あずさ9号の旅

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 列車番号59M 新宿9:00発 特急「あずさ」9号 松本行き


 いま、私が通勤で最も良く目にする特急列車だ。

 雨模様の今朝の通勤では、途中下車して歩く気もしなかったが、かと言ってまっすぐ職場へ向かう気もせず、新宿駅の構内をウロウロしていた。そんな折、10番線で発車を待つ特急「あずさ」9号に出会った。

 雨の月曜朝なんて、決して良い気分ではない。だから私は、その特急列車に乗ってしまいたい衝動に駆られた。

 新宿を発った列車は、あの東中野の桜並木をかすめ、荻窪という日常の地をすり抜け、東京を西へ西へと向かう。早く東京を脱け出せ、という思いと裏腹に、東京の眺めは長いこと続く。

 でも、高尾を過ぎて緑の中に飛び込めば、いよいよ東京脱出である。県境の小仏トンネルを抜けていくときの、胸の高鳴りが好きだ。

 やがて列車は桂川に沿う。今日のような天気では、川岸の緑はすっかりくすんでいるだろう。でも、対岸の低い山並には白い霧がたなびき、幻想的な眺めが車窓に現れるはずである。そんな景色が見てみたい。

 やがて勝沼ぶどう郷を過ぎれば、左窓には甲府盆地が広がるはずだが、そんな眺望も、今日は白くけぶっているに違いない。白い白い車窓だ。

 甲府を経て、列車は高原へと向かう。遠くの山並は、無論見えるはずもない。沿線の新緑も、陰鬱だろう。そんな景色の中を、純白のE257系は往く。すでに信州は目の前だ。ようやく遠くへ来たなあと感じるだろう。

 信州に入って、小淵沢、茅野、上諏訪、下諏訪、岡谷、塩尻と停車駅を重ねていく。そして、終着松本に到着するのは、昼前の11時57分である。

 松本に着いたら、ぜひ松本城を訪れたい。ちょうど先週、城めぐりを特集した雑誌を衝動買いしてしまい、お城の魅力に取り付かれているところでもある。

 その後は、大糸線でも、篠ノ井線でも、どっちでもいいから、信州の奥に進みたい。大糸線も捨て難いが、やはり篠ノ井線の普通列車が良い。あの、姨捨駅のスイッチバックは、いつ訪れてもワクワクする場所だ。

 特急「あずさ」9号を目の前にして、私はそんな想いを巡らせていたけれど、ふと我に返り、となりのホームの快速電車におとなしく乗り込んだ。心の行先は、はるか信州だったけれど、現実の行先は、目と鼻の先の荻窪であった。


特急「あずさ」9号 中央本線新宿駅にて 2010.5.24



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by railwaylife | 2010-05-24 23:36 | 中央本線 | Comments(0)
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