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いつのまにやら700系

 2010年11月13日土曜日、有楽町へ買い物に行ったついでに私は、東海道新幹線の300系を眺めていくことにした。

 昔から「光陰矢の如し」と言うように、日常にかまけていると歳月なんてあっという間に過ぎてしまう。東海道新幹線の300系も、気付いたときには残りあと1編成になったりしていて、いわゆるにわかに「惜別」を称する人たちの狂想曲が始まっているかもしれない。

 そんなことが始まる前に私は、じっくりと300系を眺めておく。だから、どんなついでであっても、300系を見ておくようにしたいと思う。

 この日、有楽町の東京交通会館で用事が済んだのが昼の12時15分くらいであった。私が以前にJTB時刻表10月号を見ながら作った「300系時刻表」をバッグから取り出してみると、ちょうど東京発12時26分の655A「こだま」655号と、同じく東京発12時33分の513A「ひかり」513号が300系であることがわかった。

 短時間に二本の300系が立て続けに見られるとは運のいいことだと思いながら私は、どこで300系を見送ろうかと考えた。有楽町といえば東京交通会館のテラスが新幹線の「撮影名所」だが、そこにはこの前行ったので、別の場所を考えた。

 私は数寄屋橋に出た。線路が晴海通りを跨ぐ橋が、新幹線を眺めるにはちょうど良かった。無論、周囲にはビルが建ち並び、晴海通りにはせわしく車が行き交っている。だが、そういう都会らしい風景の中で300系を見送ることが、この日の私の狙いであった。

 それでそんな街中にカメラを持って佇んだ。レンズを向けるのは、何でもない都会の只中の風景だ。しかし、そこをすり抜けて行く300系の姿はもう間もなく過去のものになろうとしている。それを私は、捉えるつもりだ。

 12時26分を過ぎた。東京駅からここまではいくらもないから、程なく300系「こだま」655号がやって来るはずだ。

 カメラを構える。白い車体が現れる。しかし、そこには私が思い描いた風景は現れなかった。白い車体の鼻が長かったからである。700系だ。
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 そういえば、時刻表10月号の東海道新幹線のページには、300系の列車の横に「11月1日からは700系車両で運転」とか「11月2日からは700系車両で運転」といった文句が躍っていたなと思い出す。先日、私が東京駅で「300系並び」と称して見送った「こだま」647号もそうであった。この「こだま」655号もその対象であったのだろう。

 先月、300系の時刻表を作るときにそんな文句を見ていた私は、11月になったらこの時刻表を更新しなきゃなとは思っていたが、忙しい日常に追われてそんな暇もなかった。でも、それは仕方のないことだ。

 それに、数分も待てばもう一本の300系がやって来る。まさかこの近接した二本の300系が二本とも700系になってしまったということはないだろう。時刻表にも、例の文句はそんなに近くに書かれていた記憶はない。とびとびにあったはずである。

 だから、次の「ひかり」513号はおそらく300系だという確信があった。それで、東京発12時30分のN700系35A「のぞみ」35号をやり過ごし、今度こそ私の思い描く風景が現れるのを待った。

 12時33分を過ぎた。カメラを構える。白い車体が現れる。しかし、やっぱりそこには私が思い描いた風景は現れなかった。また白い車体の鼻が長かったからである。これも700系だ。
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 まさか二本ともが700系に置き換わっているとは思わなかった。私は、何が悲しくて、まったく同じような写真を二度も撮ってしまったのだろう。むなしく、地下鉄の銀座駅へ向かうしかなかった。

 それにしても、時刻表にはこの二本ともが700系に置き換わるとは、やはり書いていなかった気がした。有楽町からの帰路にも、そのことがずっと頭にあったので、帰宅してから改めて時刻表を見てみた。すると、思った通り「11月1日からは700系車両で運転」と注記されているのは一本目の「こだま」655号の方だけであった。二本目の「ひかり」513号には、何の注記もなかった。

 それなのに「ひかり」513号が700系だったのは何故だろうか。たまたまこの日が700系だったのか。それとも、時刻表にも断りもなしに700系に置き換わってしまったのだろうか。私は「ひかり」513号を毎日見張れるわけもないので、そのどちらかはわからない。

 しかし、遅かれ早かれどの300系も後継の車両に取って代わられることは間違いのないことだ。そしてそれは、時刻表という机上で眺めている世界よりもずっと早く進んでいるということでもある。だから、どんな機会であれ、やはり今のうちから300系をよく見ておくべきであろう。

 何にせよ、今回狙った「数寄屋橋の300系」はやり直しである。まあ、この日は予報のわりに天気が悪く、ちっとも冴えない空だったから、別に悔いはない。また冬晴れの日にでも、改めて「数寄屋橋の300系」を捉えることにしよう。


新幹線700系電車
1枚目 「こだま」655号 東海道新幹線東京駅~品川駅にて 2010.11.13
2枚目 「ひかり」513号 東海道新幹線東京駅~品川駅にて 2010.11.13

by railwaylife | 2010-11-16 23:15 | 300系 | Comments(0)

300系並び

 先々月、東京駅に300系を見に行ったことがあったが、そのときの記事で私は「今度は300系同士の並びを見てみたい」と書いていた。だが、今や東京駅で300系が並ぶ場面というのは、意外と少ないものであった。

 定期列車だけで調べてみると、その機会は一日一回限りであった。東京駅のホーム全体で見れば、同じ時間に二本以上の300系が停まっていることは何度もあるようだが、となり合った番線に二本が仲良く並ぶ光景というと、ただの一度しかない。

 その光景は、朝の10時過ぎにやって来る。10時10分、15番線にまず300系「ひかり」460号が到着する。この列車は折り返し10時26分発の「こだま」647号となる。次いでとなりの16番線には、10時17分に300系「こだま」632号が到着する。こちらは折り返し、10時33分発の「ひかり」509号となる。つまり、16番線に「こだま」632号が到着した10時17分から15番線の「こだま」647号が発車する10時26分までの九分間が、300系の並びを見られる時間となる。

 ところが、時刻表の10月号を見てみると、この10時26分発の「こだま」647号のところに注記があり、そこには「11月2日からは700系車両で運転」と書かれていた。一日一回の300系並びは、11月1日で終わりですよ、ということである。

 どんなことでもそうだが、最近は世の中の流れが早く、いつかそのうちに、なんて思っていることはあっと言う間に叶わぬこととなってしまう。

 この「300系の並びが見たい!」という私のつまらない願望も、日常に押し流されているうちに、叶わぬことになってしまうところであった。気付いたときにはもう、そんな光景は見られなくなっているということである。

 もちろん、臨時列車も含めれば、まだまだ東京駅では300系同士の並びが見られるのかもしれないが、この前もそうであったように、時刻表上では300系で運転されることになっていても、いざ見に行ってみると700系だったということも少なくない。そんな不確かな場面に賭けるほど、日常は暇ではない。

 だから私は、11月2日が来る前に、朝10時過ぎの東京駅新幹線ホームへ行ってやろうと思っていた。



 そして一昨日火曜日、それを実行に移した。この日は、午前中に病院に行かなければならないこともあって午前中休みを取り、午後から仕事へ行くことになっていた。それで私は、東京駅に寄ってから病院へ行くことにした。家から病院、病院から勤務先へという経路から見れば、東京駅はまるで明後日の方向にあったが、そんなことにはかまっていられなかった。行こうと思ったときに行かなければ、行きたいところには行けない。日常にかまけて行く機会を逃せば、どうせまたこのブログに「300系同士の並びを一度見たかったものである」とか湿っぽく書くだけであろう。そんなのは、いかにも愚かしい。だから私は、勇んで10時過ぎの東京駅へ出かけた。

 さて、私は10時17分から10時26分までの九分間が300系の並びが見られる時間であると書いた。だが、実はこの九分間は、確かに300系がとなり同士の番線に並んではいるけれども、その顔が並んでいるわけではない。と言うのは、16番線のホームの方が若干品川方に飛び出していて、そこに入線する列車の停止位置が前がかりになるからである。だから、九分間の両者の眺めはこんなふうである。
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 15番線側の300系が、16番線側の300系に隠れるように佇んでいる。もっと16番線ホームが長く、引いて見られれば良いのだが、あいにくこれがホーム一番端からの眺めである。

 だから、実際に300系二編成が顔を並べるのは、15番線の列車が「こだま」647号として16番線の列車の横へ飛び出てくる10時26分の一瞬ということになる。私は、その瞬間を静かに待った。幸いにして、こんなどうでも良い場面を見ようという物好きも他にいなかったから、のんびりと待つことができた。

 300系を含めた新幹線の各形式が並ぶ眺めをぼんやりと見やる。
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 この眺めからやがて200系が消え300系が消え、E5系なんて車両が現れたりする。そして、東京駅の周りにはにょきにょきとビルが生え、赤レンガ駅舎は創建当時の姿に復元されている。目の前にある風景は瞬く間に変わっていく。そんな変化の早さに、私はついていけない気がする。そう感じる私は、現代の落ちこぼれなのかもしれない。

 やがて、待ちわびた10時26分を迎える。発車メロディーが微かに聞こえたかと思うと、15番線の300系がのろのろと出てきた。それで、並びの一瞬はスローモーションのようにゆっくりと過ぎていって、何だか自分の想いを込めるタイミングが合わせられないままだったが、私はそれでも300系並びというその瞬間を脳裏に焼き付けていた。
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 あとは旅立つ300系をじっと見送る。次第に速度を上げていく白き車体に、毎度のことながら西への旅心を乗せる。
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 考えてみれば、この「こだま」649号は名古屋までしか行かない。想いは名古屋よりもっと遠くへ飛ばしたいところであるが、その先はもうどこでも良かった。大事なのは、今いる自分の日常ではない、どこか他の場所の風景を思い描くことである。そのために私は、心を旅立たせる。そしてそれができるこの場所に、130円の入場券だけで入り込むことができるのだから、安いものである。

 旅心を300系に乗せた私は、日常の中央快速線E233系が待つ1・2番ホームへと静かに歩を進めた。


東海道新幹線300系電車 東海道新幹線東京駅にて 2010.10.19

by railwaylife | 2010-10-21 07:38 | 300系 | Comments(2)

旅立ちの300系

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 有楽町駅前の東京交通会館3階テラスは、東海道新幹線の撮影地として良く知られたところだ。東京国際フォーラムの特異な形状を背景に新幹線を捉えられるこの場所では、始発駅東京を発ったばかりの列車を見送ることができる。

 都会のビルに埋もれて走る新幹線をこうやって撮れる場所はそうそうないから、ここは人気の撮影スポットとなっていて、今年の早春に500系が引退する間際などは、かなりの撮影者で賑わったようである。

 近い将来、この300系が引退するときにも、ここにはカメラの放列ができるのであろうか。しかし私は、決してその列に加わりたくないと思う。皆で同じときに同じ風景を撮ったって仕方ない。私はそのとき、私だけの風景を眺めたい。そしてそうやって混み合う前に私は、この場所で300系を眺める。今ならまだ、定期列車だけでも一日上下合わせて延べ50本以上の300系がここを往来している。



 ところで、ここの背景になっている東京国際フォーラムは、東京駅から西へ旅立つとき、最初に目に入ってくる大きな建物である。だから、東京からの旅立ちの象徴でもある。

 確かここは、夜になると色とりどりのイルミネーションが点るはずである。いつだったか、寝台特急で東京駅を発ったとき、私はその旅立ちの歓びに感極まり、馬鹿みたいに目を潤ませていたことがあった。寝台特急「出雲」に最後に乗ったときのことだったろうか。そのとき、この東京国際フォーラムのイルミネーションが滲んで見えたものである。

 もう東京国際フォーラムを青き列車の車窓に見ることはないけれど、いつかまた私は、東京駅からの旅立ちの歓びを、この建物にぶつけてやりたいと思っている。そんな想いを込めながら私は、旅立つ300系をじっと見送っていた。

 それにしても、この青い青い旅立ちの空は、羨ましい!


東海道新幹線300系 東海道新幹線東京駅~品川駅にて 2010.10.16

by railwaylife | 2010-10-20 07:44 | 300系 | Comments(0)

秋空の300系

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 秋の青空は、夏の青空とは違う。

 熱い日差しと暑い大気に汚され、白みがかってモワッとした夏の青空よりも、秋の青空は澄んで色が濃い。

 秋の青空は、冬の青空とも違う。

 ピリッとした大気の向こうにある冬の青空より、秋の青空は引き締まった感じがない。どこか弛緩したところがある。それでも、その色は深い。

 そんな秋の青空は、高いと言われる。たしかに遠くにあるようにも見えるが、そうやって「高く」見えるのはなぜだろうか。

 そして、この300系を見下ろす秋の青空は、何色と言えば良いのだろうか。

 和名の色の事典を紐解いて、その色を探してみる。露草色という色が、秋の青空に似ている気がした。この色名の語源となったツユクサという青い花は、奇しくも秋の季語であるという。

 ただ、花期は六月から九月ということなので、旧暦の秋の季語だと言える。今の時期には、少し遅いかもしれない。だからこの秋の青空は、ツユクサの花が遺した色なのだと思う。

 ツユクサはまたツキクサとも呼ばれ、万葉集にも「月草」の表記で登場するそうだ。まさに日本伝統の色である。だから、この日本の空の色を表現するにもふさわしい。 

 そんな露草色の空の下をいま、300系が往く。


東海道新幹線300系電車 東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 2010.10.2

by railwaylife | 2010-10-19 07:29 | 300系 | Comments(0)

300系試し撮り

新しいカメラを手にした私は、特急「成田エクスプレス」のE259系、東急東横線の9000系に続いて、新幹線300系の「試し撮り」もしてみた。この300系もまた、私が最近追いかけている車両の一つであって、新しく手にしたカメラでこれからたくさん捉えていかなければならないものである。

 その最初のショットを、多摩川の丸子橋の上から狙ってみた。
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 丸子橋から東海道新幹線の橋梁までは、それなりに距離がある。だから、川面を含めて鉄橋を遠望するのも良いが、私は新しいカメラの特長を生かして、なるべく車両に寄ってみた。

 ここでは車両を真横から捉えることができる。それで、300系の先頭形状の緩やかな流線型を抑えてみた。私はやはり、700系やN700系の長過ぎる先頭形状よりも、この300系の形状の方が好きだ。

 そんな東海道新幹線300系の姿を、あと残りわずかな時間の中、新しいカメラでできるだけ多く残していきたいものである。そして、このカメラとともに東京を飛び出し、どこか遠い場所で300系を捉えてみたいとも考えている。


東海道新幹線300系電車 東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 2010.9.20

by railwaylife | 2010-09-21 23:37 | 300系 | Comments(0)

ビルの谷間を往く

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 東京駅を発ったばかりの東海道新幹線は、文字通りビルの谷間を往く。そのビルは、年々増えているように思う。最近だと、東京駅八重洲口にはグラントウキョウなどの超高層ビルが増え、有楽町駅前には有楽町イトシアができたりしている。汐留には、海風を遮るかのように高い建物が並んだ。今後は、田町車両センターの再開発なども計画されており、都心を往く東海道新幹線の風景はどんどんと変貌していきそうだ。

 そんなビルの谷間を往く新幹線の風景は東京の象徴であり、車窓から見るビルの連続は、東京を印象付けるものとなる。それは、東京駅から旅立つときであれば、いよいよ「東京を後にする」と胸を高鳴らせるものとなり、東京駅に戻ってくるときであれば、帰京を否が応でも実感させられるものとなる。もっとも私は、東京へ戻ってくる上りの東海道新幹線だと、新横浜駅で降りてしまうことが多い。その方が早く帰宅できるということもあるが、ビルの谷間に埋もれるようにして日常へ連れ戻されるのが嫌だという気持ちもある。

 さて、最近300系に注目することで、東海道新幹線を見ることの多くなった私であるが、手軽に新幹線を眺めるとなれば、やはりこのビルの谷間を往く風景を見送るしかない。

 それはまさに東京らしい風景ではあるけれども、全長500kmを超える東海道新幹線においては、ほんの一部の景色に過ぎない。だから私は、300系を眺めるにしても、本当は東京を離れて、もっともっとさまざまな風景の中で見送ってみたいと思っている。


東海道新幹線300系電車 東海道新幹線東京駅~品川駅にて 2010.8.10

by railwaylife | 2010-09-02 22:44 | 300系 | Comments(0)

夏空の300系

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 最近、東海道新幹線の300系を追いかけ始めた私は、今夏のうちに夏らしい空の下で300系を眺めてみたいと思っていた。しかし、先週辺りからすっきりしない空模様が多くなり、そういう場面はなかなか訪れそうになかった。

 それでも私は、何とか夏空の下を往く300系にめぐり会うことができた。

 朝方の雨が止んで昼から良く晴れたこの日、青い空は青く輝き、白い車体は白く輝いた。澄んだ空を背景にして、都心へゆっくりと向かう300系に、私は見とれた。

 しかし、こんな夏空は、新幹線の車体越しに眺めるものではなく、新幹線の車窓に見るべきだ、と思った。


東海道新幹線300系電車 東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 2010.8.10

by railwaylife | 2010-08-16 22:01 | 300系 | Comments(0)

300系俯瞰

 都区内パスの旅の途上で世界貿易センタービルディングの展望台に上った私は、185系特急「踊り子」号のほかに、最近追っかけを始めた新幹線300系の俯瞰も、目的の一つにしていた。16両編成と長い新幹線こそ、俯瞰するのにもってこいの車両だと思ったからである。

 そこで迎えたのが、東京発13時26分発の「こだま」659号である。
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 ただ、この「こだま」659号がやって来たのは、展望台に着いて間もない頃だったので、16両編成全部がどのくらいの範囲に収まるのかつかみ切れておらず、300系は尻切れトンボになってしまった。

 それで、もう一回300系を捉えたいと思ったが、あいにくこの後300系はしばらくやって来ないことになっていた。当初私は、三十分くらいしか展望台にいないつもりだったので、もう300系は撮れないなと思った。とは言え、この目ではるか下の300系をじっと見送っていたので、もういいかなという気もしていた。

 しかし、展望台からの眺めはなかなか面白く、何度列車を見送っても飽きることがなかった。また、海の眺めに想いを馳せたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎてしまった。やっぱり私は、高いところが好きなんだなと改めて思った。

 ただ、そうやって夢中になっているうちに予定の時間を大幅にオーバーしてしまったので、私はあるところで気持ちに切りを付けて、後ろ髪を引かれる思いでカメラをバッグにしまい、展望台を離れる支度を始めた。

 すると、ガラス越しのはるか下に、私のお目当ての300系が突如として姿を現した。東京着14時17分の「こだま」648号である。慌ててカメラを取り出した私は、300系の姿を何とか捉えられた。
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 だが、こうして俯瞰の写真を見てみると、何だか300系だか700系だかN700系だかはっきりしなくて、あんまり意味がなかったような気がしてきた。

 それでも私は、ビルの谷間に吸い込まれて行くような、終着間近の300系の姿を、この胸にしっかりと刻み込んで、展望台を後にした。


東海道新幹線300系電車 東海道新幹線東京駅~品川駅にて 2010.8.9

by railwaylife | 2010-08-13 23:52 | 300系 | Comments(0)

赤・青・黄

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 赤・青・黄と言っても、信号機の話ではない。新幹線の行先方向幕の話である。

 都区内パスの旅で、東京駅の300系を眺めた私は、その行先方向幕にも注目していた。

 私が幼い頃、東海道新幹線「ひかり」の方向幕は赤地に白字、そして「こだま」の方向幕は青地に白字のものだったと記憶している。ブリキでできたレプリカの小さな方向幕を何枚か買ってもらったことがあったが、その中に「ひかり」や「こだま」のものもあった気がする。家の長押に小さな磁石をセロテープで貼り、そのレプリカの方向幕をとっかえひっかえ付けては遊んでいた思い出がある。

 そして、後に開業した東北・上越新幹線の行先方向幕も、当初は赤と青であったと思う。東北の場合は「やまびこ」が赤で「あおば」が青だった。特に「あおば」は、その名前が「あお」から始まるから方向幕も青いんだと、子供心に私は思っていた。上越の場合も「あさひ」は赤であった。これは、一度乗ったことがあったからよく覚えている。一方の「とき」は青だったのか、あまり覚えがないが、他の新幹線の例からすると、おそらく青だったのだろうと思う。

 そんなふうに赤と青の二色だった新幹線の方向幕に、あるとき黄色が加わった。東海道新幹線に「のぞみ」がデビューしたときのことだ。このときの衝撃は、私にとってはかなりのものであった。新幹線の方向幕に黄色なんて、という驚きがあったのをよく覚えている。

 ただ、この「のぞみ」がデビューしたときには、方向幕のデザインが若干変わっていて、地に色が付くのは列車種別の部分だけとなっていた。だから、方向幕の地が全部黄色に塗られたデザインのものは、存在していないはずである。

 そして、この黄色い方向幕を最初に備えたのが、他ならぬ300系であった。ここに掲げた三つの方向幕の写真も、全て300系のものである。

 しかし、300系でこの三色の方向幕が全部見られるのも、あとわずかの間であろう。すでに300系は、黄色い方向幕を掲げる「のぞみ」の定期運用から離脱して、今は臨時の「のぞみ」に就いているだけだからである。そしてその臨時「のぞみ」の運用も、先に見たように確実に数を減らしつつある。だから、初代黄色の方向幕も、いよいよ見納めということになってくるかもしれない。

 もっとも、黄色の方向幕は、後継の700系にもちゃんと受け継がれていて、まだまだ多く見ることはできる。とは言え、700系「のぞみ」も、さらに後継のN700系に追われ、見られる機会が減ってきている。特に、博多行きの「のぞみ」は、もうほとんどがN700系になっているようだ。N700系は行先表示がLED式だから、幕式の「のぞみ 博多」という表記は、今や貴重なものなのかもしれない。
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 ところで、行先表示がLED式になったことで、黄色い「のぞみ」の表記は、一旦失われてしまった。新幹線で最初にLED式を採用した500系や、700系3000番台の行先表示では、三色しか表示することができず、黄色を表すことができなかったからである。

 それが、最新鋭のN700系はフルカラーLEDとなり、再び「のぞみ」の行先表示に黄色を表すことができるようになった。これは、ちょっと嬉しいことであった。
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 新幹線にはもともとヘッドマークがないだけに、列車種別を見分ける楽しみは行先表示の色くらいなものである。だから、これからもこの赤・青・黄という色分けを、続けていってもらえたら良いと思っている。


1・2・3枚目 東海道新幹線300系電車 東海道新幹線東京駅にて 2010.8.9
4・5枚目 東海道新幹線700系電車 東海道新幹線東京駅にて 2010.8.9
6枚目 東海道新幹線N700系電車 東海道新幹線東京駅にて 2010.8.9

by railwaylife | 2010-08-11 23:55 | 300系 | Comments(0)

東京駅の300系

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 この前「惜別300系」宣言をした私は、手始めにまず東京駅で300系を眺めることにした。そして、それをするには、このお盆休みがちょうど良い時期であった。と言うのも、帰省ラッシュに合わせて運転される臨時列車に、300系が多く使用されるからである。しかも、定期列車ではすでに運用のない「のぞみ」にも300系が就くことになっていた。

 そこで私は都区内パスの旅の途上、この機を逃すまいと、入場券を買って帰省ラッシュで賑わう東海道新幹線東京駅ホームへ入り込んだ。

 夏の繁忙期の中でも最たる時期と言えるこの日、臨時の「のぞみ」は毎時13分発と20分発と23分発と40分発と47分発が設定されていた。そして、10時47分から11時23分にかけて発車する臨時「のぞみ」四本は、いずれも300系で運転されることに、時刻表上ではなっていた。

 それで私は、わざわざその時間に合わせて、東京駅のホームに入ったわけであるが、実際に臨時「のぞみ」を出迎えてみると、四本中三本が700系であり、300系の「のぞみ」はわずか一本のみであった。これにはがっかりした。そして、時刻表で見ているより実際に運転されている300系は、ずっと少ないんだなということを思い知らされた。

 それでも、11時13分発の「のぞみ」165号は時刻表の表記通り300系だったし、その後の11時47分発の「のぞみ」339号も300系だったので、何とか二本の300系「のぞみ」を目にすることができた。これに、10時33分発の「ひかり」509号と、11時26分発の「こだま」651号を合わせて、一応すべての列車種別の300系を見るという目標は達成した。

 しかし、300系の予定だった「のぞみ」が700系になり、残念がっていたのは私くらいなものだっただろう。700系の方が、乗り心地は良いはずだからである。実際の乗客も、700系になって喜んでいただろう。いや、車両の形式を気にしている乗客なんて、そんなにいないのかもしれない。

 ところで私は、300系の発着を眺めるために、ホームの先端に佇んでいた。駅に出入りする列車が良く見えるということもあったし、乗車口に並ぶ乗客の邪魔にならないようにという配慮もあった。ただ、このホーム先端は屋根がなく、それが玉に瑕であった。と言うのも、朝からすっきりしない空模様だったこの日は、時折雨の落ちてくることがあったからである。

 それで私は、傘を差して列車を眺めていた。すると、警備員がスタスタと寄ってきて、ホーム上での傘の使用は遠慮してほしいと、怒られてしまった。そんなルールがあったとは知らなかったが、申し訳ないことをした。しかし、なぜホームで傘を使ってはいけないのだろうか。進入して来る列車の運転士の視界を遮るからだろうか。いや、そうではない。私はそのとき、ある場面を思い出していた。

 それは今年の2月28日のことである。500系「のぞみ」ラストランの日だ。あのとき、このホームには1500人が集まったとニュース記事にはある。そんな状態で人々が傘を差したら、大変なことになるだろう。そういう場面を想定して、普段から傘は禁止になっているのではないだろうか。

 300系の東海道新幹線ラストランのとき、この東京駅に何人が集まるのか、今はわかるはずもない。しかし私は、そんな場面には絶対に立ち会いたくない。だから今のうちに、この300系の姿をしっかりと目に焼き付けておきたいと思っている。

 さて、こうして私は東京駅の300系をじっくりと眺めたわけであるが、気が付くと一時間半が経過していた。その間に、300系の四本を含め、私は何本、西へ旅立つ列車を見送っただろうか。そして、何人の、西へ旅立つ乗客を見送っただろうか。考えてみれば、それはものすごくつらいことであった。私だけ独り、まるで籠の中の鳥のように、東京という籠から飛び立てない。羽ばたけない鳥のように、東京という大地から飛び立てない。それがとてもとても、つらいことであり、虚しいことであった。名古屋、新大阪、岡山、広島、そして博多という行先表示を目にした私が、西への「旅心」を抱かないわけがない。それだけに、本当に本当に、つらいものがあった。だからもう、東京駅で300系を見送るのはやめようかと思った。

 しかし、今回のように、わずかの間に300系を何本も見られるのは今のうちだろう。後でもう一回見たいと思っても、気が付いたときにはこんな光景ばかりになっているかもしれない。
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 だからやっぱり、近いうちにまたここへ来ておいた方が良さそうだ。そして今度はぜひ、300系同士の並びを見ておきたいものである。
 

1~6枚目 東海道新幹線300系電車 東海道新幹線東京駅にて 2010.8.9
7枚目 東海道新幹線N700系電車 東海道新幹線東京駅にて 2010.8.9

by railwaylife | 2010-08-11 23:51 | 300系 | Comments(0)