黄色先生あらわる

 祝日だったこの前の月曜日、新しいカメラで東急9000系の「試し撮り」をすべく、多摩川の丸子橋にいた。

 お目当ての9000系が走る東急東横線の多摩川橋梁は、丸子橋から見ると上流にある。それで上流側の欄干にくっ付いてカメラを構えていたけれども、車道を挟んだ下流側の欄干をふと見ると、カメラを手にした人たちが何人も見受けられた。

 丸子橋の下流側には、東海道新幹線と品鶴線の橋梁が見える。私はすぐに、何か珍しい列車が来るんだろうなと思った。でも別に、あまり興味はなかった。何が来ようが、そのときの私には、9000系の方が大事であった。

 ところが、私が9000系を十分堪能して丸子橋を後にしようかという段になっても、まだ下流側の人々は動いていなかった。それどころかギャラリーは増えていた。近所の人なのか、Tシャツに短パンで自転車にまたがったオジサンも立ち止まって、下流の橋梁に熱い視線を送っていた。

 いったい何をそんなに長いこと待っているのだろうか。だんだん気になってきた私も、横断歩道を渡って下流側の欄干に行ってみた。そこでしばらく、待ってみることにした。私にはもう一つ、彼岸花の咲き具合を確かめるという使命があったけれども、それは別に急ぐことではなかった。だからしばらく、得体の知れない何かを待ってみても良いかなと思った。

 いつ来るとも知れないその何かを待つ間、私は暇つぶしに新幹線や品鶴線の列車をずっと捉えて遊んでいた。ここで300系の「試し撮り」もできたし、再びE259系を捉えることもできた。
黄色先生あらわる_f0113552_1245219.jpg

 それから、N700系の長い鼻も捉えて遊んだりしていた。
黄色先生あらわる_f0113552_124343.jpg

 だが、そうやってずいぶん遊んでいても、人々の待つ何かは一向にやって来なかった。Tシャツに短パンのオジサンはしびれを切らして自転車で走り去ってしまったし、私も橋梁上の列車を撮るのにさすがに飽きてきて、空を撮ったりして遊んでいた。
黄色先生あらわる_f0113552_125153.jpg

 それでも、カメラを手にした人々は悠々としている。そこまでして待つ何かとは「いったい何なんだ!」と私は叫びたいくらいであった。だったら、その辺にいるカメラを構えている人に聞けば良いだけのことであったが、それも何だかつまらない気がした。そこでもう少し辛抱して待つことにした。

 そして、私が下流側の欄干に張り付いてから三十分が経ったとき、新幹線橋梁の神奈川県側の方に、黄色い車体がちらっと姿を現した。やがてそれは川の上に躍り出る。やって来たのは、新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」である。通称「黄色先生」だ。丸子橋の上の人たちが待っていたのは、紛れもなくこれであろう。

 私も慌ててシャッターを切った。冴えない薄曇りの空と冴えない川面の色の間を往く黄色が、妙に映えて見えた。
黄色先生あらわる_f0113552_1254562.jpg

 新幹線の線路や架線の状態を検測するこの「黄色先生」は、その運転日やダイヤが公式には発表されておらず、まさに神出鬼没であるらしい。それで珍しがって、熱心に追っている人々がいるそうだ。そしてその人たちにとっては、目撃情報というものが重要なようである。

 私はその手の情報にまったく疎く、またいわゆる「ネタもの」にも興味がないので、この「黄色先生」を追ったりしようとも思わないが、こうしてたまたま巡り会えたのは、良かったのかなあと思う。こんなことでもなければ、私のブログに「黄色先生」が載ることもなかったはずである。

 ただ、こういう「ネタもの」の記事を書くには即時性というものが重要で、おそらく見たその日に「本日黄色先生捕獲!」みたいにアップしなければならないのだろう。こんな一週間近く経ってから載せても意味がないのかもしれない。それにこうやって今日、こんなタイトルの記事をアップしたら、熱心に「黄色先生」の動向をチェックしている人が、昨日今日また走ったのかと思って慌ててしまっては申し訳ない。

 だが、私には私のペースがあるし、記事を載せる順番も気ままである。この「黄色先生」に対する想いもさほどではないから、優先順位も低くなる。それはそれで別に構わないだろう。私は私の好きにやっていこうと思う。

新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」
東海道新幹線品川駅~新横浜駅にて 
2010.9.20
by railwaylife | 2010-09-26 12:08 | 新幹線 | Comments(0)
<< 直通十年 観測地点開花 2010 >>