<   2008年 10月 ( 7 )   > この月の画像一覧

寝台特急はやぶさの旅

 10月23日、東京駅から寝台特急「はやぶさ」に乗車した。
f0113552_12215191.jpg

 今回乗り込んだのはB寝台個室ソロである。
f0113552_12221089.jpg

 寝台に座ったとき進行方向を向けるよう、下段の席を選んで取った。前回乗ったA寝台個室シングルデラックスより狭いが、自分専用の寝台特急の車窓を得られたことが何より嬉しかった。
f0113552_12223238.jpg

 18時03分50秒、列車がゆっくりと東京駅のホームを後にすると、車窓には雨上がりの線路が都会の灯に淡く浮かび上がった。何にも代え難い、旅立ちの瞬間の歓びがあった。

 しばらく車窓に見とれた後、横浜駅を出たところで祝杯の発泡酒を開けた。おつまみは前回同様の崎陽軒のシウマイに、笹かまぼこも付けた。

 ほろ酔い気分になったところで、個室から通路に出る。左窓に展開する相模湾を眺めるためである。何より憧れの車窓だ。窓外はもはや真っ暗であるが、後方に散らばる小田原市街の灯火と、根府川駅付近では眼下に白い波も見えた。

 根府川の白糸川橋梁を渡る音に耳を済ませた後、部屋に戻って今度は弁当を開けた。東京駅のグランスタで買った高崎名物鶏めし弁当である。

 食べているうちに列車は丹那トンネルを抜けた。食後は闇の車窓にひたすら見とれた。家々から漏れる灯りに郷愁を感じた。黒く塗り潰された川面を渡り行くときは、その暗さに怯えた。

 車窓を見ながら、自分の人生について考えていた。車窓を見つめることは、人生を見つめることでもある。過去の旅を想った。そうして、今また同じ旅路の上にある幸いを想った。それから、ちょっと自分の行く末に不安を感じつつも、この旅路を糧にまた自信を持って生きていこうと考えた。

 静岡、浜松、豊橋、名古屋、岐阜と停車駅を重ねた列車は、やがて関ヶ原の闇に入った。降り続いた雨に車窓は白くけぶった。だがそれも、米原駅に到着する頃には晴れてきた。

 その後、京都駅まで闇の車窓に見とれた。
f0113552_1223552.jpg

 京都駅を出たところで寝台へ横になったが、なかなか眠れるものではなかった。大阪駅停車の記憶がある。姫路駅を過ぎたのも覚えている。

 それからいくらか眠れたものの、朝は5時前に目が覚めてしまった。外はまだ闇の車窓であった。残念ながら曇り空で、日の出は見えそうになかった。

 それでも岩国駅を発ったところで再び廊下に出た。瀬戸内海の眺めを楽しむためである。少しずつ明るくなってきた空には厚い雲が垂れ込め、海に浮かぶ島影がそれにとろけてしまいそうであった。朝焼けを望むことはできなかったが、夜明けの瀬戸内海はちょっとした水墨画みたいだった。

 徳山駅を過ぎたところでも、また廊下に出た。戸田、富海辺りの海岸を見るためである。夜明けに見たときよりもいくぶん青みを増した海原が広がった。そんな眺めに見とれているうち、車内販売のワゴンがやって来た。慌てて徳山駅の「さよなら0系弁当」を買った。

 個室に戻って弁当を食べ終わると、いよいよ大きなイベントが近付いてくる。下関駅・門司駅での機関車付け替え作業である。それを見届けるため、1号車デッキまで移動して待ち構える。

 下関駅では、機関車付け替えの作業を見ようと、二、三十人がホームに降り立っていた。
f0113552_12232682.jpg

 門司駅でも、下関駅ほどではないにせよ、大勢が先頭車付近に集まった。機関車付け替えの光景は、九州行き寝台特急の旅路に欠かせないものだ。
f0113552_12234448.jpg

 紅い機関車ED76に牽かれ、九州の旅が始まった。久しぶりの鹿児島本線の車窓を、のんびりと楽しんだ。前回のときのように桜の花はないけれど、車窓には柿の実やコスモスの花が流れた。

 大都市博多を過ぎ、寝台特急「はやぶさ」の旅はいよいよ佳境となった。残り少ない「はやぶさ」の旅に、私は何を想えば良いかわからなくなった。穏やかな日差しの中、列車はゆっくりと最後のときを刻んで行った。

 11時49分、寝台特急「はやぶさ」は新幹線駅設置工事真っ最中の熊本駅に到着した。ホームに降り立った後は、ひたすら機関車と客車の写真を撮った。
f0113552_1224649.jpg

 前回の寝台特急「富士」の乗車で、九州行き寝台特急最後の乗車という想いが強かった分、今回は寝台特急の旅そのものをじっくりと楽しめた感があった。その長い長い旅路を、この胸にしっかりと刻み込んだ。東京から九州への寝台特急の旅路を、私は決して忘れるものではない。



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2008-10-28 12:27 | 寝台特急 | Comments(2)

旅立ち

f0113552_1317591.jpg
f0113552_13172021.jpg
f0113552_13173545.jpg

 写真は今からちょうど九年前の東京駅の様子である。午前中、東京駅に到着する九州からの寝台特急を捉えたものだ。

 当時は九州からの寝台特急が三本もあった。大分からの寝台特急「富士」に、熊本からの寝台特急「はやぶさ」、そして長崎・佐世保からの寝台特急「さくら」である。今考えれば夢のような話である。また、特に「富士」と「はやぶさ」は二十分と間隔をあけず連続して東京へ上って来ていたというのも、今日では考えにくいことだ。

 それから九年のうちに「はやぶさ」と「さくら」が併結され、やがて「さくら」が廃止となり、今度は「はやぶさ」と「富士」が併結されるようになって現在に至っている。東京と九州を結ぶ寝台特急は、実質一本のみになった。


 その残った一筋の青き光に、まさに今日私は、身を委ねようとしている。東京から、寝台特急「はやぶさ」に乗って、熊本へ旅立つ予定である。これは私にとって九州行き寝台特急に乗る最後の機会になると思われる。来年三月での寝台特急「富士」「はやぶさ」の廃止が新聞で報道されているからである。

 物心付いたときからずっと、九州へ向かう寝台特急に特別な憧れを抱いてきた。今日はその想いのすべてを込めて、寝台特急の乗車を楽しむつもりである。旅立ちの車窓を、闇夜の車窓を、夜明けの車窓を、そして九州の車窓を、しかとこの胸に刻み付けたい。どうか忘れがたき旅となるよう、今心の底から強く強く祈るものである。



1枚目 寝台特急「富士」   東海道本線東京駅にて 1999.10.23
2枚目 寝台特急「はやぶさ」 東海道本線東京駅にて 1999.10.23
3枚目 寝台特急「さくら」  東海道本線東京駅にて 1999.10.23



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2008-10-23 13:32 | 寝台特急 | Comments(0)

20系寝台客車の思い出

f0113552_1813220.jpg
f0113552_18131662.jpg

 先日の鉄道博物館訪問記で、展示車両のナハネフ22について「幼い頃に憧れた20系」であると書いたが、改めて記憶を思い起こしてみると、20系寝台客車はさほど憧れの存在でもなかったように思う。

 そもそも20系寝台客車は、昭和33年(1958)に東京~博多間の寝台特急「あさかぜ」用車両としてデビューした。私が生まれるずっと前のことである。この20系は冷房装置や空気ばねなどが導入されたことで居住性が向上した上、編成内に「ルーメット」と呼ばれる豪華な1人用個室も備えていたことから、当時「走るホテル」と呼ばれた。また、ブルートレインと称された最初の車両でもある。

 20系はその後「あさかぜ」以外の夜行特急列車にも導入されていったが、昭和50年代になると老朽化から次第に特急運用を外れ、東京~大阪間の「銀河」など夜行急行列車に充当されるようになる。

 私が物心付いたときに知った20系は、そうした寝台急行列車としての姿であった。その頃には1人用個室などはもはや連結されておらず、食堂車もなかった。そして、編成の大半は旧態依然とした三段寝台だった。また、外観もだいぶ色褪せていた。幼い子供にしてみれば、薄汚れた丸っこい20系よりも、当時まだ新鋭の鮮やかな青色で、角ばってキリッとした面構えの14系や24系に憧れるのは当然であった。当時を振り返ってみれば、20系よりも断然14系や24系に乗りたいと考えていたように思う。

 そんな中にあっても、20系はかろうじて特急運用にも就いていた。臨時寝台特急の「あさかぜ」である。写真は昭和62年(1987)3月の国鉄最後の日に、ファンでごった返す東京駅でその姿を捉えたものである。当時も20系に対する憧れはあまりなく、物珍しさだけから撮ったものと思われる。すでにだいぶくたびれているし、テールマークが真っ白なのが何より気に入らなかったように思う。

 こうして思い起こしてみれば、やはり幼い頃の私は、20系にさほど思い入れはなかったものと言える。1人用個室ルーメットなど、登場時の素晴らしさを知ったのも、もう少し成長してからのことだと思う。だから、現役時代の20系にはあまり良い印象がない。今にして思えば、薄汚れてくたびれた20系ではなく、鮮やかな青色を纏い豪華な設備を揃えていた20系の姿を、一度見てみたかったものである。


20系臨時寝台特急「あさかぜ」 東海道本線東京駅にて 1987.3.31



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2008-10-18 18:16 | 昔の写真 | Comments(0)

被り

 寝台特急「はやぶさ」の旅まであと一週間と迫り、気分も高まってきた。それで朝上ってくる寝台特急「富士」「はやぶさ」を見送ろうと、今日は大森界隈に出かけた。

 寝台特急「富士」「はやぶさ」を撮るときは、いつも早めに現地へ行って、先行する普通列車を捉えて構図を決める。今日も前の二本を捉えた。
f0113552_1723273.jpg

 準備万端と思って待っていると、悪いことに寝台特急「富士」「はやぶさ」は、手前側を走る京浜東北線の北行電車と並走しながらやって来た。これでは京浜東北線の電車に視界を遮られてしまう。

 電車の方が俊足で先にやって来た。寝台特急の姿は完全に見えなくなった。電車のステンレスの車体越しに、機関車の低い唸り声が聞こえた。私は咄嗟に反対側を向いてカメラを構え、最後尾を捉えることにした。

 ステンレスの車体が視界から消えると、青き客車の列が流れていた。夢中でシャッターを切った。あっという間に遠ざかっていく青色に、一週間後の旅への想いを込めた。
f0113552_1723268.jpg



1枚目 東海道本線E231系普通電車 東海道本線大森駅~蒲田駅にて 2008.10.16
2枚目 寝台特急「富士」「はやぶさ」東海道本線大森駅~蒲田駅にて 2008.10.16



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2008-10-16 17:24 | 寝台特急 | Comments(0)

ブルートレインマウスパッド

f0113552_17155837.jpg
 鉄道グッズというものには、さほど興味があるわけではない。今の時期は鉄道の日関連のイベントがあちこちで開かれており、廃車になった車両の部品の即売会などもあるようだが、あまり行こうという気にはなれない。グッズにお金をかけるよりも、どちらかというと、実際に乗る方が良い。

 とはいうものの、手元に鉄道グッズがまったくないというわけでもない。多少のものはある。そんな中で気に入っているのは、二年くらい前に新宿駅構内地下通路の露店で購入した小さなプレートである。一枚五百円であった。横長の白いプレートには「寝台内では禁煙」と大きく書かれ、その下に「貴重品は必ず身につけておやすみください」と朱書きされている。寝台車両の枕元に付いていたプレートだ。どこかぎこちない書体は「国鉄フォント」とでも言うべきであろうか、それを見ているだけで旅情が湧いてくる。実際、自分の寝ているベッドの横の壁にでも貼り付ければさらに雰囲気が出そうだが、今は本棚の片隅にひっそりと立てかけてある。

 そんな「寝台特急グッズ」がお気に入りの私だが、先日インターネットで面白いグッズを見付けた。FLIP CLICKというOA商品を扱うネットショップのサイトにある「ブルートレインマウスパッド」というものである。ブルートレインを牽引する機関車に付けられる円形のヘッドマークがマウスパッドになっている。それが12種類もあった。

 その12種類は、私がブルートレインに憧れを持ち始めた昭和五十年代に走っていた列車である。今も残る「富士」「はやぶさ」「あけぼの」「日本海」「北陸」に加えて、現在では廃止となってしまった「さくら」「みずほ」「あさかぜ」「瀬戸」「出雲」「ゆうづる」「はくつる」といった懐かしいマークもある。

 これには私も迷わず手が出た。さっそく、一つ購入してみることにした。12種類の中で一番お気に入りの列車は「富士」だ。しかし、丸型の「富士」のデザインは幼い頃からあまり好きではない。そこで次にお気に入りの「あさかぜ」にするか「はやぶさ」にするか、迷った。今はなき「あさかぜ」も捨て難かったが、やはり今度乗る「はやぶさ」を選ぶことにして、注文した。

 手元に届き、箱を開けてみると、マウスパッドはブルーのケースに入れられていた。ケースには昭和五十年代の「はやぶさ」の編成表が書かれており、その頃牽引していたEF65PF型機関車のイラストもあって、懐かしさに浸ることができた。

 マウスパッドを手にしてみると、思ったより薄手のものであった。ただ、マウスパッドとしては十分なものである。しかし、私は普段マウスパッドを使っていないので、このヘッドマークを本来の用途で使うかどうかは思案中である。壁に貼っておいた方が良いかもしれない。

by railwaylife | 2008-10-12 17:34 | 寝台特急 | Comments(0)

ブルートレインの秋

f0113552_21351749.jpg

 昨年11月18日付けの朝日新聞の報道に続き、今日は毎日新聞にも来年3月での寝台特急「富士」「はやぶさ」の廃止報道が出た。昨年の朝日新聞では、廃止が「JR各社の担当課長レベルで合意済み」と書かれていたが、今日の毎日新聞では「来年3月のダイヤ改正で姿を消す」とはっきり書かれている。まだJRからの正式な発表はないわけだが、情報がより確かなものになったと言わざるを得ない。

 昨年の報道の時点で、もはや廃止に対する覚悟はできていた。それを受けて今年の4月に「富士」に乗ったし、今月下旬には本当に最後の乗車という覚悟で「はやぶさ」にも乗る予定だ。でも、それでも、物心付いたときから格別の思い入れがあった九州行き寝台特急廃止の報には、改めて胸の詰まる想いだ。言葉もない。

 しかし考えてみれば、JRになってから何の施策もなされず、よく今まで走り続けてくれたものである。新型車両や豪華な設備の導入がなされ、北海道行き寝台特急のように人気が出ればそれに越したことはなかったが、旧態依然とした設備のままであった分、私も幼い頃からの憧れそのままに、ブルートレインの旅を楽しむことができた。今年の4月には初めてA寝台個室「シングルデラックス」に乗車したが、その設備も国鉄時代のままであった。まさに幼い頃私が憧れていたA寝台そのものであった。

 来年3月での廃止となれば、年内にもJR各社から正式な発表があるものと思われる。そうなると、この列車を取り巻く環境は俄かに騒がしいものとなるに違いない。でも願わくば、どうか、どうか、最後の日まで、何事もなくその使命を全うしてほしいものである。駆け抜けろ!「富士」「はやぶさ」!


寝台特急「富士」「はやぶさ」 山陽本線下関駅にて 2008.4.11



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2008-10-03 21:38 | 寝台特急 | Comments(0)

鉄道博物館

 恥ずかしながら開館一周年を目前にして、初めて大宮の鉄道博物館を訪れた。
f0113552_1819188.jpg

 シミュレータなどの体験施設にはまったく興味がわかず、ただひたすらヒストリーゾーンの実物車両を眺めて歩いた。

 中でも見とれたのは、かつて上野駅に出入りしていた車両である。幼い頃、列車を見るためだけに上野駅に行っていたときに、見慣れていた車両だ。
f0113552_18192037.jpg

f0113552_18193888.jpg

 特急「ひばり」と急行「まつしま」には実際に乗ったこともある。ボンネット特急「とき」のヘッドマークは文字ではなくすでに絵入りだったが、上野駅で何度も見た記憶がある。特急列車や急行列車がひっきりなしに出入りして華やかだった上野駅の様子が甦ってきた。

 そして、もう一つ注目したのは、初代ブルートレインのナハネフ22である。
f0113552_18195456.jpg

 20系の現役時代はほとんど知らないが、幼い頃に本や写真で見た憧れの存在である。開館当初は車内に入ることができたようだが、今は立ち入り禁止になっているのが残念であった。三段寝台に実際に触れてみたかったものだ。

 ブルートレインと言えば、現在のブルートレインの牽引機でもあるEF66型機関車を、間近でじっくりと見ることができたのも良かった。
f0113552_18201251.jpg

 その他に、かつて交通博物館で見慣れた車両もあって、懐かしい思いがした。ただ、展示全体の解説が少なく「博物館」と言うには物足りないような気もした。もう少し詳しいものがあっても良いかなと思った。頻繁に行きたいという気はしなかったが、懐かしい思い出に浸りたいときは訪れてみたいと思う。また今後、保存車両が増えていくことも期待したい。



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2008-10-02 18:21 | その他 | Comments(4)