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あじさい列車2010 第13章

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 相模の旅2010初夏の後編における記事がまだまとまっていないので、つなぎとして、他の「あじさい列車」を綴りたい。

 二日間相模へ出かけた次の日は有給休暇で、私は「一日かけて相模の旅での想いを綴るのだ」とか張り切っていたくせに、また別のところへ出かけてしまった。というのも、どうしても気になる「あじさい列車」があったからだ。

 それは、6月20日の日曜日に、蒲田へ買い物に出かけたときに乗った東急多摩川線の車窓に見つけたものであった。ちらっと一瞬現れたあじさいを、私は見逃さなかった。そして、この沿線にもあじさいがあるんだなと思って、妙に嬉しくなったものである。

 そのあじさいがどうにも気にかかっていて、有給休暇のこの日、私は東急多摩川線沿線に繰り出してしまった。私が有休を取ると天気が悪いと相場が決まっているのに、薄日が差してきたということもある。

 しかし、日差しはあじさいの天敵だ。現地に着いてお目当ての花を見てみると、何となく元気がなく、また思ったより小さくて絵にならない気がしてきた。

 それでも私は、すぐ近くの別の場所で、他のあじさいを見つけてしまった。その花は大きく、また線路際にあっていかにも電車と一緒に撮ってくださいという感じだったので、私はそこの「あじさい列車」を逃さなかった。

 ただ、ひどく蒸した上に鈍く熱い日差しが出てきたこの日、あじさいはやはりしおれ気味で、しかも何だか色褪せていた。七月を目前にして、もう花の時季も終わりなのかなと、私は少し寂しくなった。そして、そろそろ「あじさい列車」の終章を考えなければならないかもしれないと思った。

 さて、私はこんなふうにして「あじさい列車」を追いかけていたばっかりに、未だに相模の旅の想いが綴りきれていない。反省しなきゃなと思う。


東急7700系電車 東急多摩川線沼部駅~鵜の木駅にて 2010.6.28


※あじさい列車2010の第11章と第12章が抜けているが、これは相模の旅の後編に含まれるものである。多分いないと思うが、もしこのシリーズを楽しみにされている奇特な方がいらっしゃったら、少なくともあと二つ「あじさい列車」があるということをお伝えしておきたい。

by railwaylife | 2010-06-30 22:48 | 東急7600・7700系 | Comments(0)

枇杷の実列車

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 果物の枇杷というものは、都会の中に浸っているとほとんど見る機会がなくて、相模の海沿いの石橋で久しぶりに枇杷の実を目にした私は、思わず秋の柿の実を想起してしまった。そのとき私は、秋になったら今の「あじさい列車」シリーズみたいに「柿の実列車」シリーズができたらいいなとふと思った。柿の実もまた、列車の車窓を彩る風物詩の一つである。しかし、柿の木はあじさいと違って、なかなか都会の沿線にはない。ちょっと難しいかなと感じて、何となくしょんぼりしてしまった。それで私は、枇杷の実越しに列車を見送ってみた。

 ん?このE217系は東海道本線のはずなのに、車両の帯が湘南色ではなくて横須賀線のスカ色に見える。たぶん、私が最近目が悪くなった所為だろう。パソコンばかりに向かってないで、こうやって緑の多いところをもっと歩いた方がいいかもしれない。


E217系電車 東海道本線早川駅~根府川駅(石橋橋梁)にて 2010.6.26

by railwaylife | 2010-06-29 23:58 | 東海道本線 | Comments(2)

海の色

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 海の色は、ふつう「青い」と表現される。しかし、それは晴れているときのことであって、天候により海の色はさまざまに変わる。

 それに、晴れたときの「青い」海も、単に「青い」というのではなく、それ以上に「青らしい青」とでも言ったら良いのか、いかにも「青色」というようなときがある。それを表現するために、字を重ねて「青々しい」と言ってみたり、字を変えて「碧い」と言ってみたりする。でも、本当のその「青さ」は、なかなか表現できない。

 ましてや、ただ「青い」だけではなく、朝日や夕日が海面に当たっていたりしたら、もっと表現しづらい。日が当たって水面の輝くさまは、なんと表現したら良いのだろうかと思う。それでも何とか、金色(こんじき)とか銀色とかいった表現を使ってみる。

 もっと難しいのは、曇ったときの海の色ではないだろうか。曇り空のように灰色にも見えるが、実はけっこう青かったりもする。それを私は「青灰色」と表している。確かに両方の色がまじっているから、一見すると曇り空の海の色を言い当てているように感じられるが、その色はそんなに単純でもない。

 それに、曇り具合によって、海の色も千変万化だ。ちょっと薄日が差そうものなら青色は増すし、霧にけぶって空が白くなったりしたら海も白くなり、両者は一緒になってしまう。そうなるともう、色も何もあったものではなく、海の眺めの車窓が「無の世界」になったりする。

 私は今までいろいろな旅でいろいろな表情の海を列車の車窓から見てきて、一所懸命に海の色を書き表そうとしてきた。けれども、それを表す語彙は乏しい。だから、もっともっと、海の色の表現を豊かにしたいものだと思っている。

 でも、色の表現というのは実はけっこう多彩で、日本には古来より「○○色」という表現が数多く存在している。それらの中には、字面やその読みの響きによって巧妙に色合いというものを表しているものもある。だが、残念ながら一般的ではないので、文章だけにその色の名前を使ってみても、なかなか読み手が理解しにくいということもある。

 それにだいたい、自分自身が本当にその色の表現を理解できた上で使っているのかということも問題である。字面だけで気軽に使ってみて、巧く表した気分になっていても、実は自分が表したかった色と全然違っているかもしれない。そんなことをしたら、色の神様が出てきて怒られてしまうかもしれない。たぶん「おまえは本当にその色のことがわかっていないな」とか言われて、こっぴどく叱られることだろう。

 そうならないように、もっと色の表現を勉強しなければならない。そして、私が車窓に見た海の色を、自在に表せるようになりたい。もちろん、その色が読み手にも伝わるようにすることだ。

 そういえば以前に、母が「色の事典」みたいな本を持っていたような気がする。まずはそれを借りて、少し勉強してみようと思う。

 ところで、この日の相模の海の色は、なんと表現したら良いだろうか。


1枚目 251系電車3005M特急「スーパービュー踊り子」5号
2枚目 185系電車3024M特急「踊り子」104号

東海道本線早川駅~根府川駅(佐奈田トンネル出口)にて 2010.6.26

by railwaylife | 2010-06-29 23:53 | 東海道本線 | Comments(0)

海あじさい

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 海あじさい、なんて言葉あるのかどうかは知らないけれど、私が根府川駅から早川駅までの道すがらに見つけた、花越しの海の眺めを、そう呼びたくなった。海とあじさい、いい組み合わせだ。

 ただ、惜しむらくは、海の色が青みを失っていたことである。これで海が青々しかったら、どんなにか花がいきいきとして、鮮やかな景色になったことだろうかと思う。

 いや、海が青くなるためには、空が晴れる必要がある。そうすると、あじさいは日差しにやられて「くたっ」として、いきいきするどころではないかもしれない。

 だから、海あじさいには、こんなどんよりとした海原がぴったりなのだろうと思った。


小田原市米神にて 2010.6.26

by railwaylife | 2010-06-29 23:50 | | Comments(0)

あじさい列車2010 第10章

 私が今回の旅で、根府川駅から早川駅まで歩きたかった理由の一つに、この区間で「あじさい列車」を見たいということがあった。両駅間の途中にある米神踏切というところにあじさいが咲くことは、だいぶ以前から知っていた。そして私は、その米神踏切での「あじさい列車」を、どうしてもこの「あじさい列車2010」に加えてみたかった。

 それで頑張って、根府川駅から山道を歩いてきた。途中で雨も降り出し、だいぶ気が滅入ったけれども、旅日記にも書いたように沿道には無数のあじさいが咲いていて、米神踏切のあじさいに期待を持たせてくれるものであった。

 そんな花にも見とれたりしていたので、根府川駅から三十分くらいかかって、ようやく米神踏切に到着した。人だけの通れる小さな踏切だが、その両側の上り線沿いに、花はあった。私は、その色とりどりの花をどう捉えようかと、楽しみながら悩んでいた。

 そして、ここを通る列車もまたさまざまである。普通列車の211系やE231系はもちろん、特急「踊り子」号の185系、さっき乗ってきた特急「スーパービュー踊り子」号の251系もやって来る。

 だが、私が「あじさい列車」に選んだのは、武骨な貨物列車である。11時30分前後にここを通る二本の貨物列車を捉えることにしていた。

 まずやって来たのは、福岡貨物ターミナル発東京貨物ターミナル行き上り5052列車である。桃太郎ことEF210形電気機関車の牽引だ。米神山トンネルから出てきた列車を、緊張の中迎える。
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 轟音を立てて、列車はあじさいをかすめて行く。列車の風圧で、花は揺れる。それがまるで、列車にお辞儀しているかのように見えた。はるか九州から来たこの列車に、米神のあじさいは敬意を表しているのだろう。
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 五分後、今度は下りの貨物列車がやって来る。EF200形電気機関車牽引の札幌貨物ターミナル発名古屋貨物ターミナル行き5097列車だ。普段あまり見慣れないEF200形が、あじさいを横目に過ぎて行った。
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 こうして私は、ついに貨物列車を「あじさい列車」に仕立て上げた。このシリーズの第10章にして初めて、電車ではない列車が「あじさい列車」となった。これでやっと、シリーズのタイトルを「あじさい電車」ではなく「あじさい列車」とした意味が出てきたというものである。

 さて、貨物列車の余韻に浸る間もなく、今度は特急列車がやって来る。まずは上りの特急「スーパービュー踊り子」2号である。これもついでに「あじさい列車」にする。いや、ついでなどと言ってはいけない。この日の新宿からの乗車で、楽しい「後方展望」の車窓を見せてくれた251系も、ぜひ「あじさい列車」のラインナップに入れておきたいところであった。
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 さらに下り特急「踊り子」109号が通過する。日常見慣れた185系も「あじさい列車」として捉える。お気に入りの185系が、やっと「あじさい列車」になった。
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 こうして私は、念願だった米神の「あじさい列車」を、ようやく捉えることができた。


1・2枚目 EF210形電気機関車牽引5052列車
3枚目 EF200形電気機関車牽引5097列車
4枚目 251系電車3002M特急「スーパービュー踊り子」2号
5枚目 185系電車3029M特急「踊り子」109号

東海道本線早川駅~根府川駅(米神踏切)にて 2010.6.26

by railwaylife | 2010-06-29 23:46 | 東海道本線 | Comments(0)

あじさい列車2010 第9章

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 私が今回の旅で最初に目にした「あじさい列車」は、これだった。あじさいと、家並の向こうを、列車が往く眺めである。

 そこは、根府川駅から早川駅へと向かう途中で、海を見ながら来た道が、崖の縁をぐるっと回って、米神の家並へと続いていくところであった。私は、あじさい越しの家々の向こうに、東海道本線の架線柱が見えたとき、花から飛び出てくる列車の姿を思い描いた。

 それで花に寄って待つことしばし、列車はやって来た。しかし、実際は花からではなく、あじさいの葉から列車が飛び出てくる構図になってしまった。それでも、少しは思い描いていた景色に近いものが捉えられたかなと思った。

 ところでこのあじさいは、線路からけっこう離れている。それで、車窓からこの花はどんなふうに見えるのだろうかと気になった。車窓から見えない花なら「あじさい列車」としての意味はないと思うからである。

 だから私は、この後何度なく往復した早川-根府川間で、ずっとこの遠目のあじさいを気にしていた。すると、車窓からもあじさいはわりとしっかりと見ることができた。この淡い紫は、ちゃんと車窓の一部を彩っていた。

 ということで、この景色もまた、私の「あじさい列車」に加えることにした。


3754M快速「アクティー」 東海道本線早川駅~根府川駅にて 2010.6.26

by railwaylife | 2010-06-29 23:40 | 東海道本線 | Comments(0)

再会

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 特急「スーパービュー踊り子」1号を熱海駅で下車し、最初に目に飛び込んできたのが、伊豆急8000系であった。私は、ひどく懐かしい気持ちになった。

 この車両は紛れもなく、わずか数年前まで私の地元の東急東横線を走っていた車両だ。そして、私が幼い頃から最も身近にあった車両だ。そんな車両への想いは強く、東横線を引退するときには熱心に追い回していたものである。そのときの記録が、このブログの過去の記事にもたくさんある。

 東横線を去った8000系の何両かは、こうして伊豆急行に新たな働き場を求めて、元気に活躍しているけれども、なかなか伊豆までその姿を見に来ることはできていない。8000系に出会うのは、三年前の夏に乗りに来て以来ではないだろうか。いや、二年前に寝台特急「はやぶさ」に乗ってこの熱海駅を通りかかったときに、となりのホームに8000系が滑り込んできてブルートレインと並んだので、妙に嬉しかった覚えがある。

 とにかく8000系との再会は久しぶりだったので、本当に嬉しかった。この車両を見ると、なぜかホッとする。どうしてかはわからないけれど、とにかく安心する。ただ、今回は8000系の走る伊東線や伊豆急行がフリーきっぷの範囲外なので、乗ることはできない。でも、今度は伊豆への旅を企てて、この8000系から相模の海を眺めてみたいと思う。幸い、この伊豆急8000系にはボックスシートが兼ね備えてある。

 私はせめて、8000系の発車を見送ろうと、ホームでしばらく待っていた。やがて8000系は、東横線を走っていたときと少しも変わらぬ駆動音で、熱海駅を去って行った。
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 私は幸先の良い旅のスタートが切れたような気がして、気分良く根府川駅へと向かった。


伊豆急行8000系電車 東海道本線熱海駅にて 2010.6.26

by railwaylife | 2010-06-29 23:28 | 東急8000系 | Comments(0)

後方展望

 相模の旅2010初夏の往路に、私は特急「スーパービュー踊り子」1号を利用したが、その指定席は10号車1番D席すなわち最後尾の展望席であった。

 こう書くといかにも「レア」な感じがするが、特急「スーパービュー踊り子」の251系は登場からもう二十年も経つそうで、もはや展望席も珍しいものではないようである。現に私はこの席の指定券を何の苦もなく入手できたし、この日の展望席最前列は、私のD席と反対側のA席しか埋まらなかった。

 しかし、人気がどうあれ、またこの席が「レア」であるかないかなど私には関係なく、ここに座るのが初めての私は、とにかく「後方展望」が楽しみであった。

 ところでなぜ先頭の「前面展望」ではなく「後方展望」かといえば、それは「前面展望」の1号車がグリーン車で、私の手にした「踊り子箱根フリーきっぷ」では乗れないから、というだけの話である。しかし、私は「後方展望」というものを一度楽しんでみたいと思っていた。それは、昔からの憧れだったからである。

 私が小学生の頃、特急「サロンエクスプレス踊り子」号という列車があった。それは欧風客車「サロンエクスプレス東京」を使用した列車で、その最後尾の客車にはソファを備えた展望席があった。当時の私は、一度そのソファに座って、それこそ「後方展望」というものを楽しんでみたいという想いがあった。しかし、この列車に乗るにはグリーン券が必要であり、まだ子供の私が簡単に乗れるものではなかった。そんな「サロンエクスプレス踊り子」号の展望席の眺めを少しでも再現してみたいという気持ちが、今回の「後方展望」を選んだ理由でもある。

 そしてもっとさかのぼれば、東海道本線には最後尾に展望車を連ねた特急列車が走っていた。かつての特急「つばめ」や「はと」などである。それらが走っていたのは昭和三十年代までであり、私の生まれる前の話だから、乗ることはおろか見ることさえ叶わなかったわけであるが、そんな昔の名列車にも、私はずっと憧れてきた。もちろん、格調高い「つばめ」や「はと」の展望車と、現代の特急「スーバービュー踊り子」ではだいぶ落差があるけれども、私はこの「後方展望」に、昔の展望車の面影も追いたいとさえ思ってきた。だから、本当に楽しみであった。


 さて、新宿駅を8時30分に発車した特急「スーパービュー踊り子」1号は、山手貨物線を南下する。ぎりぎりに乗車した私は何となく旅立ちを迎えてしまったけれども、この新宿駅という「日常」を去ることが、何より大事であった。
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 そして車窓には、私の「日常」が続いていく。渋谷までの通勤経路の区間、通院のための経路である恵比寿、大崎といった「日常」が、まさに後方へと全部全部押しやられていく。私はそのさまを、窓の広い展望席からゆったりと眺めていた。
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 そして、山手貨物線から品鶴線に入った列車は、新幹線の高架下から抜けるといよいよ速度を上げ、多摩川の流れを置き去りにしていく。新宿を発ってからわずか十五分で東京を脱出するとは、いい気味だ。
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 川を渡るとすぐに武蔵小杉停車で、これが意外と長く、余計な「間」を作ってしまったものの、鶴見で東海道本線と合流すれば、いよいよ西への気分は高まる。そして横浜到着の手前で、今までの横須賀線の線路から東海道本線の線路へと進入する。これで名実ともに東海道本線の旅となった。

 ところで、この「後方展望」の眺めであるが、何となくガラスがほこりっぽく汚れているような感じがあった。しかし、そんなことはどうでもよく、私は去り行く眺めというものを存分に楽しんでいた。

 横浜を出ると、車窓に緑が増えてくる。白い曇り空の下で、その緑は陰鬱だ。でも、梅雨時にはぴったりの眺めだ。ついでにもう、雨でも槍でも降るなら降れば良いとさえ思った。いや、このときはまだ調子に乗ってそんなことを思っていたけれども、後々この旅ではずいぶんと雨に悩まされることになった。
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 それは後のことして、やがて武蔵と相模国境の清水谷戸トンネルを抜ければ、東京だけでなく武蔵国からも脱け出すことになる。そして、いよいよ目的地の相模国に入った。

 列車は東海道本線という道を、着実に西へ刻んで行く。私は、かつてこの道を走った「つばめ」や「はと」や「サロンエクスプレス踊り子」といった列車を想いながら「後方展望」を見つめた。そして、それらの列車からの眺めの残影を探そうと思っていたけれども、きっと当時の展望車からの風景とは全然違うんだろうなという気もした。
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 さて、気が付けば時刻は9時を回っている。もし、まだ寝台特急「富士」「はやぶさ」が走っていたら、そろそろ離合していた時刻だ。この「後方展望」に、東京を指す青い車体が駆け抜けたことであろう。でも、そんな列車は、もう今はない。そして、今さらそれが見られないことを悔やんでも、文字通り「後の祭り」だ。

 やがて列車は、白い相模川を渡る。
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 そして、相模の奥へ奥へと向かって行く。そんな東海道本線の旅は、いつでもわくわくするものだ。
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 その気持ちも、国府津に至ればさらに高まる。いよいよ相模の海が見えてくるからだ。さっそく今日の海はどんな色だろうと見てみると、天気が悪いだけにやはりグレーの海原であった。それでも、これから大々的に広がってくる海の眺めに期待が高まる。

 ただ、その海の眺めを控えた小田原まで来ると、私の「わくわく」感は「どきどき」感へと変わっていた。小田原に着いたなという気分もそこそこに、いよいよだという高揚感が湧いてきた。

 小田原を発つと、すぐには海が見えないのに、もはや想いは海原の眺めに及んでいた。そして、早川辺りの海が見えるか見えないかというところではもう、ただならぬ心地になっていた。

 そして私は、海が見えてきたときには、目頭を熱くしていた。それは、狂おしいほどの、相模の海への想いである。でも、そこまで想う自分が愚かしく思えた。

 こんな気持ちになったのは、上り寝台特急「はやぶさ」から、冬晴れの朝の青い海原を見て以来である。あのときは、青々しい海があったけれども、今回は白い海だ。いや、海の色など、もうどうでも良かった。車窓に海さえあれば、それで良かった。
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 それにしても、海の眺めはあっという間に過ぎ去って行く。新宿から乗ったばかりのときは、自分にとっての「日常」の風景に、早く去れ、早く去れ、と念じていたのに、このときの私は、過ぎ去る風景に、待ってくれ、待ってくれと言いたい気分であった。

 しかし、そんな想いはもちろん届かず、列車はどんどんと進む。そして、私が降りるべき熱海駅まで着いてしまった。熱海までの道のりが、こんなに早く感じられたことは、今までになかったことである。だから当然、心残りはあった。

 しかし、旅はここからである。熱海駅に降り立った私はすぐに、ゆっくり見られなかった海の眺めを見に行くことにした。

by railwaylife | 2010-06-29 23:19 | 251系 | Comments(0)

相模の旅2010初夏 後編

 昨日の「相模の旅2010初夏 前編」の続きを記したい。

 二日間有効の「踊り子箱根フリーきっぷ」を手にしながらも、昨夜一旦帰宅した私は、昼間けっこう歩いたことと前夜の寝不足もあって、良く眠れるのではないかと思っていたが、今朝はいつものように早朝覚醒してしまい、おまけに体がものすごく重くて、ひどい目覚めであった。

 それでも、せっかく早く起きたのだからと、頑張って支度して家を出た。今日も「踊り子箱根フリーきっぷ」で、相模の旅を続けるつもりであった。幸い、朝の東京では雨が止んでいた。

 東急東横線で横浜駅に出て、東海道本線の普通列車に乗り継ぐ。いよいよこの旅の後編は始まった。
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 起きたときは食欲もなく、何も食べずに出てきたが、列車に乗れば不思議とお腹もすいてくる。私は、横浜駅のホームで買ったいなりずしを食べながら、東海道本線の西下を楽しんだ。

 空は昨日同様のどんよりしたものであったが、辻堂辺りまで来ると車窓に水滴が付くようになった。さらに、鴨宮辺りではその水滴が増し、しっかりと降っているようであった。旅先に近付くにつれ天気が崩れていくのは残念でならなかったが、この時季は仕方のないことである。

 そして、小田原駅を過ぎ、お目当ての相模の海が見えてきたが、何となく昨日よりは海原の色が青いように感じられた。
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 そんなこともあって私は、海の良く見える根府川駅で、たまらず下車してしまった。相変わらず今日も、行き当たりばったりの旅程である。
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 根府川駅は小雨模様であったが、昨日と違うのは風があることであった。とは言え、歩くのに支障があるほどではなかったので、私はこの駅の近辺を歩き回り、列車越しの海の眺めを楽しんだ。
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 その後、根府川駅から下り普通列車に乗り、今度は湯河原駅で降りた。
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 そしてまたこここで、駅近くを歩いて列車や花のある風景を探し求めた。湯河原駅に着いたときにはけっこう本降りになっていたものの、私が歩き始めると雨はまた小降りになった。そこで私はまた、自分の思い描いていた景色を、いくつか手に入れた。その景色については、また別の記事で取り上げたい。
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 それからまた思い立って、今度は上り列車で早川駅まで戻った。この列車はロングシートだったので、私は海の眺めを見るために、文字通りドア際にへばりついていた。すると、真鶴駅から旅行帰りらしきオバサンの団体が乗ってきて、車内は急に騒々しくなった。ipodを耳にしている私にさえ聞こえてくるくらいの声の大きさであった。折しも車窓には、胸のすくような海原の眺めが、どんどんと広がっていく。そんな景色をそっちのけで、オバサンたちの話は続く。そのとき私は、車内に向かって「窓の外を見てみろ!」と、叫んでやりたいくらいであった。

 気を取り直して早川駅で下車し、今度は早川辺りを少しさまよった。
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 そしてさらに、小田原駅から下り普通列車に乗り込んだ。自分の気の向くままにあちこち行っていたからこんな無駄の多い行程になってしまったが、これもフリーきっぷの旅ならではのことだろう。それにしても私は、この辺りを何度行き来したことだろうか。

 しかし、ついに帰途に就く時間が来た。小田原駅から乗った列車を終着の熱海駅まで乗った私は、そこから特急「スーパービュー踊り子」6号で、相模を離れることになった。結局、私が相模にいる間に、雨は上がらなかった。
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 行き同様の「スーパービュー踊り子」であったが、その乗車についてはまたいろいろと想いがあったので、別の記事にまとめたいと思う。ただ、私はそのときこの旅最後となる相模の海の眺めをしっかり見送ったということだけは、ここに記しておきたい。私は、昨日今日とたくさんの景色を見せてくれた海原に、感謝の気持ちを抱いていた。
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 行きと違って、この「スーパービュー踊り子」6号は東海道本線をまっすぐに上り、東京駅が終着であった。行くうちに空模様は回復し、都心へ戻る頃にはわずかながら青空さえ見えてきた。きっと今頃、相模の海も青くなっているのかなあと思いながら、私は旅の終わりを迎えていた。
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 さて、東京駅に着いた私は、その足で羽田空港まで行き、福岡から戻ってくる妻を迎えることになっていた。それでまた東海道本線を品川駅まで戻る必要があったが、ここまで使用してきた「踊り子箱根フリーきっぷ」はお役御免となるので、一旦改札へと向かった。ホームから中央通路へ下り、人ごみに紛れてみると、私は何だかずいぶん遠くまで旅してきたような気がした。しかし、行ってきたのは東京駅からたかだか90km前後のところである。

 改札を入り直し、京浜東北線の快速電車に乗ると、この旅でさんざん目にしてきたE231系や211系の姿が車窓に現れた。しかし、その表情はいかにも都会の顔で、相模の海沿いで眺めたときとは「別人」のように感じられた。何だか私だけが、まだ都会に馴染んでいないように思えた。

 品川駅から京浜急行に乗り継ぎ羽田空港に着くと、妻の乗る飛行機が到着するまでには少し間があったので、私は展望デッキに行ってみた。すると、滑走路の向こうには、まさに青い海があった。相模にいる間には見られなかった色である。私は今日の天気を、少し恨んだ。
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 その後、無事に妻と合流し、日暮れ前には帰宅することができた。

 実質一日半ほどの旅であったが、私はずいぶんとたくさんの風景に出会った気がする。そしてその風景に対して、私はさまざまな「想い」を抱いた。いま、私はその溢れんばかりの「想い」をできる限り綴りたい気持ちであるが、とても今夜中にはできそうにない。だが、幸いなことに明日は有給休暇を取っている。夕方から用事のあるためだが、昼間は時間があるので、体を休めつつ、この旅での「想い」を思うままに綴りたいと思っている。

by railwaylife | 2010-06-27 22:17 | | Comments(0)

相模の旅2010初夏 前編

 夕刻に熱海駅前で記事をアップしてから、すぐに帰途へ就き、19時30分くらいには帰宅して、シャワーを浴びたり夕食をとったりしてすっきりし、いよいよ今日の旅の想いを綴ろうかと思ったら、パソコンの調子が悪くなり、時間をとってしまった。ようやく想いが綴れる状態になりホッとしたが、またサッカーが始まってしまったので、今夜はとりあえず旅の概要だけをまとめておきたい。

 さて、そのためにまずは、今回の旅へ出るに至った顛末を説明しなければならない。それは以下の通りである。

 今週末、妻は旧知の友人の結婚式に出席するため、実家のある福岡へ帰省することになっていて、すでに昨夜の飛行機で実家へと戻って行った。

 結婚式に呼ばれているのは妻だけなので、私は別に福岡へ行く用はなかったが、せっかくの機会なので付いて行って、妻の実家の義父や義姉に元気な顔を見せたいものだと前から秘かに思っていた。そして、そのついでに、あわよくば九州の鉄道を楽しもうという魂胆があった。断っておくが、あくまでも、九州の鉄道に乗るのは「ついで」である。

 ところが、このところ出費がかさんで、恥ずかしいことになかなか九州まで行く旅費が捻出できない状態になっていた。特に先日、病院で数万もかかる検査を受けてしまったので、その出費が痛かった。別にどうしても受けなければいけない検査ではなかったが、自ら受けると決めたことなので仕方ない。その費用を旅費に回していたらどんなに良かったかとも思ったが、自身の健康に関わることなのでやむを得なかった。

 しかし、一度は九州へ行けるかもしれないと考えたことで、私の「どこか旅に出たい」という気持ちには火が付き、にわかに「旅心」が高まってきていた。ただ、残念ながら遠くへ行けるほどの金銭的余裕はなかった。

 そこで私は、ネットでいろいろなフリーきっぷの情報を漁りながら「何か安くて楽しい切符はないのか!」と思っていた。

 そんな私の心の叫びに対し、えきねっとというサイトが「こんなんありまっせ」と言って出してきたのが「踊り子箱根フリーきっぷ」というものであった。都区内から小田原-熱海間のフリーエリアまでの往復に特急「踊り子」が利用でき、箱根近辺の伊豆箱根バスにも乗れるという切符である。二日間有効で4600円であるから、一日あたり青春18きっぷ一回分と同じ値段になる。これは手頃だと思って私は「踊り子箱根フリーきっぷ」に惹かれた。

 しかし、私が本当にこの切符に惹かれた理由は、特急「踊り子」でもなく箱根でもなく、小田原-熱海間というフリーエリアである。これは、私の憧れる早川-根府川間を含んでいる。その区間に乗り放題、というところに何より魅力を感じた。

 その早川-根府川間への憧れについては、以前に「根府川礼賛」という記事で書き記しているので、また詳しくは述べないが、とにかく私はこの「踊り子箱根フリーきっぷ」に飛び付き、旅立つことにした。そしてその往路には、新宿駅から特急「スーパービュー踊り子」1号に乗ることを選択した。

 特急「踊り子」に乗れるのなら、最近お気に入りの185系でも良かったが、私はどうしても、日常の最たる地である新宿駅から旅立つ必要があった。そこからの旅立ちによって、日常を飛び出すという歓びを、さらに深いものにしたかったからである。
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 そこで今朝、8時30分に特急「スーパービュー踊り子」1号で、新宿駅を発った。実は、この「スーパービュー踊り子」に乗るのは初めてのことであり、その旅路にはたくさんの想いがあったが、それは書き始めると長くなるので別の記事に綴ることにして、とにかく私は熱海駅まで「スーパービュー踊り子」の旅をじっくりと楽しんだ。
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 さて、今日のこの後の行程はまったく行き当たりばったりで、特に決めていなかった。そこで私はまず、熱海駅からすぐに引き返し、お気に入りの根府川-早川間へと向かった。特急「スーパービュー踊り子」ではあっという間に過ぎてしまい、ゆっくり眺めることができなかったということもある。

 そんなにゆっくり景色を眺めたいなら、列車を降りて歩けば良いだろうということで、私は根府川駅で下車した。そして、となりの早川駅まで歩くことにした。
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 私は今までにもこの両駅間を何度も歩いている。だから、よく知っている土地でもある。そして、この区間を一番早く行くには、線路と海の間を通る国道135号線沿いを歩けば良いことも知っているが、国道を歩くのは、通行量が多い上に歩道も狭くて危ないこともわかっている。だから毎回私は、線路よりかなり山沿いの道を行くことにしている。その道のりは上り下りがけっこう激しいが、時々こうした眺望もあるので、楽しみでもある。
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 さらにこの時期は、沿道にあじさいがこれでもかとあって、楽しみは増える。しかし、花に戯れているとなかなか先へ進まなかった。
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 それでも山道を上って下り、しばらく行くと、線路沿いの道に出られる。そこから早川駅にかけては、あちこちに撮影名所として知られたところがあり、私はいろいろな場所で何本もの列車を見送った。そのときの想いはまた溢れんばかりにあって、ここへ書くと大変なので、後日いくつかの個別の記事にしたいと思う。
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 とにかく私は、お気に入りの場所で列車と海を存分に眺めた。そして、早川駅にたどり着いたのは、根府川駅で下車してから約三時間後のことであった。
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 その間に小雨が降ったり止んだりして、蒸し暑い上に余計に湿ったので大変であったが、私はもうとにかくたくさん歩いて空腹になったので、とりあえず列車に乗って小田原駅へ向かった。

 そして小田原駅のホームで駅弁を買い込み、また東海道本線の下り電車に乗り、海やあじさいの眺めを楽しみながら駅弁を食べつつ湯河原駅まで行った。そこからまた思い立ってもう一度根府川駅へ立ち寄った。それは、185系をこの駅で見送りたくなったからである。
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 その後、熱海駅まで行って夕刻の記事を書いたわけであるが、私はそれまでの間に「踊り子箱根フリーきっぷ」の小田原-熱海間のフリーエリアを存分に楽しんでいたわけである。もちろんフリーエリアはここだけではなく、箱根の山中にも行けるようになっていたが、私はすっかり相模の海沿いの景色に見とれ、箱根へ行くなどということにまったく思いが及ばなかった。それはこの区間が私の何よりの憧れだからである。箱根に行けば、登山電車の「あじさい列車」も見られただろうが、それを見るよりもずっと楽しい眺めが、この東海道本線にはあった。

 本当はそんな景色の中に、黄昏時までいたかったが、熱海での記事に書いたように体がきつかったので、早めに戻ってきた。

 ところで、私が手にした「踊り子箱根フリーきっぷ」は、二日間有効で明日も使用できる。だから、できれば熱海辺りの温泉旅館にでも泊まってのんびりしたいところであったが、そんな旅館の宿泊代は意外に高かった。それよりも小田原から通常の運賃を払って一旦帰宅し、また明朝に出かける方がずっと安く上がるということに気付いたので、今こうして自宅にいる次第である。だから今は、明日も相模の海が見られることを楽しみにしているところである。ただ、明日は夕刻に妻が帰って来るので、その出迎えのために羽田空港へ行く予定となっていて、相模にいられるのは昼過ぎくらいまでになると思う。でも、その間にまた、憧れの風景を存分に楽しみたいと考えている。

by railwaylife | 2010-06-26 23:58 | | Comments(1)