った後、3番線の各駅停車はのそりのそりと駅を出て行く。

 そのさまを見届けるのも、この3番線の電車を眺めるときの楽しみである。


東急
9000系電車(9012F) 東急東横線自由が丘駅にて 2012.5.6
by railwaylife | 2012-06-27 23:15 | 東急9000系 | Comments(0)

たそがれ251

 伊豆半島の先端近くから続いてきた特急列車の旅は、日暮れとともに終わろうとしていた。

 特急「スーパービュー踊り子」10号池袋行きが、終着まで残り二駅として、夕暮れ時の渋谷の街を過ぎてゆく。
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 夕暮れの街という、旅の終わりにふさわしい風景を見せ付けるかのように、列車はゆっくりと街を走り去って行った。


251系特急「スーパービュー踊り子」10号 山手貨物線渋谷駅~新宿駅にて 2012.5.18
by railwaylife | 2012-06-27 23:11 | 251系 | Comments(0)

バラづくし

 これまで、さまざまな花や木や草越しに列車の往く風景を眺め、撮影してきた。

 それは、単に列車を眺めるというだけではなく、その列車がさまざまな季節の中を巡りゆくのだということを知り、表現するためであった。私なりの鉄道風景の表現であった。

 だが、そういう風景を私が普段いる街中で探すのは、なかなか難しいことであった。

 それでも、いつも車窓風景を注視し、わずかばかりの草花を線路際に探し求めてきた。

 もちろん、そうやって注意深く探すということが面白く楽しくはあったが、実際に見つけたとしてもその場に行ってみると自分が想っていた風景とは程遠いなんていうこともよくあった。花の咲き具合がいまいちだったり、花が線路に近過ぎたり遠過ぎたりして、その風景を捉えようとするには無理があることも多かった。花以外の障害物があることも少なくなかった。

 そんなとき、もう少し花がたくさん咲いていたら、とか、もっと花がこっちに寄っていれば、とか、この架線柱がなければ、なんて考えることはざらであった。

 それでも、何とかして巧い具合にその風景を表現できないだろうかといろいろ試行錯誤を重ねることもあった。それもまた実は楽しみであったと言える。つまり、限られた選択肢の中でいかに表現するかを楽しむ、ということである。



 では、もしその選択肢がたくさんあったとしたらどうなるか。

 そんな状況に、めぐり会うことがあった。

 都電荒川線沿線でのことである。



 この路線にはバラの植えられている区間がいくつかあるが、そのうちの一つにたまたま花の時期に乗ってしまったことがあった。向原から大塚駅前の電停にかけての区間である。

 折しも「バラ祭り」なるものまで開かれているときで、車窓には次々とバラの花が現れた。どんなときでも車窓に草花を探している私からすればそれは、思わず笑ってしまうくらいたくさんのバラであった。

 そんな風景を見たからには、その区間へ歩いて行って花越しの電車を見ずにはいられなかった。それで大塚駅前電停から線路沿いを急いで戻り、バラ咲く区間へと行ってみた。



 バラと一口に言っても実にさまざまな花が並んでいた。色も、形も、大きさも、咲き具合も、そして表情も、それぞれ違っていた。

 そんな花々というか、バラバラが、線路際に延々と並んでいる。だから、私の求める「花と電車」という風景が、まさに撮り放題であった。

 それこそ本当に、好きなように撮れる状態であった。花の色も形も選び放題、アングルも選び放題である。いつものように、どうやったら巧く撮れるだろうかと悩む必要もなかった。どうやったら障害物をなるべく入れないようにできるかと考える必要もなかった。いや、あえて障害物を入れて撮るという選択肢さえいくつもあった。

 そういう状態で、何の悩みもなく撮れそうではあったのだが、いざ撮ろうとしてみると、どう撮っていいのかわからなくなってしまった。悩みではなく、迷いがあったと言ったらいいのだろうか。ちっとも撮り方が決まらなかった。選択肢があり過ぎるというのも、困ったものであった。



 そんなわけで、この場所で捉えた「花と電車」の風景は、どれも迷いの中で撮ったものとなってしまった。

 その私の迷いの記録として、ここにいくつかの写真を載せておきたいと思う。
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都電荒川線大塚駅前電停~向原電停にて 
2012.5.26
by railwaylife | 2012-06-26 23:37 | 路面電車 | Comments(0)

9000系の背景

 東急東横線の多摩川橋梁といえば、その風景を今まで下流側から捉えることが多かったような気がする。

 そう思って、上流側から捉えてみることにした。

 熱心に追いかけている9000系を、できるだけ多くの風景の中で眺めておきたいという想いからである。

 すると、期せずして武蔵小杉の高層建築が背景になった。
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 それで悦に入っていたが、考えてみれば8000系の引退が迫ってきたときも同じような風景を捉えて喜んでいたような気がしてきた。

 でも、それはもう五年も前のことだから、背景となる眺めもだいぶ変わったのだろうなと思った。



 ところでこの日は、二編成の9000系がわりと近接して運用に就いていた。それで、わずかな時間の間に二度も9000系の風景が見られたわけだが、私は何の工夫もなく一本目と同じように二本目の9000系を撮ってしまった。
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 何とも芸のないことだったし、これでは本当に二本の9000系を撮ったかどうかもはっきりしない。

 だが、ほとんど同じ二枚の写真を見比べてみると、一ヵ所だけ決定的に違うところがあった。




 それはどこか。




 何だか間違い探しみたいになってきたが、答えは背景にある建設中のビルに載っているクレーンの一基が向きをかえているところである。


東急
9000系電車(9005F9012F) 東急東横線多摩川駅~新丸子駅にて 2012.6.2
by railwaylife | 2012-06-25 23:10 | 東急9000系 | Comments(0)

蛇窪8086

 8086列車という機関車の単行列車の存在が気になって、機会があればその姿を追いかけるようになっている。

 日中の都心を一台の機関車だけが往くさまが、何とものどかに感じられるからだと思う。

 そんな8086列車をいろいろなところで眺めようと思い、あまり馴染みのない場所で待ち構えてみた。

 山手貨物線大崎支線の旧蛇窪信号場近くである。

 信号場の名に旧と付けたのは、今はもう名目上そこに信号場がないからなのであるが、山手貨物線大崎支線と品鶴線が合流する重要な地点であることには変わりない。

 そんな合流地点を8086列車が往くさまを巧く表してみたいと思ったのだが、あまり慣れていないところだけに、これという場所が見つからないうちに列車が来てしまい、中途半端な風景を捉えることになってしまった。
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 でも、かろうじて背景に品鶴線の線路と新幹線の高架が写っていて、合流地点の近いことはわかるだろう。だから、これも8086列車の風景の一つとして大事に記録しておきたい。


山手貨物線
8086列車 山手貨物線大崎駅~旧蛇窪信号場にて 2012.6.2
by railwaylife | 2012-06-25 23:03 | 貨物列車 | Comments(2)

タチアオイ・アングル

 タチアオイは、その名からも連想できる通り、背丈の高いのが特徴である。

 それで、そのてっぺんまでをカメラのファインダーの中に入れようとすると、結構苦労することになる。

 特に私は、線路際に窮屈に咲いているのを好き好んで撮っているし、そこに列車の姿まで巧いこと押し込もうとするのだから、なおさら無理がある。

 先日も、線路脇に見つけたこの花をどうやって捉えようかとずいぶん悩んだことがあった。

 悩んでいるうちに、近くの踏切の警報機が鳴り出し、電車がやって来てしまった。

 それで慌てて両者を強引に納めようとして、こんな撮り方になった。
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 タチアオイならではのアングルかもしれない。


東急
7700系電車(7912F) 東急多摩川線沼部駅~鵜の木駅にて 2012.6.16
by railwaylife | 2012-06-23 23:43 | 東急7600・7700系 | Comments(2)

漂う9000系

 写真を撮るとき、私はどちらかというと「遊び」がなく、いかにして目の前にあるありのままを撮るか、とマジメに考える方である。それが写真として良いか悪いかを別にしてである。

 でも、時には「遊び」があったりしてもいいんじゃないか、なんて最近は考えたりするようになった。

 先日、多摩川へ東横線の電車を眺めに行ったときも、お目当ての9000系がわりと短時間に二本通過することがわかっていたので、一本はちょっと遊びで撮ってみることにした。



 宙を漂うような9000系をイメージしてみた。
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 もし、9000系がその日東横線に一本しか走っていません、とか、もはや9000系は東横線に一編成しか存在しません、なんていうことになっていたら、絶対にこういう撮り方はしないだろうなと思う。

 そうなったらきっと、血眼になって「あるがままの9000系を遺したい」とか言いながら、マジメに撮っていることだろう。


東急
9000系電車(9005F) 東急東横線多摩川駅~新丸子駅にて 2012.6.2
by railwaylife | 2012-06-22 23:22 | 東急9000系 | Comments(0)