新春のE259系

 車体に紅白を纏ったE259系は、何だかめでたい。新春にふさわしい列車だ。
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 いや、そんなふうに感じるのは、私がこの車両を妙に気に入って、贔屓目で見ているからだけだろう。前面のロゴを見ても、およそ正月らしさは感じられない。

 そのE259系特急「成田エクスプレス」は、正月三が日の間、普段停まらない成田駅に臨時停車するものが何本かあったようである。時刻表を何気なく見ていてそのことに気付いたが、これは成田山への初詣客のための臨時停車であろう。

 空港連絡特急としての使命を帯びている「成田エクスプレス」であるが、正月は初詣客の輸送にも借り出されているようだ。

 それにしても、成田山への初詣客というのは、なぜ多いのだろうか。毎年、初詣客数ランキングのベスト3に、明治神宮や川崎大師とともに必ず入ってくる。JRも「成田臨」といって、波動用の車両を駆使して首都圏各地から成田への臨時列車を走らせ、成田山への初詣客の輸送に対応している。それほどに成田山は、初詣の地として魅力的なのだろうか。

 そんな疑問を抱いていた年末、たまたまJRの駅で成田山初詣のポスターを見かけた。するとそのポスターのキャッチコピーには、成田山の初詣は江戸の昔からの伝統だというようなことが書かれていた。

 私はなぜ江戸時代からそんな伝統があるのだろうかと大いに気になったが、忙しい年末のことだったのでそれっきりになってしまっていた。

 だが、年が明けてから時刻表で「成田エクスプレス」の成田臨時停車を目にしたときに、またこの成田山初詣のことが気になりだし、少し調べてみた。

 成田山の歴史は平安時代までさかのぼるが、広く民衆の信仰を集めるようになったのは、江戸時代に江戸で成田山の不動尊の出開帳が行われるようになってからのようである。

 その出開帳が江戸で最初に行われたのは1703年(元禄十六年)のことであるという。ものの本に「江戸にて開帳あるに何時にても参詣群聚するは善光寺の弥陀と清涼寺の釈迦仏または成田の不動などなり」とあるように、江戸出開帳の三本指に数えられるほど人気を集めたそうな。

 また、歌舞伎役者市川団十郎が代々屋号を「成田屋」といって、成田山の不動尊への信仰が厚く、不動尊霊験記の上演があったことでも、成田山の霊験が広く知られるようになったのだという。

 それに加えて、講の発達もあったようだ。江戸時代の講といえば、富士講や伊勢参りの講などがすぐに想起されるが、成田山詣の講もけっこう盛んだったようである。現在、各地から「成田臨」が運転されるのも、こうした講の伝統が続いているからなのかなという気もしてきた。そんな歴史を考えると、単にどの列車に何系の何編成が入ったということ以上に「成田臨」というものが面白く感じられる。

 こうして、江戸時代から成田山の霊験が盛んに喧伝されたことで、いまだに関東周辺ではその信仰が篤いのだろう。初詣客が多いのも納得がいく。

 ただ、私は成田山の初詣に好んで行こうとは思わない。全国でも参拝客数が三指に入るほどの混雑のところへわざわざ行こうという気にはなれないからである。

 でも、実は以前に一度、正月の成田山へ行ったことがある。正月と言っても、もう中旬くらいの時期だったと思う。

 学生時代のことであったが、学年末試験が終わった後、青春18きっぷの余りを処分するためだったのか、あるいはホリデーパスでも買い込んだのか忘れてしまったが、同級生の友人と二人で、首都圏のJRをあてもなく乗り回していたことがあった。そんなときに成田山へ参ろうという話になり、行ってみた。だが、やはりものすごい人出で、本堂まで行くのを諦めてしまったという経験がある。だから、私は成田山にちゃんと参拝したことがない。

 そういう意味では、もう一度きちんと成田山詣に行きたいし、今回こうしてその歴史を少し紐解いてみても、なかなか面白い寺だなと思えてきたので、余計に行ってみたくなった。それでも、やはり初詣の時期に行く気はない。何でもない時期に行って、ゆっくりじっくりと参拝したいものである。

 その成田山詣に、E259系の特急「成田エクスプレス」が使えたらいいのに、と思う。ついに私がこのE259系に乗る機会ができるというものだ。しかし、平時の「成田エクスプレス」は、成田駅に停まるものがほとんどなく、私が成田山詣に向かうのにちょうどよさそうな時間帯に停車する列車はない。だから、普段からもう少し「成田エクスプレス」が成田駅に停まらないものだろうかと、勝手なことを思ったりしている。

 でも、いつか「E259系で成田山詣」をやってみたいものだ。


今年初撮影のE259系特急「成田エクスプレス」
成田エクスプレス16号 山手貨物線渋谷駅~新宿駅にて 2011.1.8

by railwaylife | 2011-01-17 22:05 | E259系 | Comments(0)
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