碑文谷から広尾へ

 お正月が明けてすぐに放送された時代劇「鬼平犯科帳スペシャル」を見ていたときのこと、目黒・碑文谷の場面が映った。この物語はほとんどが江戸市中を舞台にしているだけに、そうやってたまたま家の近所の地名が出てくると嬉しいものであった。

 もっとも、江戸時代の碑文谷は江戸郊外のひなびた農村であり、映し出された風景も竹薮の中であった。盗賊の一味の男を尾けていった密偵がたどり着いたのが碑文谷だった、という場面なのだが、その行き先は竹林に覆われた百姓家で、浪人どもがごろついているようなところであった。ちょっと物騒だなとも思ったが、この時代の目黒の名産はたけのこというくらいであったから、碑文谷という土地の風景をうまく見せているように思えた。

 さて、場面は変わり、その碑文谷の百姓家を出た盗賊の男が向かったのが広尾だったということで、碑文谷にいた密偵や同心たちも広尾へと向かう。そこで映し出された広尾の風景は、賑やかな町家の続くものであった。

 そんな場面の転換に、一緒に見ていたうちの奥さんが「なんで広尾は街なの?」と驚いていた。たしかに、碑文谷の近くに住む身からすれば、碑文谷が竹薮で広尾が町家というのはちょっとショックではある。

 江戸時代の広尾というと、安藤広重の『名所江戸百景』の「広尾ふる川」に描かれた原っぱが代表的な風景であり、のどかさは竹藪の碑文谷とさほど変わらないように思える。だが、江戸期の古地図を見てみると、この辺りには大名の下屋敷や武家屋敷、それに町人の住む町家もあってけっこう建て込んでいたようだ。やはり、碑文谷とは風景がだいぶ違ったことになる。



 さて、こんなふうにして碑文谷と広尾のことを考えていたら、ある電車の存在が思い浮かんできた。

 日比谷線直通電車である。
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 碑文谷から広尾へ直通するこの電車も、来月からは走らなくなる。

 だから、碑文谷から広尾へ向かう密偵や同心たちも、これからは中目黒で電車を一度乗り換えなければならなくなるな、なんて思った。


碑文谷を往く日比谷線直通電車
東急
1000系電車(1007F) 東急東横線学芸大学駅~都立大学駅にて 2013.2.2
by railwaylife | 2013-02-20 22:05 | 東急1000系 | Comments(0)
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