ISO感度

 以前から、夜の列車を撮りたいと思うことが多かった。それで、どうやったら夜の写真がよりきれいに撮れるだろうかとずっと考えていた。今持っている古めのデジタル一眼でもそこそこの写真は撮れていたが、もっと暗いところでもきれいに、また手軽に撮れないものだろうかという思いがあった。

 暗いところできれいに撮る最も良い方法としては、長時間露光のバルブ撮影が挙げられる。しかしその方法は、カメラを安定させるために三脚を使わなければならない。鉄道の敷地外で、通行人の邪魔にもならない場所なら三脚を立てても良いのだろうが、駅のホームで三脚を立てるのはどうかという気がする。

 ホームの端の、利用客に迷惑がかからない場所で一人二人がおとなしく構えている程度なら問題がないが、注目を浴びる列車をバルブ撮影するとなれば何人もファンが集まるわけだし、そうなると三脚の設置場所をめぐって争いが起き、罵声や怒号が飛び交ったりすることもあるとかで、迷惑以外の何物でもない。また、ホームの端は乗務員や駅係員の業務用通路になったりしている場合もあり、そんなところに三脚を立てるのもどうかと思う。

 それに、バルブ撮影は通常、被写体の列車の編成全体を捉えようとして、線路を挟んだ向かい側のホームから行うことが多い。そうなると、三脚を構えている方のホームに別の列車が入線してきたときが危ない。三脚の脚が、いわゆる黄色い線の外側に出ていたりするのは言語道断である。

 とにかく、ホームで三脚を使用するのはいろいろと危険があり、また他の利用客の迷惑にもなるから、止めるべきである。実際、先日訪れた大船駅には、ホームでの三脚使用を禁止する貼り紙がでかでかと貼り出されていた。過去に余程問題になることでもあったのだろうが、それでも583系を撮るために三脚を使っている輩がいたから、やはり鉄道ファンの品性というのは疑われて然るべきである。

 とにかくバルブ撮影という選択肢は外して、手持ちで夜の列車をきれいに撮るにはどうしたら良いかと検討していくと、素人考えではカメラのISO感度をより上げれば良いのではないかと思い付く。

 それでISO感度の値が大きなカメラを探してみた。できればデジタル一眼で検討したかったが、今は金額的に手の出るものではない。そのため、より安価なコンパクトデジタルカメラに絞って探すことにした。実はちょうど、コンパクトデジタルカメラを買い換えようかとも考えていたところでもあり、どうせ買い換えるならISO感度の大きなものを選ぼうと思った。

 最近はコンパクトデジタルカメラでもISO感度の値が大きなものが多い。そもそもフィルムカメラを使っていたときは、ISO感度の値はフィルムに依存しており、だいたい100か400であった。値段的には400の方が高かったが、それでもまあ400くらい買っておこうかというところであった。店頭には800というフィルムもあったが、それは「消耗品」であるフィルムの値段としては高い気がした。

 それが今のデジタルカメラでは、800、1600は当たり前の世界で、値は3200、6400、13800とどんどん大きくなっている。フィルムのISO感度とデジタルカメラが持っているISO感度の値は単純に比較できないのかもしれないが、フィルムカメラの時代に100だ400だと言っていたときからすれば、ISO13800なんて天文学的数字である。

 ただ、それだけ大きな値を備えていても、実際にその値で撮ってみてきれいに撮れるのかという問題もある。ISO感度を上げると、画質が落ちるという欠点もある。私はネット上で、ISO感度の値が大きいコンパクトデジタルカメラの評価をいろいろと調べてみたが、実際に使えそうなのはISO800くらいまでだというコメントが多かった。また、ある家電量販店のカメラ売り場の店員が言うには、ISO感度の大きさというのは、性能を良く見せるためだけのものであるということであった。つまり「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」というわけで、実際にISO感度を大きく上げても暗いところできれいに撮れるかどうかはわからなかった。

 それでも私は、そうした実態を承知した上で、面白半分でISO感度の値が大きなコンパクトデジタルカメラを買ってみた。どうせなら値が大きい方が良いということで、最大13800まで付いているものにしたが、すでに最新機種ではなかったため、1万円台で購入できた。

 このカメラを購入したのがちょうど先日の福岡行きの直前であったため、福岡にも持って行って、いろいろと実験をしてみた。そして、帰京後もあれこれといじって、最初の命題である「暗いところできれいに列車を撮る」ということにも先日挑戦してみた。

 そのためのちょうど良い被写体として、上野駅8番線に佇む489系「ホームライナー古河」を選んだ。

 まずは通常モードのISO3200で撮ってみた。残念ながら、暗いところは画質の粗さが目立つ気がする。
f0113552_2314035.jpg
 
 遊びでこうやってみると、何だか「こくてつ」っぽい。しかし、粗さが余計に目だってしまう。
f0113552_23143392.jpg
 
 ISO感度を上げるとやはり画質に難があるが、このカメラには「高感度低ノイズ優先」というモードがあり、それは暗いところでもノイズを抑えることができるとされている。それを使って撮ってみる。
f0113552_2315048.jpg

 このモードではISO感度が1600に固定されてしまうが、その名の通り、粗さはやや軽減される気がする。

 さらにもう一つ、白とびを抑えるというモードがあり、これでも撮ってみる。
f0113552_23153028.jpg

 上の「高感度低ノイズ優先」と粗さは変わらないが、より少し明るくなった気がする。

 もう少しいろいろやってみたかったが、実はこのアングルが撮れるのは、手前の9番線に常磐線の電車が入っていない三分間だけであり、あえなくここで時間切れとなった。

 撮った写真を見返してみると、やはりISO3200でも画質としては厳しいなという気がした。ただ、他のモードの画像はぎりぎり「見られる」画質かなとも思った。

 その後もいろいろと「暗いところ」で列車を狙ってみたが、駅のホームよりも暗いところになると「低ノイズ」モードでも粗さが目立つように感じた。なかなか難しいものである。

 こうなると、画質の粗さをどこまで許容できるかということになる。それはもう自己満足の世界で、自分が良いと思えば良いし、粗さに耐えられないと感じれば捨てれば良いということになる。容量の許す限り、いくらでも無駄に撮れるのがデジカメの良いところだから、これからもいろいろと試してみたいと思う。

 そもそも私は写真家ではないし、手持ちのカメラの性能も限られている。その中で、無理をせず、撮れるものを撮っていきたいと思う。私にとって、写真というのは、自分の記録や記憶を補完するものであり、写真を撮ることが主ではない。大事なのは、そこにある想いだ。だから、この新しいカメラが、私の鉄道に対する想いを少しでも遺していくための助けになってくれたら良いと思っている。

 さて、こうして「暗いところで撮りたい」という目的で買った新しいカメラであったが、その手軽さもあって、私は常に持ち歩き、いろいろと活躍している。特に最近は、通勤や仕事の合間に201系を盛んに撮るようになっているが、そのときには重宝している。まだまだ使いこなせていないし、所期の目的も果たせていないが、このカメラを買って良かったと思っている。

 ところで、今回上野駅で試し撮りをしたときには、やはりホームに三脚を立てているファンがいた。しかもその人は、手前の9番線に常磐線の電車が入っているうちから三脚を置いていて、その場所が電車の乗車口の真ん前であった。それでは明らかに電車へ乗ろうとする利用客の邪魔になってしまう。これは絶対に良くない。

 また、8番線で「ホームライナー古河」を眺めた後に、寝台特急「あけぼの」が発車する13番線に行ってみたが、ここでは三脚を広げたまま手に抱えて闊歩している人がおり、それもどうかなと思った。今のところ、上野駅の駅員は三脚の使用を黙認しているようだが、今後いわゆる「最終日」に向けてどうなっていくかはわからない。

 鉄道ファンが、憧れの列車を目の前にして夢中になる気持ちはよくわかるが、やはり「周囲への配慮」というものがなくてはいけない。三脚を使わない私でも、そのことにはよくよく気を付けないといけないと思っている。


489系「ホームライナー古河」 東北本線上野駅にて 2010.2.18



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by railwaylife | 2010-02-28 23:26 | その他 | Comments(0)
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