先の「緑の中の3086列車」という記事に出てきた山手貨物線の3086列車という貨物列車は、日中の都心を堂々と往くだけに、通勤電車に挟まれるような形で走ることとなる。
だから、3086列車の直前を走る電車は、もうすぐ目当ての列車が来るという目安にもなり、その目当ての列車をどうやって撮るかという練習台になったりもする。
そんな、3086列車の直前を走る電車というのが、湘南新宿ラインの3130Y特別快速小田原行きである。
その電車を、私はいつからか「露払い」と勝手に名付けている。
露払いといえば、すぐに相撲の横綱土俵入りが思い起こされる。土俵入りの際には横綱の前後に力士が一人ずついて、そのうちの前にいるのが露払いと呼ばれる。
これは、貴人に先立って歩き、その行く手の安全を確保するような意味合いがあるのだろう。実際、江戸時代の大名行列にもそのような役割の者がいたそうだが、その起源となれば古代くらいまでさかのぼることになるようだ。文字通り、貴人の行く手の沿道にある草木の露を払って歩くような役割である。
そんな露払いという言葉は、実は現在の鉄道でも使われていることがある。お召列車が走るとき、その直前に露払い列車というのが本当に走っているそうだ。実際のお召列車と同じ速度で走行し、線路に問題がないか確認するという意味合いがあるらしい。
そういう用法があることを知ると、3086列車の前を行く湘南新宿ラインの列車を軽々しく「露払い」だなんて呼べない気もする。でも、私にしてみれば、はるばる北海道から駆けて来た3086列車を貴人のようなつもりで迎えているし、現れる列車も、まさに横綱級のEH500形電気機関車が牽引しているということで、やはり直前の列車は「露払い」と呼んでもいいんじゃないかな、なんて思ったりしている。
いずれにしても、3086列車を眺めに行くというひとときを、自分なりに盛り上げて、楽しみたいと思っている。
湘南新宿ライン
E231系電車 山手貨物線渋谷駅~新宿駅にて 2012.5.13