もう十年以上前のことだが、奥羽本線で特急「こまくさ」という列車に乗ったことがある。
ちょうど秋もたけなわのことで、山野を往く線路の際には無数のススキの穂がなびいていた。
在来線の特急とはいえ、相当な速度で駆ける。それで、車窓を注視していると、列車の風圧で線路際のススキがまるでなぎ倒されていくようにばったばったと横になっていった。その車窓風景が、記憶の中に鮮明に残っている。
そんなわけで、今も線路際でススキを見るたび、そのときのことを思い出す。
都市近郊の路線にはあまりたくさんのススキはないけれど、少しでも穂が揺れていれば、秋という季節を実感することができる。
京王
8000系電車 京王線桜上水駅~上北沢駅にて 2015.10.3