カンナ、カシオペア

 EF510形500番台が貨物列車の運用に就いているところを眺めたいという想いから、安中貨物を見送るため夕刻近くの東十条へ向かい「カンナ、アンナカ」の風景を眺めたが、その時間に私が東十条まで行ったのは、安中貨物以外にもう一つ見送りたい列車があったからだった。

 上野発札幌行きの下り寝台特急「カシオペア」である。



 始発の上野駅を16時20分に発車する下り「カシオペア」は、季節を問わず日暮れ前に旅立つ寝台特急として魅力的であるが、平日などは16時台に列車を見送るということはできるはずもなく、なかなかこの「カシオペア」が北へ旅立つさまを見ることはできないでいた。

 それでこの「都区内パスの旅2011」の日は、下り「カシオペア」を眺めるチャンスだとも思って、安中貨物と合わせて見送るつもりでいた。

 その「カシオペア」をどこで見送るか。



 東十条といえば、通称「ヒガジュウ」の名で知られる有名撮影地である。特に駅の南側は直線区間になっていて、線路際の道路から編成写真をバッチリ撮影することができる。

 しかし、そういう編成写真を捉えるつもりはなかった。もっとこの季節らしい風景の中で、旅立つ「カシオペア」を眺めたかった。

 そういう意味では、先に捉えた「カンナ、アンナカ」のカンナ越しに「カシオペア」も見送るのが一番良いような気がしていた。



 だが、何事につけても「二匹目のドジョウ」というのは、面白くないものだ。しかも、安中貨物も「カシオペア」も牽引機は同じEF510形500番台である。花と機関車が一緒だったら、同じような風景になってしまうだろう。

 そう考えた私は、別の場所を探すことにした。幸い、安中貨物が去ってから「カシオペア」が来るまでには小一時間ほどあった。

 それで、となりの王子駅の方へ歩いて行ってみたりしたが、なかなか望むような場所はなかった。



 結局、途中にあった名主の滝公園の木立の中で涼んだりした後、東十条駅近くのカンナのもとへ戻ってしまった。そこで「カシオペア」を迎えることにした。やはりそこが、私の見たい風景のある場所だったからである。

 京浜東北線、東北本線、東北貨物線の三線六本もの線路が並ぶこの場所は、当然「被る」というリスクはあったが、寝台特急「カシオペア」は「被り」もなくやって来た。

 そして、私の見たかった風景が現れた。
カンナ、カシオペア_f0113552_2139122.jpg

 燃えるように咲くカンナ越しに、銀の車体が北を指して走り去った。

 午後になって青空も見え始めたものの、この「カシオペア」の通過時刻はまた雲が増え、すっきりしない空模様であった。

 それでもどこかヌルッとしてジメッとした空気と、咲き誇るカンナの花に私は、十分に夏を感じていた。

 そして、その東京の夏を旅立つ「カシオペア」の姿に、はるか行く手の北海道の夏を想わずにはいられなかったものである。
カンナ、カシオペア_f0113552_21394185.jpg

寝台特急「カシオペア」 東北本線尾久駅~赤羽駅にて 
2011.7.22





都区内パスの旅2011   2011.7.22

01 あじさい列車2011第二十八章 枯れあじさい

02 あじさい列車2011第二十九章 あじさいE259

03 あじさい列車2011第三十章 憧れの列車

04 あじさい列車2011第三十一章 あじたば

05 北王子貨物への想い

06 旅の図書館

07 カンナ、アンナカ

08 カンナ、カシオペア

09 オレンジとスカイブルー

10 211系の音

11 都区内パスの旅2011 まとめ
by railwaylife | 2012-05-30 22:47 | 寝台特急 | Comments(0)
<< オレンジとスカイブルー カンナ、アンナカ >>