東急8090系のこと

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 先月発売の鉄道雑誌を図書館でぱらぱらと眺めていたら「終焉を迎える首都圏の旧世代電車たち」という記事があって、京王6000系や小田急5000形とともに、東急8090系の名が挙げられていた。

 ということは、この車両もまた、私の言う「去り行く通勤電車たち」の一つだというわけで「幼い頃に憧れた車両でした!」とか言って追わなければならないのではないか。

 いや、この8090系が「去り行く通勤電車たち」であることは、言われるまでもなく知っていた。私にとって最も身近で、最もよく知る鉄道である東急の車両だからだ。

 しかし、この車両に関してはまったくもって「日常の風景の中で撮っておこう」とか「見納めをしよう」という気が起きない。

 それよりも東急に関して言えば、東横線の9000系を追うのに夢中である。そして東横線を逐われ転属していった大井町線でも時々9000系を眺めるようにしている。

 実はその大井町線が、8090系の主たる活躍の場なのだが、大井町線の風景を見に行くにしても、私が見たいと思うのは9000系の走る風景である。8090系の走る風景は、私にとってはあくまでもついでに見るものである。

 なぜそんなに8090系を軽視するのか。あまり縁がなかったのかというと、そうでもない。この車両ももともと、私が幼い頃からずっと利用してきた東横線で活躍していたものだ。

 そのデビューは1980年(昭和55年)のことである。これは、私が物心付いてから初めて東急線に登場した新型車両である。その登場時の様子までは記憶していないが、幼い私が「シンガタ」として認識していたことは確かだと思う。

 そんな「シンガタ」の8090系は、デビュー当初から専ら東横線の優等運用、すなわち急行電車に使用されていた。今でこそ東横線の運用は、特急・急行と各停の運用が厳密に区別されておらず、終点まで行った各駅停車が折り返し特急になるなんてことはざらにあるが、当時は急行と各停の運用が別々で、急行に就く編成は限られていたと思う。

 それで、最寄り駅に急行の停まらなかった私は、ほとんど8090系に乗る機会がなかったように思う。あまり乗ったという記憶が残っていない。

 それに比して良く乗ったのが、8000系であり、後に登場する9000系であった。これらの車両は、各停の運用に就くことが多かったからである。

 日常の中で良く目にはするものの、実際に乗らないとなると、さほど愛着がわかないものである。もちろん、急行電車に憧れる気持ちはあっただろうが、例えば国鉄の特急列車に憧れるほどの強い気持ちではなかったと思う。

 そうこうしているうちに、8090系は大井町線に転属して行ってしまった。8両編成の急行電車でかっ飛ばしていた車両が5両編成に短縮され、ローカル色の強い大井町線を往くようになった。その姿は、何となく憐れであった。

 以来、8090系はずっと大井町線を走り続けている。すでに何編成かは離脱したものの、その本数はわりと多く、大井町線に乗れば必ず見かける。しかし、格別目立つ存在でもない。昔から大井町線の車両は雑多で、どれが主役ということもないからであろう。

 もっとも、数年前からは急行用に新型の6000系が導入されたので、それが主役と言えるかもしれない。また、各停の運用ではこのところ9000系が続々と導入されていて、主役の座に躍り出ようとしている。

 そして、他ならぬその9000系が、8090系をいよいよ駆逐しようとしているわけだが、大井町線でも私は9000系の方に愛着を感じる。だからやっぱり、8090系には思い入れがない。

 それに、大井町線の車両はどうも好きになれない。東急の車両といえば赤い帯が代名詞なのに、この路線の車両は帯を赤と黄色のグラデーションにしてしまった。俗にグラデ帯びなどと呼ばれるそうだが、どうもそれが気に入らない。

 おまけに車体には「大井町線」という線名の書かれたステッカーがやたらと貼ってある。JRの地方線区の専従ディーゼルカーみたいに、ローマ字で線名がカッコ良くデザインされていたりしたらまだいいのに、漢字表記でそのままあちこちに書かれていたら、まるで名札を体中に貼り付けているみたいだ。

 ただ、この線名の表記にはデザイン性など求められていない。田園都市線の電車と区別し、乗客の誤乗を防止するという重要な役割があるからだ。これは、大井町線の急行電車が田園都市線に乗り入れるようになったことを機に始まったと記憶しているが、現在は全列車が溝の口まで乗り入れるようになったことで、その役割はさらに増していると言えるのだろう。

 しかし、デザインとしてはやはりカッコ良くないと思う。昔の赤一色の帯の方が良かったなあと、昔を懐かしんでしまう。
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 ところで、そんなに大井町線カラーの車両が嫌だというなら、大井町線の9000系だって同じ体裁なのだから、わざわざ見に行かなくても良いのではないかと思われるかもしれない。

 しかし、不思議と9000系だと大井町線カラーがあまり気にならず、嫌だという感じがしない。なんでそうなのかと聞かれても説明が付かないのだが、やはり車両への思い入れの度合が違うからなのだろうか。

 そういうわけで私は、たぶんこれからも9000系の風景を眺めるのが中心で、8090系の風景はついでになってしまうと思う。


東急8090系電車
1枚目(8083F) 東急大井町線自由が丘駅~九品仏駅にて 2007.2.3
2枚目(8081F) 東急大井町線緑が丘駅~自由が丘駅にて 2007.7.3
3枚目(8095F) 東急大井町線旗の台駅にて 2009.6.25
4枚目(8095F) 東急大井町線自由が丘駅~九品仏駅にて 2007.2.3
5枚目(8093F) 東急大井町線中延駅~戸越公園駅にて 2007.11.16

by railwaylife | 2011-02-26 08:55 | 東急8000系 | Comments(0)
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