甲州ふたり旅

f0113552_22182051.jpg

 知り合いから青春18きっぷ二回分を譲ってもらったので、8月30日の日曜日に、妻と二人でちょっとした日帰りの旅に出ることにした。目的地は甲州である。中央本線での旅だ。

 休日の朝にしては早起きして、新宿発9時06分のホリデー快速「ビューやまなし」号に乗った。朝から空がどんよりしていたが、新宿駅を出る頃には車窓に雨粒が付き始めた。

 私は幼い頃から何度となく中央本線に乗ってきたが、妻は立川以西に乗るのが初めてのことであった。妻には高尾辺りからの山深い車窓を楽しんでもらいたかったが、空は白いままで、木々の緑は生気を失い、いまひとつの眺めであった。やがて現れた桂川の川面も冴えないものであった。

 それでも、新大日影トンネルを抜けると薄日が差してきた。そして10時53分着の勝沼ぶどう郷で列車を降りた。

 私一人の旅であれば、列車に乗ることと史跡を巡ることで終わってしまうが、妻が一緒だと行先は変わる。勝沼ぶどう郷では、ワインを楽しもうということにしていた。駅から見える「ぶどうの丘」という観光施設に行き、ワインカーブで試飲を楽しんだ。いろいろな種類を飲んでいるうちに、味がだんだんわからなくなってきたが、気分も良くなってきた。

 レストランで昼食を済ませてから、葡萄畑の間をブラブラ歩いて駅へ戻り、13時28分発の下り普通列車に乗った。勝沼ぶどう郷から次の塩山にかけては、甲府盆地へ向けてグッと下って行くところで、眺めも良い。晴れていれば盆地に点在する白い建物がキラキラとして印象的だが、あいにく空は曇って、平凡な眺めになってしまった。それでも妻は、盆地の景色を楽しんでいたようである。

 甲府盆地に入り13時49分着の酒折で下車する。また日差しが出て暑い中を駅からしばらく歩き、甲斐善光寺を参拝した。ここではお参りをして、巨峰のソフトクリームを食べただけで、慌てて駅へ戻る。

 というのも、私が帰路の列車の切符を買い間違えていたからである。帰路もホリデー快速「ビューやまなし」号に乗るつもりで、甲府からのグリーン指定券を取っていた。しかし、グリーン車の指定席は青春18きっぷでは利用できないことが、行きの列車の車内放送でわかった。

 そこでグリーン車に乗るのは諦め、ホリデー快速の始発である小淵沢から自由席に乗ることにした。そのために、酒折発14時59分の普通列車小淵沢行きに乗った。

 甲府を過ぎしばらく走ると、車窓はより一層のどかなものになってくる。午後の日差しに照らされて、久々に115系電車の豪壮な走りに身を委ねていると、ウトウトとしてきた。気持ちの良い居眠りであったが、妻にすぐ起こされてしまった。

 15時56分に小淵沢に着く。ここですぐにホームのホリデー快速の乗車口に並べば、帰路も座って行けると思っていたが、すでに乗車口には長い行列ができていた。自由席に座るのはもはや無理のようであった。

 そこで私は窓口で、グリーン指定券を普通車の指定券に乗車変更してもらうことにした。そうすれば差額も返ってくるし、指定券が無駄にもならない。

 ところが、改札を出て窓口へ行くと、長蛇の列ができていた。夏休みも終わりに差し掛かって、特急で各方面へ帰る客が多いようであった。おまけに窓口で何やらもめていて、なかなか列が進まない。ホリデー快速発車の16時17分まであと十分、あと五分と迫ってきて、焦ってくる。ホームで待たせていた妻も電話してきて急かせる。ようやく五分を切ったところで順番が回ってくる。急いで乗変を依頼して、出てきた指定券と差額の返金をわしづかみにし、ホームへ駆け上がった。どうにか間に合ったが、危ないところであった。

 指定された席は、二階建て車両215系の一階席でも二階席でもなく、車端部の平屋部分にある席であった。それでもワンボックスを終点まで二人で独占できたので、のんびりと帰れた。

 甲府辺りまでは西日が穏やかに差していたものの、次第に雲が増えて、暗くなってきた。甲府盆地を抜け、山間に入るとさらに暗くなり、もはや日が暮れたようになった。やがて山肌には白い霧がかかり始めた。そんな景色も、山岳路線ならではだと思った。

 小仏トンネルを抜け東京都へ戻る頃には本当に日も暮れて、雨も降り出した。濡れた街灯りを見送るうち、18時53分に終着新宿駅へ到着した。ホームに降りると、雨が本降りだったので驚いた。そして短い旅は終わりを告げた。

 一人旅のくせが付いている私は、列車の車窓を見ているとつい景色に見入ってしまう。また、史跡では一人でいろいろと考えを巡らせ、口数も少なくなる。そんな私に、妻は少し物足りなかったようだ。もっと、ふたり旅の会話を楽しめば良かったと思う。でも、これに懲りずに、またふたり旅をしてもらいたいものである。


写真は勝沼ぶどう郷駅のはずれにあったEF6418号機 2009.8.30



にほんブログ村 鉄道ブログへ
by railwaylife | 2009-09-01 22:22 | | Comments(0)
<< 秩父ふたり旅 永平寺線の夏 >>