すでに定期運用の「のぞみ」から撤退している300系であるが、来る3月12日のダイヤ改正を機に、山陽新幹線直通の臨時「のぞみ」運用からも完全に撤退するという。そこで、昨年からこの車両を記録することに執心している私は先日、300系の博多行き「のぞみ」を東京駅へ見納めに行ってきた。
私が眺めに行ったのは、2011年2月11日の「のぞみ」157号である。この「のぞみ」157号のような臨時「のぞみ」は、日によって使用される車両が異なることが多い。だから、日付を明記しておく必要があると思う。
東京駅9時13分発の「のぞみ」157号は、東海道新幹線ホームの中でも一番端にある19番線からの発車である。この19番線は「ひかり」や「こだま」の発着専用番線みたいなところで、定期列車の「のぞみ」が発着することはない。また新幹線乗り場の端っこにあることもあって、何となく場末の雰囲気が漂う場所である。
そんな19番線に車体を横たえる300系の「のぞみ」を眺め、記録してみる。
いや、こんな行先表示だけを撮ってみても、この博多「のぞみ」が300系であることはわからない。
そう気付いた私は、何とか300系博多「のぞみ」であることの証を残そうと躍起になった。
だが、在来線特急車両のようにヘッドマークを掲げない新幹線車両では、車両と列車名を結びつけて表現するのはなかなか難しかった。それで、あまり巧いこと撮れなかったが、もういいかなと思った。そんな写真を残すことよりも、私がこの300系博多「のぞみ」を見たという記憶を留めておくことと、そのときの自分の想いを記録しておくことが大事だと感じた。
9時13分、300系「のぞみ」157号博多行きは定刻に東京駅を発車した。雪とも雨ともつかないものがちらつく中、300系は紅い尾灯をにじませて旅立って行った。私はそれをじっと見送った。大げさな言い方かもしれないが、一つの歴史が終わる気さえした。
1992年(平成4年)に東海道新幹線で運転を開始した「のぞみ」の初代車両として登場したのがこの300系であった。その翌年には、博多までの「のぞみ」も設定され、300系は東海道・山陽新幹線の「顔」になったと言える。その後、後継の500系や700系が登場したこともあって、300系は「ひかり」や「こだま」にも使用されるようになり運用の幅が広がったわけであるが、私が自分の旅で新幹線を頻繁に利用するようになったのはその頃のことだったと思う。それだけに、300系には他の形式より良く乗った気がする。だからこうして思い入れが強いのだと思う。
そんな300系の歴史の一つを、私は見送っていた。
新幹線300系電車 「のぞみ」157号 東海道新幹線東京駅にて 2011.2.11