写真を撮る、すなわちシャッターを切る瞬間には、何らかの想いがあると思う。それは、目の前にある風景に感じたことを残したいという想いだったり、この風景に何かの気持ちを籠めたいという想いだったりする。
そんな想いが、撮った写真からすべて伝わってくれればよいが、所詮私は下手の横好きでカメラをやっているだけなので、そこまで巧く写真を撮れるわけもない。だからこうして、写真を撮ったときの気持ちを文章で添えることになる。
いや、写真に文章を添えているのではない。私は文章に写真を添えている。
何かの風景を見たとき私は、その風景への想いを書かずにはいられない。決して沽れることのない泉のように心の底から湧き出てくる想いを、綴らずにはいられない。それは、決して誰にも止めることのできないものだ。だから私は書き続ける。
この風景を目にしたときにも、書かずにはいられない想いがあった。
列車が現われる少し前、この場所には強い北風が吹いていた。その風が、公園の木の葉を散らしていた。そのさまは、ハラハラと、というようなものではなく、ワサワサと言った方がぴったりの感じであった。木に残っていた葉のすべてがその風でもがれるかのように、葉が降ってきていた。
そんな風が少し止んだとき、列車はやって来た。
風は完全におさまっていたわけではなかった。それで微風に吹かれながら列車を見送っていると、まるで風に舞う木の葉のように、私の体はふっと浮く心地であった。そしてそのまま、列車の行先である逗子までいざなわれるかのように感じた。
そんな、私にしか得ることのできない感触を、私はここへ記しておきたい。
湘南新宿ライン
E231系電車 山手貨物線渋谷駅~新宿駅にて 2012.12.8