夏の残り空

 暑さもいよいよ終わりが見えてきたようだ。明日からの三連休は天気がぱっとせず、その後は雨が続き、それを境に気温が下がるという。

 ということは、ここ数日戻ってきた夏空も今度こそ見納めだなと思って、例のごとく広い空の見える東中野に立ち寄ってみた。

 昨日までと違って、今日は朝から雲が多かった。そして、夏のモクモクとした雲もあったが、筋のような雲や色の濃いどんよりとした雲もあった。その灰色のどんよりとした雲が、秋を持ってくるように感じられた。まさに空では、夏と秋のせめぎ合いが行われていたと言える。

 そんな雲が朝日に立ちはだかり、鈍い金色に輝いていた。その所為で、気温も低かった。どこかスッとした大気があった。しかしそれは湿気も多く含んでいて、歩いているとムシムシしてきた。それでも、そのジメッとしたところが初秋らしいなという気がした。

 さて、今朝は渋谷から呑気に埼京線の電車なんぞに乗ったりした所為で余計に時間がかかってしまい、いつもより東中野へたどり着く時刻が遅くなってしまった。それで、ここでの定番と言える特急「かいじ」102号が通過する時刻には間に合わなさそうであった。

 でも私は、がっかりすることもなかった。たとえ特急「かいじ」102号が見られなかったとしても、東中野の広い空が見られればいい。どんなに空模様が冴えないものであったとしても、またどんなにその空を眺める時間が短かったとしてもである。ほんのわずかでもいい。空が見られれば気持ちが開け、それが生きていく糧にもなる。
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 そんな想いで私は、いつもの跨線橋から通勤電車を見送っていた。
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 雲の散らばる空には、まだ夏の気配も漂っていた。

 その空をほんのしばし眺めていると、快速線の上り線に白い車体が現れた。それは紛れもなく「かいじ」102号であった。新宿駅の到着時刻1分前になってからの登場である。

 列車が遅れていることを喜んではいけないが、正直言ってそのときの私はうきうきとしていた。

 ただ、ちょっと慌てたので、ぱっとしない捉え方になってしまった。
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 それでも私は、この「かいじ」102号の風景に、また一つ季節が巡ってゆくのを、しっかりと、しっかりと感じていたものである。


E257系特急「かいじ」102号 中央本線東中野駅~中野駅にて 2011.9.16
by railwaylife | 2011-09-16 23:45 | 中央本線 | Comments(0)
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