<   2009年 08月 ( 1 )   > この月の画像一覧

永平寺線の夏

f0113552_20432041.jpg

 ちょうど十年前の夏、越前の古刹永平寺を訪れるため、京福電鉄永平寺線に乗った。

 福井駅から京福電鉄越前本線に乗り、東古市という駅で永平寺線に乗り換えた。永平寺線の電車は、越前本線の電車と同じく一両編成だったが、越前本線の車両に冷房が付いていたのに対し、こちらは非冷房車であった。いかにも古めかしい車両である。車内に入って銘板を見ると、昭和三十三年製造とあった。

 永平寺の参拝客数人を乗せて発車すると、開いた窓から風が流れ込み、土の匂いがしてきた。ああ、いいなあ、と思う。久しくなかった感じだ。ひまわりが車窓を過ぎてゆく。もう冷房なんてなくても構わないという気がしてきた。

 電車はのんびりと田んぼの中を走った。稲の背丈がだいぶ伸びてきていた。風がサーッと吹き抜けると稲が翻り、波を作っている。これこそ、私が見たかった夏の車窓だと思う。

 それにしても、電車はずいぶん揺れる。横揺れが激しい。車内の吊革が揃って踊っている。一つも乱れることなく、みなきれいに同じ動きをする。それがひどくおかしかった。

 そのうち速度が上がると、窓から入ってくる風が強くなってきた。窓に顔を近づけていると、息ができないくらいであった。

 この永平寺線には、諏訪間・京善・市野々と三つの途中駅があるが、諏訪間駅と市野々駅では乗る客も降りる客もいなかったので、電車はホームに停まるだけ停まって、扉を開けなかった。ワンマン運転であるし、何だかバスのようだ。京善駅からは小学生が何人か乗ってきて、車内は賑やかになった。

 やがて、終着永平寺駅が近づくと山が迫ってきた。いよいよ着くぞ、という緊張感が増してくる。そしてゆっくりと永平寺駅に着く。東古市駅からいくらもなかったが、これぞ夏の旅!という雰囲気がたっぷり味わえた。

 永平寺の駅も、車両同様古風であった。小ぢんまりとしているが、いかにも終着駅らしい建物だと思った。屋根が高く、薄暗い待合室が広々と感じられた。

 そんな永平寺線も、私が乗った三年後には廃止になってしまった。短い永平寺線の旅は、今となっては文字通りひと夏の思い出である。


京福電鉄永平寺線 永平寺駅にて 1999.8.4



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2009-08-08 20:47 | 昔の写真 | Comments(0)