たそがれ急行

 かつて宮脇俊三氏はその著書の中で、寝台特急「トワイライトエクスプレス」を「たそがれ急行」に改称したいと綴っていた。



 年の暮れの夕暮れ時、身近なところで急行電車の往く風景を見送っていたとき、その「たそがれ急行」という言葉が不意に頭に浮かんできた。
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 それにしても「たそがれ」というのはいい言葉だ。その語源は、漢字をあててみればわかる。もともとは「黄昏」ではなく「誰そ彼」である。人の見分けもつきにくくなるような薄暗さ、ということである。

 それに比して英語の「トワイライト(twilight)」は、明と暗の中間の光を示す言葉だという。接頭辞のtwi-には、二つとか二重を表す意味があるらしい。

 どちらも夕暮れ時を表す言葉ながら、かたや人のさまを表し、かたや光のさまを表している。

 光のさまを表す方が幻想的ではあるが、人のさまを表す方が温かみはある。なにせ夕暮れ時は、寂しい時間である。誰か顔はわからないけれど、そこに人がいる。それだけで、なんとなくホッとするものである。



 ところで、冒頭に引いた宮脇俊三氏の文章をもう少し正確に引用すると「たとえば「トワイライトエクスプレス」を「たそがれ急行」とするなどの改称案一覧をつくってみたいと思っている」と書かれている。その改称案一覧を、ぜひ拝見してみたかったものである。


東急
6000系電車 東急大井町線上野毛駅~二子玉川駅にて 2011.12.17


参考文献 宮脇俊三『線路の果てに旅がある』(1994年、小学館)
by railwaylife | 2012-01-13 23:24 | 東急 | Comments(0)
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