スピッツとの四半世紀

 私の大のお気に入りのスピッツの音楽を聴き始めたきっかけは実にはっきりとしている。それは、今からちょうど二十五年前の夏のことである。

 二十五年前の1995年といえば、いろいろと大変なことがあった年である。まず年明けすぐに起きたのが阪神・淡路大震災であったが、その復興の寄付のために発売されたシングルCDがあった。それが、その年の7月1日に発売された浜田省吾の『我が心のマリア/恋は魔法さ』である。これには浜田省吾が所属する事務所「ロード&スカイ」に所属する他のアーティストも参加していた。そして、その中にスピッツが含まれていた。

 母の影響でこの数年前から浜田省吾の音楽を熱心に聴くようになっていた私は当然このシングルCDも発売後すぐに購入し、耳にすることとなった。そしてその中の『恋は魔法さ』という曲で、初めてスピッツのヴォーカル草野マサムネの歌声を聴くこととなる。また、スピッツの他のメンバーもコーラスで参加しており、曲のエンディングにはスピッツでギターを担当する三輪テツヤのギターソロもあった。そうやって、スピッツの音楽の片鱗に触れることとなった。

 そんな『恋は魔法さ』を聴いた後、母と二人でスピッツのことが妙に気になり、彼らのCDもすぐに購入することとなる。最初に買ったのは『恋は魔法さ』発売のわずか六日後にリリースされた最新シングル『涙がキラリ☆』そして一つ前のシングル『ロビンソン』であった。なお、この『ロビンソン』はすでに巷では大ヒットとなっていたのだが、当時のヒットチャートに疎かった私はこのときまで『ロビンソン』のことを知らなかった。だから、私にとっては『涙がキラリ☆』がスピッツの聴き始めであった。

 その後、アルバム『名前を付けてやる』も続けて購入し、スピッツの音楽にどんどんと触れていくこととなる。そして同じ年の9月20日にはニューアルバム『ハチミツ』を購入することとなる。以降、スピッツのシングル・アルバムに関してはほぼすべてをリリースと同時に入手し、聴いていくこととなる。

 なぜ私がそこまでスピッツの音楽に惹かれたのか。それは、彼らのメロディー、サウンド、歌詞のすべてが私の感性にピタッとはまったというより他にない。それ以上説明するとこじつけになってしまう。そんな彼らの音楽はこの四半世紀の間、ずっと私の人生とともにあった。

 特に私は旅に出たときに音楽をよく聴いていたので、スピッツの音楽も私の旅とともにあった。また、日常の中でも旅を想う時によく聴いていた。だから、旅に関わる歌だったり、旅先で見る車窓風景にぴったりな歌が私のお気に入り曲になっていった。

 最初に車窓風景にピタッとはまったのが、1996年9月リリースの『渚』である。ちょうどこのリリースの時期に羽越本線、奥羽本線、五能線を経由して青森まで旅したことがあった。羽越本線や五能線は海のよく見える路線であるが、その車窓風景に『渚』はぴったりだった。そしてこの『渚』のカップリングとなっていた『旅人』という曲は、私の旅に欠かせない曲である。冒頭の「旅人になるなら今なんだ」という歌詞に背中を押され、以後何度となく私は旅に出た。

 海の車窓風景に合う曲がもう一つある。1999年1月リリースの『99ep』に入っている『魚』という曲である。これは私の中で勝手に、東海道本線早川-根府川間を通るときのテーマソングになっている。その区間の海の風景を眺めるときにいつもいつも聴いているからである。それで、曲のイントロを聴けばもう、相模湾沿いの区間の車窓風景が自然と脳裏に浮かんでくるようになっている。

 車窓風景だけでなく、列車のテーマソングになっている曲もある。2000年7月リリースのアルバム『ハヤブサ』に入っている『8823』(語呂合わせでハヤブサ)は文字通り、寝台特急「はやぶさ」のテーマソングに他ならない。後半に出てくる「今は振り向かず8823 クズと呼ばれても笑う」は、当時寝台特急「さくら」との併結が始まり落ち目にあった「はやぶさ」の姿に重なった。でも、アップテンポのこの曲はライブでも盛り上がる曲だし、前向きになれる曲だ。それに何よりライブでこの曲が演奏されるときは照明が青色になるので、ブルートレインの青だと思って勝手に嬉しくなっている。

 その寝台特急「はやぶさ」そして「富士」が廃止となる2009年頃によく聴いていたのが当時の最新アルバムだった『さざなみCD』であった。2007年10月にリリースされたこのアルバムは、当時いろいろあった私にとってまさに救いのアルバムであった。中でも『ルキンフォー』という曲が私の心の支えであった。

 その『さざなみCD』を、最後に寝台特急「富士」に乗ったときにも繰り返し聴いていた。だから今もこのアルバムをかければ「富士」の旅路と、当時のいろいろな記憶が鮮明に蘇ってくる。

 その後、2010年代に入ると日常の忙しさもありなかなか旅に出ることが難しくなってくる。そんな私に響いたのが、2013年5月リリースのシングル『僕はきっと旅に出る』である。この曲にある「僕はきっと旅に出る 今はまだ難しいけど」という歌詞が、なかなか旅に出かけられない私をずっと勇気づけている。そして「神様じゃなく たまたまじゃなく はばたくことを許されたら」という一節がまさに私の旅に対する想いである。

 これ以外にも、寝台特急「はくつる」を想起する『夜を駆ける』や、毎年春先に春の旅を想う『春の歌』や、最新アルバム『みっけ』に含まれる『快速』など、旅や列車への想いを込める歌は多い。もちろん、それ以外にも、最初に聴いた『涙がキラリ☆』から最新曲の『猫ちぐら』まで、それぞれの曲に思い入れがある。

 そんなスピッツの曲をたくさん携えて、いつかまた旅に出たい。
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 僕はきっと旅に出る。今はまだ難しいけど。

by railwaylife | 2020-08-02 22:35 | | Comments(0)
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