湘南新宿ラインに賭ける

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 昨日の朝の通勤で、8時55分頃に山手線渋谷駅外回りホームの1番線へたどり着くと、いつもより大勢の人々が電車を待っていた。

 発車案内を見ると、8時53分発の池袋行きがまだ表示されていた。遅れが出ているのかなと思っていると、程なく駅員の声が「目黒駅でホームドア確認のため運転見合わせ」と告げた。ただ、間もなく運転再開との話であった。

 しかし、次の電車はまだ目黒駅に停車中ということであったので、到着には少し時間がかかりそうであった。しかも、ホームには人が溢れているので、電車はいつも以上に混み合うことが予想された。

 私が山手線に乗るのは新宿駅までの短い区間なので、混雑したとしてもちょっとの間我慢すればよいだけのことであったが、こういうとき私は、少しでも楽に、そして少しでも早く目的地へ着く方法を模索する。

 そこでiphoneをさっと取り出し、渋谷駅の埼京線と湘南新宿ラインの時刻表を確認すると、9時02分発の湘南新宿ライン宇都宮線直通宇都宮行きのあることがわかった。

 このときの時刻は8時56分であったが、次の山手線電車がこれから目黒駅を発つとなると、最低でも4分はかかるだろう。そうすると、湘南新宿ラインとの渋谷駅発の時間差は1、2分ということになる。それくらいなら、うまくすれば湘南新宿ラインの宇都宮行きが山手線の池袋行きを追い抜き、新宿駅には早く着くかもしれない。

 咄嗟にそう考えた私は、ホームで山手線の電車を待つ人たちの隙間をすり抜け、3番線ホームへと急いだ。

 渋谷駅の1番線から3番線まではけっこう遠い。だが、宇都宮行きが来るまでにはまだ5分くらいあったので、私はさほど慌てることなく3番線へたどり着くことができた。しかし、ホームへ着くや否や、山手線の池袋行きが目の前をすり抜けて行った。失敗かな、と思った。

 こういうときの選択は、賭けみたいなものである。でも、そんな賭けを楽しめばよい。そしてその賭けに勝つチャンスはまだあった。間髪を入れず3番線に列車接近の案内が入り、宇都宮行きのE231系が待つほどもなく滑り込んで来たからである。

 朝の湘南新宿ラインはさすがに混んでいるが、すでに9時なので、8時台の列車よりはすいていた。乗り込んで立っていても、周りの人と肩が触れ合うほどではなかった。

 そんな状態で列車は、心地よく渋谷駅から滑り出す。そして、宮下公園の枯木を横目にスピードを上げていく。

 やがて原宿駅に差し掛かる。すると、先に渋谷駅を発っていた山手線の池袋行きが、今しも原宿駅に到着したところであった。それを窓越しに眺める。ちょうど開いたドアから見えた池袋行きの車内は、やはりけっこう混み合っているように見えた。この湘南新宿ラインよりも、ずっと混んでいるように見えた。

 原宿駅に停車しない湘南新宿ラインのこの宇都宮行きは、そんな山手線の電車が見える風景を、車窓の後ろへと追いやっていく。予想通り、湘南新宿ラインは山手線を追い抜いた。そのときは本当に気分がよく、独り喜んでいたものである。それはまるで、寝台特急「北斗星」の個室から、併走する京浜東北線の電車を追い抜いて行くさまを眺めるときの爽快感に似ていた。

 その後、宇都宮行きは代々木駅の辺りで滞ることもなく、スムースに新宿駅構内へと入って行った。車掌がこの先の停車駅を告げる。その駅名を聴いていると、このまま東北本線への旅に出てしまいたい衝動に駆られたが、もちろん新宿駅に降り立つ。

 人波に押されながらも、4番線からゆっくりと中央快速線の11・12番線ホームへ向かう。普段なら中央緩行線でのんびりと職場最寄り駅の荻窪まで向かうところだが、時刻はいつもより少し遅めの9時10分になっていたので、快速を利用することにしていた。

 ホームへ着くと、ちょうど9時08分発の武蔵小金井行きが発車するところであった。中央快速線も少々遅れ気味のようであった。

 武蔵小金井行きに乗り込み、すぐに発車を迎えると、構内を出たところで左窓に例の山手線池袋行きが見えてきた。今しも新宿駅を発ったところである。その池袋行きから、この武蔵小金井行きに乗り継げた人がいるのかいないのかはわからないけれども、タイミングとしては微妙なところだ。でも、湘南新宿ラインで来た私は悠々とこの武蔵小金井行きに乗り継ぐことができた。

 その湘南新宿ラインの電車もちょうど右窓に出てきた。こちらも新宿駅を発ったところである。つまり、私が乗ってきた湘南新宿ライン宇都宮行きと、今乗っている中央快速線武蔵小金井行きと、私が見捨てた山手線池袋行きが、まさに同時に新宿駅を出て、走り始めていた。

 その真ん中を往く武蔵小金井行きに乗っている私は、賭けに勝ったな、と独り勝手に満足していたものである。

by railwaylife | 2011-01-29 20:26 | 湘南新宿ライン | Comments(0)
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