寺とビルとのぞみと私

 東海道新幹線多摩川橋梁の神奈川県側のたもとに、お寺がある。

 大楽院という名のこの寺院は真言宗豊山派に属し、日吉山神宮寺と号すそうだ。創建年代は不明だが、近くに鎮座する上丸子日枝神社の社伝によれば古くより存在することが知られると『新編武蔵風土記稿』には述べられている。

 大楽院はその上丸子日枝神社の別当でもあったというが、日枝神社といえばふつう、比叡山との関係から天台宗との関わりが強いのではないだろうか。それが真言宗の寺院が別当を務めていたというのは珍しい気がするが、そうでもないのだろうか。

 ところで、この大楽院には木造の釈迦如来坐像があるそうだが、その胎内からは世田谷を領した吉良氏朝の家臣名簿を記した墨書銘が見つかったということで、吉良氏を研究する上で貴重な資料となっているということだ。吉良氏は横浜の蒔田も領していたというから、双方の往来の途中に立ち寄ったりしていたのだろうか。



 そんな歴史のある大楽院の屋根と、武蔵小杉のビルを背景にしてやって来る新幹線「のぞみ」の姿があり、その「のぞみ」を見送る私がいた。
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新幹線N700系電車
「のぞみ」230号 東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 
2012.3.10
by railwaylife | 2012-06-05 22:38 | 700&N700 | Comments(0)
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