日常を撮る

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 今年になってから、209系だ、201系だ、489系ボンネット型だ、14系寝台車だ、500系「のぞみ」だ、とJRの消え行く車両に夢中だが、足元も見ておかなければならない。地元を走る東急の電車のことである。

 近い将来、新型の7000系が、池上線・多摩川線の古参7600系・7700系を駆逐していくことは目に見えている。実際、昨年暮れには7000系の第5編成が新製投入され、代わりにダイヤモンドカットの7600系1編成が運用を離脱している。7600系は3編成しかない貴重な存在だっただけに、残念なことである。

 7000系の投入ペースは予想していたよりもゆっくりであるが、今後着実に7600系・7700系の牙城を崩していくことだろう。そして、気付いたときには池上線も多摩川線も7000系と1000系だらけになり、7600系と7700系は全運用の中で1編成しか動いていないということにもなりかねない。あるいは朝夕のラッシュ時しか動かないということにもなるだろう。そして、そうなったときには、インターネットの掲示板に「今日の7700系は○○運用!」などという書き込みが出回り、沿線にはカメラを持ったファンが押し寄せているに違いない。

 7700系や7600系の普段を眺めるなら、多くの編成が稼動している今のうちだと思う。幼い頃から最寄りの路線で見慣れてきた顔を、沿線が静かなうちにじっくりと見ておきたいものである。

 やはり、気になる車両は普段から見ておくことが大事だなと思う。それに、日常の姿を捉えておく方が良い。末期になって「さよなら」とかいうマークを付けているところを狙っても、何ら価値はない。それは、非日常だからである。

 だいたい「なくなるから撮る」とか「珍しいから撮る」とかいう人々の心理は何なのだろう。どうしてあんなに人が集まるのだろうか。淘汰が進み残りわずかになった車両や、特別に走る列車は「ネタもの」などと言われてありがたがられるが、そうやって集まった人々の中には、列車の中で騒いだり、挙句の果てに線路内に侵入して列車のダイヤを乱したりする者も出てくるから、呆れて言葉もない。

 とは言うものの、かく言う私も、そういう「ネタもの」についつい気が行ってしまっていたから、あまり大きなことは言えない。幼い頃から強烈な憧れを抱き続けてきたブルートレインへの惜別の想いは格別としても、それ以外の車両に対する想いはいかばかりなものだろうかと考えてしまった。

 でも、最近は周囲もそういう「ネタもの」への注目を煽るようなことをしているから良くない。鉄道雑誌では「絶滅危惧種!」とか「さらば○○!」とかいった特集を大々的に組み、そういう列車の撮影地を紹介したり、あるいは「今のうちに撮っとかないと」とみたいなコメントを載せて、ファンを煽り立てている。また、インターネットのニュースでも、このところふつうの社会ニュースに車両の引退の話題が載ったりするから、社会全体の注目度も上がっていると言える。

 そんな風潮によって、私も一種の「ブーム」に踊らされていたのかもしれないなと反省した。そして、下手ながらに写真を撮るにしても、いわゆる「ネタもの」を追いかけるのではなく、本当に自分の気に入った車両や風景を追い求めるべきだと思った。

 そんなこともあり、私は今のうちから地道に東急7600系や7700系を追いかけようと改めて考え直した。あくまでも、その車両の「日常」を記憶に残していくつもりである。

 ただもちろん、余命わずかな「北陸」や「能登」は最後まで見届けるつもりであるし、通勤や仕事の合間の201系の追っかけも続けようと考えている。しかし、いわゆる「ブーム」には踊らされることなく、常に鉄道の「日常」を追いかけようという意識をまず持って、自分の記憶に、今ある風景を残していきたいと思う。


白梅と東急7700系 東急多摩川線沼部駅~鵜の木駅にて 2010.2.21



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by railwaylife | 2010-02-22 23:54 | 東急7600・7700系 | Comments(0)
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