新年度になったばかりの頃は、朝の電車も遅れやすい。通勤ラッシュに慣れない人が多かったりするからだろう。
そんな朝に「桜越しに電車を見たい」と思って出かけても、時刻通りに電車が来るはずがない。
それで、花咲く線路際で、電車が来るのをしばらく待つこととなった。
いつ来るかわからない電車を待ちながら、花の下に佇んだ。
電車が姿を現す先を見つめながらも、ただただ立ち尽くすしかなかった。
でも、そんなふうにして花の下で静かにぼうっと過ごす時間が、何より贅沢な時間なんじゃないか、という気がしてきた。
やがてその静寂を打ち破り、私が見たかった風景は現れた。
もし、電車が時刻通りにやって来ていたら、花の下でぼうっと過ごす時間は長くなかっただろう。
JR東日本E233系電車 山手貨物線渋谷駅~新宿駅にて 2015.4.2