長さ二倍

 都区内パスの旅で世界貿易センタービルディングの展望台を楽しんだ私は、その後東京駅に出て、総武本線の快速に乗り込んだ。その目的は、特急「成田エクスプレス」を見送ることにあった。

 特急「成田エクスプレス」なら、普段私が良く見に行っている山手貨物線沿線や品鶴線沿線で見送れば良いわけだが、実は、山手貨物線や品鶴線を走る「成田エクスプレス」と、総武本線を走る「成田エクスプレス」には、大きな違いがある。それは、編成の長さである。

 横浜方面から品鶴線を通ってやって来る6両編成と、大宮・池袋・新宿方面から山手貨物線を通ってやって来る6両編成は、東京駅で併結され、12両編成の一つの列車になって総武本線で成田空港へと向かう。つまり、総武本線を往く列車は、私が普段見ている列車より「長さ二倍」になっているわけである。

 先の「長大編成」という記事でも綴ったように、特急列車は編成が長ければ長いほどその風格があると、私は思っている。そこで、12両編成の「成田エクスプレス」を眺めてみたいと、以前から思っていた。私の日常にある6両編成の「成田エクスプレス」は、何だか小さくまとまってしまっている印象がある。

 そして今回、都区内パスを手にした私は、その範囲に総武本線の小岩駅までが入っていることから、この機会に「成田エクスプレス」の12両編成をぜひ見に行こうと決めていた。

 ただ、いろいろと調べてみると、総武本線で優等列車を捉えるなら、小岩駅の一つ先の市川駅が一番良さそうだということがわかった。この駅には通過線があり、「成田エクスプレス」もそこを駆け抜けるからである。それで私は、都区内パスの範囲から一駅乗り越し、江戸川を渡って市川駅まで行ってみた。

 通過線のあるここでは、快速線の列車が「成田エクスプレス」を待避するので、ホームのある待避線に入って来る快速列車を見送ってからホームの小岩寄り先端へ行って、後続の「成田エクスプレス」を待ち構えた。

 江戸川橋梁を渡り切った「成田エクスプレス」が、遠目に見えてきた。緊張が高まるが、悪いことに上りの快速列車が市川駅から出てきてしまった。それで、長い「成田エクスプレス」の後ろは、上り列車に隠されてしまった。
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 自分の運の悪さを私は嘆いたが、幸いなことに「成田エクスプレス」は三十分間隔で運転されている。だから、次の列車を待てば良いだけのことであった。せっかく乗り越しまでしてここへ来たのだから、きちんと12両編成を捉えておきたいという想いもあった。

 三十分後、今度は「成田エクスプレス」が姿を現す前に、上り快速列車が出て行ってくれた。そこで、しっかりと「成田エクスプレス」の12両を捉えることができた。
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 それにしても、市川駅を通過する「成田エクスプレス」は、かなりの速度で過ぎ去って行った。山手貨物線や品鶴線を行くときとは、まるで走りが異なる。貨物線と旅客線の違いであろうか。編成も、走りも、まさに特急列車らしかった。見に来た甲斐があったと思う。

 満足したところで上り快速列車に乗って、都心へと戻った。先頭車に乗って、前面展望を楽しんでいると、下りの特急「しおさい」と行き会った。この特急列車は5両しかつないでいない。やっぱり、特急らしくないなと思った。

 その後も前面展望を眺めていると、都区内の亀戸駅でも「成田エクスプレス」は捉えられそうであった。わざわざ江戸川を越えて、市川駅まで行くことはなかったかもしれない。でも、荒川や中川や江戸川を渡るさまが楽しめたので、良かったかなと思った。

 ただ、せっかくだから亀戸駅でも「成田エクスプレス」を狙おうと、私は錦糸町駅で快速列車を降り、緩行線で一駅戻って、亀戸駅へ行ってみた。こうやって気ままに行きつ戻りつができるのも、都区内パスを持っていればこそである。

 しかし、緩行線が亀戸駅に着いた途端に「成田エクスプレス」が、横を駆け抜けて行ってしまった。またタイミングの悪いことだったが、今回はちょっと欲張りすぎたかなという気もしたので、亀戸駅にはまた改めて来ようと思った。それから今度は、荒川や中川や江戸川を渡る12両編成も眺めてみたいと考えている。


E259系特急「成田エクスプレス」
1枚目 成田エクスプレス33号 総武本線小岩駅~市川駅にて 2010.8.9
2枚目 成田エクスプレス35号 総武本線小岩駅~市川駅にて 2010.8.9

by railwaylife | 2010-08-14 14:44 | E259系 | Comments(0)
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