バスという選択肢

 通勤のとき、ちょっとだけ明治通り沿いを歩くことがある。

 そのとき良く目にするのが、長距離バスである。

 前面に表示された行先やバスの会社を見ると、それらは北関東から東北、上信越方面へと向かうバスであることがわかる。遠くは金沢まで行くバスも目にする。行先だけ見れば、さながら新幹線開業前の上野駅から発車していた在来線特急列車群のようである。

 どうやらそれらのバスは、バスタ新宿を発着する長距離バスで、明治通りを経由して東北自動車道や関越自動車道へと向かっているようだ。

 そういうバスを日常の只中で目にすると、思わず「あぁ、あのバスに乗ってどこかへ行きたいなあ」と心の中で呟いてしまう。特に、最近良く目にして気になっているのが「会津若松・喜多方」と行先に書かれたJRバスである。

 でも、そんなふうに「バスに乗りたい」なんて思うのは不覚である。

 バスは好きか嫌いかと聞かれればあまり好きではない。せっかく長距離の移動をするのであったら、その機会をバスや飛行機に委ねるなんて、実にもったいないことだと思っている。何より、子供の頃より慣れ親しんだ列車で移動するのが良い。もちろん、それぞれの交通機関に一長一短はある。でも、列車の揺れに身を任せて車窓の風景をゆったりと眺めて移動するのが私には一番心地の良いことである。その機会を他の交通機関に譲ることは、なるべくしたくない。

 そうは思っているのだが、何度か見かけた「会津若松・喜多方」行きのバスのことがけっこう気にかかるようになってきた。いったいこのバスは、どのくらいの時間がかかるのだろう。そして、運賃はいくらくらいなのだろう。それが気になり、JRバスのホームページを見てみた。

 すると、驚くべきことがあった。それは早割の運賃である。乗車の五日前までに購入すれば、新宿から会津若松まで片道2,500円であるという。その上、ネットで購入すればさらにいくらか引かれる。これは安い、と思った。

 また、時刻表によると新宿から会津若松までの所要時間は約4時間30分であった。かつての在来線特急「あいづ」が上野と会津若松を4時間弱で結んでいたことを考えると、このバスに対して「時間がかかるなあ」という感じはしなかった。この運賃でこの所要時間で会津若松まで行ける。それは「悪くない」という気がしてきた。

 もし、会津へ行く機会があるとしたら、東北新幹線と磐越西線を乗り継ぐか、昨年登場した東武特急「リバティ」と会津鉄道を利用してみたいとは思っている。でも、たとえ時間がかかっても片道2,500円で行けるとしたなら、JRバスという手段も選択肢に入って来ていいと思えてきた。

 今や鉄道を利用して長距離移動をするには、好むと好まざるとに関わらず新幹線や有料特急を使わざるを得ないという状況になっている。その分、どうしても料金がかさんでしまう。それなら長距離バスで安く行くという手もありなのかな、と思う。

 もちろん、バスを使ってしまったら列車で移動する楽しみは奪われてしまうけれど、だったらバスで着いた先で列車の旅を楽しめばいい。会津若松から会津鉄道に乗るも良し、只見線に乗るも良し、SL「ばんえつ物語」号に乗るも良し、撮るも良しである。そんな旅を、これからはしても良いのかもしれない。

 ちょうど、東北地方はこれからが春本番である。
バスという選択肢_f0113552_20201312.jpg

by railwaylife | 2018-03-11 20:25 | | Comments(0)
<< 早春のN E259系はじめ2018 >>