多摩動物公園行き

 今もあるかどうかわからないが、私が大学生のとき、平日朝の京王線には新宿発多摩動物公園行きの通勤快速があった。

 通勤快速、と言っても、私のように終点多摩動物公園駅が最寄りの大学へ通う学生が乗客のほとんどであった。一限(正しくは第一時限と言えば良いのだろうか)の講義に出席する日に通うにはちょうど良い時間だったからである。それで私もよく利用したものであった。

 ただ、この動物園線直通の通勤快速は二本あって、一本目に乗ると一限に出席するには少し早く着き過ぎた。そして二本目に乗ると一限ぎりぎりの時間にキャンパスへ着くこととなった。

 それで、二本目に乗る場合は終点の多摩動物公園駅で改札に一番近い最後尾(動物園線に入ると進行方向が変わるから先頭車両)に乗らなければならなかった。その車両は同じように一限へ急ぐために乗っている学生でとても混み合っていた。そして多摩動物公園駅に着いたら早足でキャンパスまで向かわねばならなかった。最寄り駅、と言ってもキャンパスまでは山道を行かねばならず、急ぐのはなかなか難儀であった。

 それに対して早い方の直通電車で行けば、比較的空いている前方の車両(動物園線内では最後尾)に乗って、調布あたりから座ることもできた。そして、多摩動物公園駅に着いてからもゆっくりと電車を降り、キャンパスまでのんびりと歩いて行けば良かった。それでも講義の開始まで少し時間があったから、早めに教室に入ってテキストなんか広げちゃって、しおらしく予習をすることだってできた。

 でも、一本目の直通電車に乗ったのは大学四年間のうちでも数えるほどだったと思う。たいていは二本目の直通電車に乗り、多摩動物公園駅から慌ててキャンパスに向かっていた。だから直通電車と言えばその慌ただしさが一番の思い出である。

 そんな多摩動物公園行き直通電車は、いつも6000系であった。

 それで、京王れーるランドのこの展示車両が「多摩動物公園」の行先表示を掲げていたのは何とも懐かしく、嬉しく感じられた。
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京王
6000系電車 京王れーるランドにて 2014.10.24
by railwaylife | 2015-11-26 23:10 | 京王 | Comments(0)
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