東急7600系は、7200系を改造して作られた車両である。先の「懐かしいポスター」という記事で綴っている通り、7200系という車両に幼い頃から思い入れのある私は、その車両の面影を残す7600系にも特別な想いがある。
ある日、7600系が多摩川線の運用に入っているという情報をたまたま得た。7600系は多摩川線と池上線の両方で活躍しており、どちらの路線の運用に就くかは日によってまちまちである。
それでその日、多摩川線の7600系を見に行ってみたくなった。私の日常の行動範囲からすると、池上線より多摩川線沿線の方が行きやすいからである。
東横線で多摩川駅まで行った私は、駅の改札を出て、多摩川線の線路沿いに歩き始めた。すると、最初の踏切近くに立派なタチアオイの花が見えてきた。
すかさず私はその花越しに、7600系を捉えた。
多摩川線は路線が短く、わずかな時間で電車が行ったり来たりするので、私は7600系が何時にどこを通るというところまであまり熱心に調べて来なかった。それでも、たまたま見つけたタチアオイの花のところへすぐにやって来たのが7600系だったというのは、何とも嬉しい誤算であった。
ただ、残念な誤算もあった。それは、上り電車の7600系が、手前の下り線に入って来たことである。これは、終着多摩川駅の到着番線の関係でよくあることだが、そんなことがまったく念頭になかった私が構えた構図では、7600系の顔が花にかかってしまった。
でも、これはこれでいいと思った。まさに花越しを往く7600系というさまである。
ところで、折しもこの日、池上線・多摩川線用の新造車両7000系7107Fが甲種輸送され、長津田まで送られてきた。
おそらくこの7107Fは、古参の7600系か7700系の一編成に代わって運用に就くのではないかと思われる。もし、7600系がその交代の対象ということになると、現在二編成しかない7600系は、残り一編成となってしまう。
一編成しかない、という車両を追うのは、けっこうつらいことである。だから、そうなる前に、もうちょっとこの車両を熱心に眺めておいてもいいかなとは思っている。
東急7600系電車(7601F) 東急多摩川線多摩川駅~沼部駅にて 2011.6.8