カテゴリ:駅弁( 4 )

新宿弁當

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 平日の夜、妻が仕事で遅くなったり友達と食事に行ったりするとき、私は仕事帰りに通る新宿駅で駅弁を買って、家での一人の夕飯にすることが多い。そして、安い発泡酒を片手に、ちょっとした旅気分に浸る。

 そんな私の夕飯となる新宿駅の駅弁で最近お気に入りなのが、以前「特急電車の旅」で初めて食べた「新宿弁當」である。中央本線沿線にゆかりのある食材、料理が詰め込まれたこの駅弁は、旅心に浸るのにもってこいだからである。この「新宿弁當」を、つい先日もじっくりと楽しんだので、その感想を綴っておきたい。 



 ふたを開けてまず箸をつけたのが「三色こんにゃくの肉味噌のせ」である。こんにゃくは山梨県で盛んに作られているそうだ。そのこんにゃくにかかった肉味噌は甘辛く、あっさりしたこんにゃくによく絡んで濃厚な味となる。発泡酒のおつまみにはぴったりだ。

 続いて「山うどしょうゆ漬け」を口に運ぶ。よく染み込んだしょうゆ味と、うど独特のちょっとした苦味という二つの味が楽しめる。大人向けの味かもしれない。

 次は「山里の煮物」である。信田巻、栗、里芋、青蕗、椎茸、人参から成るこの煮物は、山間を往く中央本線の車窓を想起させるものだ。和風の味付けが野菜によく染みていて、ついパクパクと食べてしまう。ただ、栗はそれだけで食べるのではなく、ご飯にのせて口に含めば栗ご飯になり、さらに味わい深くなる。

 こうしておかずをあれこれ食べる合間に「とりそぼろご飯」を味わう。このご飯は「とりそぼろ」と言っても卵のそぼろがメインで、全体的には薄味だ。白飯が好きな私としては、その方が白飯そのものの味も感じられるので気に入っている。また、あっさりしている分、付け合わせの野沢菜をのせ味の変化を楽しんでもよい。

 おかずに戻って、マスの信州味噌焼を食べる。見た目は鮭のようだが、鮭よりも身の引き締まっている感じがして食べ応えがある。そして、味噌の味がたっぷりである。それを口にして、信州を想わずにはいられない。

 ここで私は「ワインくずもち」を口にする。山梨の甲州ワインにちなんだこの菓子はデザートなのだろうが、途中に食べることで口直しになる。そしてまた舌をリセットして、新たな味覚でおかずを楽しむことができる。中に包まれた餡の味が強いが、ワインの酸味も感じる菓子だ。

 そうやって口直しをして食べるのは「舞茸の天ぷら」である。つゆも塩もなく味があるのかなと思うが、噛めば噛むほどに舞茸の味が出てくる。だから、かえって何もつけない方がよい。

 さらに「黒冨士鶏のつくね」も味わう。柔らかい食感のつくねには味がある。一口で食べてしまったが、もったいなことをしたと悔やんだ。二つくらい入っていればよかったのにと思った。

 さて、これで一通りおかずを味わった。あとは残った「とりそぼろご飯」を大事に食べ切り、完食する。

 こうやって「新宿弁當」を味わいながらただただ想うのは、中央本線の車窓、甲州の風景、信州の風景だ。そして、いつかまたこの駅弁を味わいながら、新宿駅から中央本線で旅立ちたいと願う。その想いを叶えるために特急「スーパーあずさ」は、特急「あずさ」は、特急「かいじ」は、いつでも私を新宿駅で待っている。
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 ところで、ここまで書いてみると、私の味覚の表現はどうも稚拙な気がする。それぞれの品の感想の末尾に「とってもおいしいです」とでも付けたら、まるでどこかの番組に出てくる新人ADのコメントみたいになってしまうように感じる。たぶん、私が味覚を文章で表現することが少なく、慣れていない所為なのだろうが、もっと巧く表現できるようにならなければとは思っている。

by railwaylife | 2010-09-19 23:33 | 駅弁 | Comments(0)

高原野菜とカツの弁当

 寝台特急「北陸」で早朝に上野駅へ帰ってきた日曜日は、午後から夫婦二人で妻の友人のピアニストが開くコンサートを聴きに行く予定であった。

 コンサートは14時からであったが、会場の最寄り駅が五日市線の秋川と遠かったため、昼過ぎには家を出なければならなかった。

 それでも上野駅から一旦帰宅すると、夜行明けで寝不足の妻はしばらく仮眠を取っていた。

 その後、そろそろ支度にかからなければならない時間になったので、私は妻を起こしたが、旅の疲れもあってか、妻はなかなか起きられなかった。

 しばらくしてどうにか起き出した妻は、大急ぎで支度をしたが、家を出るのが予定していたより少し遅くなってしまった。それでなるべく早足で最寄り駅まで向かったが、乗るはずだった電車が目の前で出て行ってしまった。

 二人で途方に暮れてしまったが、とにかくすぐに乗り換え案内で到着時刻を再検索してみた。すると、各線の接続が悪く、当初予定していたよりも三十分くらい遅れることがわかった。仕方のないことではある。

 ただ、時間に余裕ができたので、せっかくだから昼食をとろうということになった。この日は早朝の上野駅で朝食をとっただけであったからだ。しかし、電車の接続の関係で、どこの乗り換え駅でもまとまった時間がとれそうになかった。最大でも立川駅での十数分ということで、ゆっくり食事をしている暇はなさそうだった。

 どうしようかと思っていると、妻が私に「立ち食いそばでも食べれば。私はいいけど」と言った。しかし、それは何だか申し訳ないような気がした。

 とにかく次の電車に乗って、目的地へ向かい始めた。ルートとしては、東急東横線で渋谷へ出た後、山手線で新宿、中央快速線で立川へと向かい、そこから青梅線と五日市線を乗り継ぐことになっていた。

 東横線と山手線に乗っている間も、私は昼食をどうしようかとずっと考えていたが、ある案を思い付いた。それを実行すれば、二人ともゆっくりと食事をとることができる。

 その案とは、新宿から立川まで、特急に乗ることである。ちょうど13時30分発の特急があるはずだ。新宿駅で何か食糧を買い込めば、特急の車内で移動中にゆっくりと食べることができる。立川からは、予定していた三十分遅れの電車に乗り継ぐこともできるし、一石二鳥である。もちろん特急料金はかかるが、さほど高くないはずである。

 さっそく妻に提案すると、賛成してくれた。そこで新宿駅に着いた私たちは、特急券を購入してから弁当屋へと向かった。

 折しもこの日は、弁当屋で駅弁大会が開かれており、特別に全国の駅弁が売られていた。それで、豊富な種類の中から好きな駅弁を選ぶことができた。それぞれが気に入った弁当を買い、9番線ホームの特急「かいじ」109号へと乗り込んだ。

 幸い自由席は空いていて、ゆったりと座ることができた。こうして特急列車に乗り込んでみると、すっかり旅気分である。旅から帰ってきたばかりなのに、気分だけでもまた旅立ちのさまを味わえるとは、嬉しい誤算である。

 席に落ち着いたところで、さっそく弁当を開ける。私が買ったのは、中央本線小淵沢駅の「高原野菜とカツの弁当」だ。この日の中央本線での行先は立川だが、気分的にはもっと先まで行きたいところであった。だから沿線の駅弁を買ってみた。
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 ちなみに妻が買ったのは「瀬戸の魚島出世寿司」であった。
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 駅弁を食べながら、新宿駅の発車を迎える。駅を出ると、普段の通勤経路の眺めが始まった。しかし、特急の車内から眺める景色はいつもとまた異なる。日常の風景が特別なものに見えてくるから、気分が良い。

 そして、平日は毎日乗り降りする荻窪駅に差し掛かる。荻窪駅を通勤で使うようになってから、いつかこの駅を特急列車の車内から見遣ってやりたいと思っていたが、その願いは意外と早く叶った。しかし、今回の行先は知れている。本当は甲州か信州にでも旅立つときであってほしかったものである。それで私は、駅弁に入っている高原野菜を噛み締め、はるか信州の高原を想った。

 荻窪から先は普段乗らない区間なので、それも楽しみではあった。三鷹駅の停車を経ると、線路はだいぶ高架化が進んでいて、新鮮な感じもした。

 程なく立川に到着し、わずか二十五分で特急列車の旅は終わった。ここから青梅線と五日市線を乗り継ぎ、秋川には予定通り三十分遅れで到着した。

 冷たい雨の中、駅から会場へ向かうと、ちょうどコンサートの後半から聴くことができた。しかし、私も寝不足であり、演奏が始まるとたちまちに強い睡魔に襲われた。そして、ピアノ三重奏の美しい音色が眠りをさらにいざない、私はまだ寝台特急に乗っているかのような、夢心地のひとときを過ごしていた。



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by railwaylife | 2010-03-10 21:45 | 駅弁 | Comments(0)

都区内パスとさよなら寝台特急北陸記念弁当

 昨日参加した田端運転所の撮影会には、都区内パスがセットで付いていた。その切符で会場まで来てくださいということだったのだろう。昨年の旧東京機関区での撮影会には、鉄道博物館の入場券と、東京-大宮間の新幹線自由席特急券が、いわば「抱き合わせ」のように付いており、値段も5,000円もしたが、今年の田端運転所の撮影会が3,000円で都区内パス付きというのは、なかなか良心的だと思った。

 昨年は、鉄道博物館の会員だったこともあり、鉄道博物館の入場券は宝の持ち腐れだったし、結局新幹線の自由席特急券も使わなかったからもったいないことをした。ただ、私は旧東京機関区に入れるだけでも5,000円払って良いと思っていた。それくらい、旧東京機関区には思い入れがあった。残念ながら、当時はもう建物の中が廃墟のようであったが、今ではすっかり更地になって跡形もないから、建物があるときに入れただけでも本当に貴重な経験であったと思う。

 さて、今年は都区内パスを手にしたわけであるが、撮影会は午前中で終わることだし、午後はその切符を使い倒してやると意気込んでいた。それで当日は、なけなしの有給休暇を取ろうと企てていたのだが、あいにく今月に入って仕事が忙しくなり、午前中だけ休むのが精一杯であった。

 だから、残念ながら田端から職場の最寄りの荻窪まで都区内パスを使うのが関の山だなと思っていたが、一つ困ったことがあった。それはお土産にもらう「さよなら寝台特急北陸記念弁当」である。

 別に職場まで持って行って昼食にしても良かったが、あまり格好の良いものではないという気がしていた。だったら、その辺の公園で食べても良かったが、それもちょっとむなしい。やっぱり駅弁は列車の中で食べて然るべきだと思った。

 しかし、都区内パスで行ける範囲に、駅弁を食べられるような列車はなかなか走っていない。それでも私は、一計を思い付いた。そこで田端運転所を出てから尾久駅まで歩き、そこから東北本線で一駅、赤羽に出た。

 ここで湘南新宿ラインに乗り換える。その前にホームでグリーン券の券売機にPASMOを通しておく。ここからグリーン車に乗って、駅弁を食べようという魂胆だ。乗るのは大崎までである。都区内を縦断すれば、駅弁を食べる時間くらいあるだろうと思う。

 ホームでお茶も買って、やって来た逗子行きの5号車グリーン車二階席に乗り込む。あまり時間はないぞと思って、席に就くとすぐに駅弁を開いてみた。
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 それにしても、廃止を記念してその列車名を冠した駅弁が売り出されるとは、時代は変わったと思う。しかも、この「北陸」という地味な寝台特急であっても売られるのだから、大したものである。また、駅弁だけではなく、いろいろなグッズも発売されている。

 こんなふうに「廃止記念」の駅弁やグッズが売られるようになったのは、寝台急行「銀河」が廃止になる頃からだろうか。商売上手だなあと私は冷ややかな感じで思っていたが、それでもついついグッズには手が出てしまう。実は、田端運転所でも「さよなら北陸グッズ」が売られていて、私はこっそり「北陸」のヘッドマークのレプリカを買ってしまっている。

 ただ、私はそこまでグッズにこだわりはない。手に入る範囲で買い求めるだけである。記念切符のような類のものも含め、中には限定グッズみたいなものもあり、早朝から並ばないと買えないような場合もあるようだが、そこまでして入手しようとは思わない。そうやって「もの」にお金をかけるよりは、実際に列車に乗った方が良い。また最近は、ご丁寧に親戚一同に配るんだかなんだか知らないが、限定グッズを一人でたくさん買い占めていくようなこともあるようで、そんなのには到底付き合いきれない。
 
 さて、駅弁に戻るが、開けてみるとなかなか豪勢な弁当であった。中にはお品書きが付いていて「北陸」の走る区間の地図が載っていたので、食材は沿線の名物が使われているのかと思ったが、どうもそうではないようであった。昨年の「さよなら寝台特急富士はやぶさ記念弁当」には沿線の名物がいろいろ入っていて楽しかったから、今回もそうかと思っていたので、少し残念であった。別に沿線に名物がないわけでもないと思うのだが、弁当のおかずとして入れるには難しかったのだろうか。それでも、カニのフライが入っていたのは、少し北陸らしかった。また、鳥そぼろと玉子そぼろがヘッドマークをイメージしているというのが、少し「北陸」を感じられるところであった。
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 せっかくグリーン車のシートに身を沈めたというのに、私は車窓そっちのけで、駅弁に集中していた。しかも、あまりゆっくりしていれられないという思いがあったから、少し急いで食べた。それで、列車が新宿に着く頃には食べ終わってしまった。もう少しゆっくりすれば良かったなと後悔した。

 新宿から先は、職場へ向かうために大崎へ着いたらすぐに戻ってこなければならない区間である。駅弁も食べ終わってしまったし、何となく大崎まで行くのが馬鹿らしくなってきた。だが、グリーン券を買った手前、少しでも長くグリーン車に乗っていたかった。

 それで、普段見慣れた渋谷辺りの景色を違う角度から眺めて楽しみ、ゆったりと過ごすうちに大崎へ到着した。すでに正午近くであり、すぐに新宿へ引き返して中央快速線に乗り換え、職場へ向かわなければならなかった。

 渋谷から荻窪までは定期券もあるわけだが、私は荻窪駅の改札も都区内パスで通過し、仕事からの帰りも荻窪から渋谷まで都区内パスを使った。これで結局この日は、田端まで行く間に寄り道した分も含めると、渋谷-御茶ノ水、御茶ノ水-日暮里、日暮里-田端、尾久-大崎、大崎-荻窪、荻窪-渋谷と使い、計算してみると合計は1,230円になり、しっかり元は取ったようであった。だが、今度は都区内パスを使って一度、一日中乗り回ってみたいものである。

by railwaylife | 2010-03-04 23:43 | 駅弁 | Comments(0)

駅弁大会

 現在、新宿の京王百貨店で「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」が開かれている。これは、百貨店で開かれる駅弁大会の中でも最大規模のものであるという。

 私は列車の旅が好きだから駅弁も好きで、旅先では楽しみの一つでもある。それで、今までに都内で開かれた百貨店の駅弁大会には何度か行ったことがあるが、この京王百貨店の駅弁大会には行ったことがなかった。ただ、有名な大会だし、以前から気にはなっていた。

 それで今年も、この一月に開かれるということは何となく知っていたが、今日たまたまテレビで大会の様子が放送されており、改めて今開催中なのだということを知った。

 すると、そのテレビを一緒に見ていた妻が、駅弁を食べたいと言い出した。ちょうど私は午後から出かける用事があったし、新宿は通勤経路の途中で定期券も持っているので、京王百貨店へ行ってみることにした。

 15時過ぎにJR新宿駅に着き、京王百貨店へ行ってみると、店内はやけに混んでいた。三連休の初日だから仕方ないが、駅弁大会の会場の混み具合が思いやられた。

 7階の催事場に着き、会場へ入ると、案の定かなりの人出であった。何より熱気がすごく、人々の食に対する思いの強さが伝わってきた。それで、各地の駅弁をじっくり楽しむという余裕もなく、目的のものだけ買って帰ることにした。

 妻から頼まれた駅弁は、山陽本線姫路駅の「瀬戸内鯛寿司」と、函館本線森駅の「いかめし」と、奥羽本線米沢駅の「牛肉どまん中」の三点であった。いずれもテレビのランキングで上位に入っていたものだ。そのためさすがに人気が高く、森駅の「いかめし」と米沢駅の「牛肉どまん中」はかなり長い行列に並んで買わなければならなかった。それでも何とか目的の駅弁を買い揃え、早々に熱気溢れる会場から退散した。

 夕方に帰宅し、この三種類の駅弁が少し早めの夕食となった。量の少ない「いかめし」は二つ買ってきたが、あとの二種類は妻と二人で山分けである。

 いずれも人気の駅弁だけに美味しそうであったが、駅弁というものはやはり旅先で食べてこそ、味が深まるというものである。特に私にとっては、列車の中で食べるというシチュエーションが何よりの味付けである。それで私は、それぞれの駅弁を食べるときに、その駅弁に対する思い出や、食べたいシチュエーションを思い浮かべながら口にすることにした。

 まずは姫路駅の「瀬戸内鯛寿司」である。これは鯛の押し寿司だ。
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 この駅弁は正直言って今まで知らなかった。以前に一度姫路駅で駅弁を買う機会はあったけれども、栗おこわ弁当という平凡な駅弁を買ってしまっていた。

 だから初めて口にする鯛寿司であったが、鯛の身の肉厚があり食べ応えのある寿司であった。また、鯛の上に柚子と昆布が添えてあり、それが味のアクセントにもなっていた。

 この駅弁を姫路駅で買って、列車に乗って食べるとすれば、やはり山陽本線の上り新快速で食べるのが良いだろう。姫路を出て、明石を過ぎれば明石海峡が見えてくる。その青い海原を見ながらこの鯛寿司をつまめば、さらに味は深まるというものだ。

 続いては森駅の「いかめし」である。いかの中に米を詰め、甘辛く炊き上げたものだ。
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 これは超有名な駅弁であるし、私も何度か食べたことがある。ただ、それはやはりどこかの駅弁大会で買ってきたのを食べたものであり、北海道の現地で「いかめし」を食べたことはない。

 いつだったか函館本線の上り特急「スーパー北斗」に乗ったとき、長万部辺りからこの「いかめし」を携えた売り子が席にやって来た。私はそのときあまりお腹もすいておらず、買うつもりがなかったが、周りにはけっこう購入する客がおり、たちまちに車内に「いかめし」の甘辛い匂いが立ち込めた。それで私もお腹がすいてきてしまったという憶えがある。

 そんな思い出のある「いかめし」であるが、これを森駅で買って、列車の中で食べるとすれば、特急「スーパー北斗」ではなく、のんびりした鈍行のディーゼルカーの方が良いのではないかと思う。鈍行列車に揺られ、ゆったりと噴火湾の海原を眺めながら「いかめし」をほおばるというシチュエーションが良い。

 そして最後は米沢駅の「牛肉どまん中」である。ご飯の上に牛そぼろと牛肉煮が載せられた、いわゆる牛めしである。
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 この「牛肉どまん中」は現地で購入したことがある。米沢駅のホームで、売り子に勧められるままに買ったのが最初であった。そのときは確か東北の旅からの帰途であり、福島からの東北本線の車内で食べた気がする。初めて食べたときから、私はこの牛めしの味付けがいたく気に入った。甘すぎず辛すぎず、絶妙の味加減だと思う。

 その後も気に入って何度か食べているが、一番の思い出は、一昨年に東京から乗った寝台特急「富士」のシングルデラックスで食べたことである。これは、東京駅のグランスタで売っていたものを乗車前に買い込んだものであり、そのときの「富士」への乗車の思い出とともに忘れられない味になっている。

 ただ、米沢牛を使っている駅弁だから、やはり米沢駅で買って食べるのが一番良いと思う。この駅弁を食べるのに乗る列車としては、米沢から福島方面に向かう鈍行電車が良い。板谷峠を恐る恐る下って行く電車に揺られ、峠の深い緑を見ながら牛めしに食らいつきたい。

 そんなふうに、それぞれの駅弁の「食べ方」を思い描きながら、私は夕飯を楽しんだ。だが、やはり何よりも、実際に旅に出て行く先々で駅弁を楽しみたいと思った。明石海峡とか噴火湾とか板谷峠とか贅沢は言わないから、今年も旅に出て、どこかの列車の車内で駅弁を存分に味わいたいものである。



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by railwaylife | 2010-01-09 23:56 | 駅弁 | Comments(0)