泣いても笑っても

 私はどこか、自分の意志を無理に抑え込んでしまうところがある。

 本当はこうしたい、でもこういうことがあるから、と理由を付けては、意のままに、想いのままにしない。



 本当は、300系も最後の最後まで見届けたかったのだと思う。

 でも、その強い意志を無理矢理断ち切るがごとく、最後の日の一ヵ月も前に「惜別300系のおわり」という記事を載せ、300系という車両の見送りを終わりにしてしまった。

 だが、そんな宣言をしてみたところで、自分の強い意志を完全に抑え込むことはできなかった。だから、意のままに、想いのままに「忘れ物をとりにゆく」ため相模へと出かけ、憧れの風景の中で300系を見送った。

 そして、時間のできた今日も、近所にその姿を見に出かけた。

 ただ、その今日がほんとの「惜別300系のおわり」であった。定期運用は明日まで、そしてあとはダイヤ改正前日の一本のみである。そのどちらも見に行く予定はない。だから、泣いても笑っても今日がほんとに最後だという想いがあった。

 そのほんとの最後に選んだのは、この車両を一番多く眺めた場所、多摩川橋梁であった。

 無論、人に誇れるほどの回数を重ねたわけではない。でも、その場所に、その橋梁に、その川面に、その風景に、私の想いを、強く、強く、強く込めて来た。



 その想いを、最後に込めるときであった。

 上ってくる列車は、水鳥も見守る中、川面を渡るさまと決めた。
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 下ってゆく列車は、後姿と決めていた。
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 いい撮影場所でないことはわかっていた。現に、上ってくる列車が来るときには何人も撮影者がいたのに、下ってゆく列車が行くときに、その場所で300系を見送っていたのは私一人であった。

 でも、撮影場所としていいかどうかは私には問題ではなかった。この場所が、私にとって最も想いを込められる場所であった。

 川を渡り、東京から300系が旅立ってゆく。それは、単に西へ向かうというのではなく、現実の世界から歴史の世界へと旅立ってゆくようでもあった。

 対岸の建て込んだ風景の中に、300系の姿は消えた。



 これで最後だ。

 カメラを手に、しばし呆然と土手の上に立ち尽くしていた。


新幹線300系電車
1枚目 「こだま」650号 東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 2012.3.10
2
枚目 「ひかり」477号 東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 2012.3.10
by railwaylife | 2012-03-10 23:50 | 300系 | Comments(2)
Commented by mattiew at 2012-03-11 20:15 x
こんばんは。

しっかり見送ってきたようですね。
いいと思いますよ。
最後の最後まで見送りたい気持ちは抑えられないと思います。
行かなかったら後悔してたかもしれませんね。

水鳥と絡めたのはいいですね。
Commented by railwaylife at 2012-03-11 22:38
mattiewさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

何度目の見納めかわからないのですが、行って来ました。
でも、何度もできたので、悔いはないかなと思います。

水鳥は偶然でした。
本当はもっと寄ろうかと思ったのですが、鳥が入るように引いてみました。

最近は鳥の存在がけっこう気になっていて、列車を見に行ったのに鳥を夢中になって撮っていたりもします。
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