初脱出

 昨日、今年初めて東京都を出た。



 東京に住み暮らす私にとって、東京から出るということは、非常に大事なことである。それが、非日常という憧れの地へ行ける機会になるからである。

 だから、今年もできるだけ多く、東京から出るという機会を作りたいとは思っている。

 そんな想いを持ちながら、今年初めての東京脱出を果たしたのであるが、正直言うと「脱出」などという大袈裟なものではなかった。ほんのちょっと、本当にちょっと、東京を離れただけだからである。時間的にも、空間的にもである。

 ただそれは、徒歩によってなされた。電車に乗って、とか、車に乗って東京を出たというのではなく、自らの足によって、東京を出た。



 なんのことはない、多摩川に架かる丸子橋という橋を歩いて渡っただけのことである。
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 しかし私は、この2012年の「東京脱出」の一歩を劇的に印すため、この看板のある場所を、思い切りジャンプして通り過ぎた。

 でも、ちょっと恥ずかしかった。車の通りはもちろん、幅の広い歩道を自転車や歩行者がけっこう通る橋である。いい歳をして何をやっとるんだと思った。

 しかも、そんなふうに劇的に脱出したところで、目的の場所は橋を渡ってすぐの川原である。常に対岸の東京が見える場所である。そして、その神奈川県側の川原にいたのは、一時間ちょっとくらいであった。



 いったいそんなところへ何をしに行ったのかといえば、目的の場所は丸子橋の少し下流にある新幹線橋梁を観に行くことであった。そこに、お昼過ぎのほんのわずかな時間だけ滞在した。それは、今やその時刻にしか見られなくなったものを見るためである。

 なんだかえらくもったいぶった言い方をしているが、はっきり言わないのはそのときのことをまた改めてじっくりと綴り、このブログに載せたいからである。

 そうなるとまた「乞うご期待」みたいになってしまうのだが、そんなに大したものでもないので、そのうちにひっそりと載せたいと思う。ただ、私の想いの詰まった瞬間ではあった。





 さて、そんな今年初めての「東京脱出」であったわけだが、言うまでもなく今度は、もっと遠く、あるいはもっと長く、東京から離れたいと思っている。

 ただ、そういう非日常への憧れが、私の中で少しずつ変わってきているのを、一年くらい前から感じている。

 もう少し若い頃は、ただ「遠くへ」という想いが強かった。しかし最近は、そんなに「遠くへ」と想わなくてもいいんじゃないか、と思ったりしている。



 実は、すごく近いところにも、まだまだ自分の知らない非日常の世界がたくさん隠れているということである。

 日常なんていうものは、所詮は「線」である。毎日のように同じルートで家と職場を行き来する。休日に買い物に行くにしても、病院に行くにしても、誰かと会うにしても、だいたい場所は決まっているから、そこへ行くのも「線」である。

 そんな「線」を、一歩それてみるだけで、実は今まで全然知らなかった世界が広がっていることがある。とても魅力的な世界が広がっていることもある。

 あるいは、わざわざその「線」をそれてみなくても、普段とちょっと違う見方で見てみたり、ただ通り過ぎるばかりのところに立ち止まってみたりすると、また新たな発見があったりする。

 そんなことを面白がる。そして楽しむ。それが今の私にとっては、何よりのことにも思える。そしてそれが実は、非日常を楽しんでいることに他ならないのだと思う。日常の中の非日常、と言えば良いのだろうか。

 遠くへ行かなくても、無限に楽しみがある。いまはそんな気がする。その気持ちを、いまは大事にしたい。そして、そういう楽しみをもたらしてくれる日常の場所がふつうに、あたりまえに在ることを、何より大事に想い、感謝したい。いまは、そう思う。



 とは言え、若かりし頃から想い続けてきた、遠くへの憧れ、日常を脱するときの歓びも、大事にしたい気持ちである。日常を置き去りにする快感、高まる遠き地への期待と不安、込み上げてくるそんなすべての想いをこの河の風景に籠めながら、私はここから旅立ちたい!

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by railwaylife | 2012-01-16 22:45 | | Comments(2)
Commented by HERO at 2012-01-17 01:01 x
こんばんは。
恥ずかしい話ですが、大学1年の時酔って元住吉で終電を放り出され、横浜方面へ歩いて行った筈が、どういう訳か丸子橋だった…
親にはこっぴどく怒られ、本当に情無い話です。
今は画像のような魅力的な「標識」があるのですね。
関門トンネル人道には山口県と福岡県の県境にラインが引いてあり、それを連想しました。今度見に行ってみたいです。
Commented by railwaylife at 2012-01-17 07:58
HEROさま、おはようございます。
コメントありがとうございます。

丸子橋はHEROさまにとって苦い思い出のある場所なのですね。だいぶ前に架け替えが行われ、いまはきれいになりました。歩道も広くて気持ちの良い橋です。そして何より、上流を見れば東急東横線・目黒線、下流を見れば東海道新幹線・品鶴線の橋梁がよく見え、それが何より魅力です。機会がありましたら、ぜひいらしてください。

関門トンネルの人道トンネル、以前に家族で一度通ったことがあります。県境のライン、ありましたね。歩いて九州に入れるのが面白かったです。そういえば、そのときもジャンプして県境を越えていたような・・・。
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