今朝の天気予報では、今日が猛暑のピークであり、明日からは天気が崩れて涼しくなるという話であった。実際、週間天気予報の先の方には、曇りマークがずらりと並んでいた。また先月の終わりから今月の初めにかけてのように、冴えない天気の日が続くということであろうか。
ここ数日の暑さを思えば、何にせよ少し涼しくなるのはいいことだが、その予報を見てちょっと残念な想いもあった。夏の青空がもう見られないかもしれないと思ったからである。もし、明日から一週間や十日くらいすっきりしない空が続いたとすると、次に青空が望めるのはもう九月かもしれない。そうなったとき、気温は高くなっても空はもう秋めいてしまっていることだってある。
それを想うと私は居ても立ってもいられなり、ある場所へと向かった。そこは、この夏のうちにどうしても青い空を見ておきたいところであった。
そのある場所とは、東中野の桜並木である。
暑くなるとどうしても億劫になって、ここへ来る回数も減ってしまうが、夏の風景もしっかりと眺めておきたい場所である。
そしてそんな場所で、是非とも見送りたい列車もあった。すでにこのブログに何度も登場している特急「かいじ」102号である。
これまでさまざまな季節の風景においてこの列車を眺めてきた私とすれば、夏空の下でもぜひ見送りたい列車であった。そしてまた、ここ東中野における四季の変化というものも、この列車が往く風景を通して実感したかった。
それで私は、朝からの暑さにもめげず、東中野駅に降り立ち、改札を抜けていつもの桜並木へと急いだ。
駅から早足で歩いて行くと、地表のコンクリートからの照り返しが燃え盛るように熱く湧き上がってきた。日差しよりも、その照り返しの方がぐっと熱く感じられた。
桜並木を過ぎ、跨線橋へ上がる。そこから中野方を眺めれば、広い夏空が広がっている。
青い紙をビタッと貼り付けたような空だ。それは、この暑さを少しも逃さないぞという壁のようにさえ見えた。
そんな空を目一杯入れて、夏らしい「かいじ」102号を捉えようかとも思ったが、手前にある木々の緑が気になった。強い朝日に照りつけられて黒光りするその緑もまた、夏らしい風景であった。
それで私は、空と緑を入れて、夏の「かいじ」102号を捉えた。
折しも下りの通勤電車と行き会ってしまい、何だか「かいじ」102号は窮屈だったが、こんなふうに朝の通勤電車に囲まれて往くのが「かいじ」102号らしさでもある。
そう思ってその風景を楽しみつつ、振り返って桜並木の下を駆けて行く列車に、ただ見とれた。
その姿が見えなくなり、ふと気が付くと、背中がジリジリと熱くなっていることに気付いた。中野方を向いて「かいじ」102号を待っている間に、朝日が背中をずっと刺していたのだろう。
E257系特急「かいじ」102号 中央本線東中野駅~中野駅にて 2011.8.18