あじさい列車2010 第6章

 先日の中央本線の「あじさい列車」は、多少強引なきらいがあった。

 それで私はここ数日、中央本線に限らず、どこかにこれぞ「あじさい列車」という眺めのところはないものか、と探していた。

 しかし、これといった場所は見つからなかった。それで、全く別のものを追いかけていたところ、予期せぬところで私は「あじさい列車」と出会った。

 それは昨日、東中野で201系を見送った後にたまたま訪れた、山手線大塚駅でのことであった。

 ある列車を追うために大塚駅の近くをふらついて、また駅に戻って来ると、すでに日の入りの時刻が近付いて、辺りが少し薄暗くなり始めていた。もう帰るつもりでいた私は、駅の入口に向かっていたが、その駅前ロータリーにあじさいを見つけた。

 私は、別に線路際でなくても、あじさいを見るのが好きである。だからこのときも、何の気なしにあじさいに近寄って行った。すると、なんと花のすぐ近くに線路があるではないか。私は一気に色めき立った。

 すっかり忘れていたが、大塚駅には都電荒川線が通っていた。花沿いの線路は、この荒川線のものであった。つまりここでは、路面電車の「あじさい列車」が捉えられることになる。私は嬉しくなったが、人通りの多い駅前ではしゃぐわけにもいかないので、さりげなく花と線路に近付き、おもむろにカメラを取り出した。

 待つほどもなく、路面電車はやって来た。荒川線の車両には詳しくないが、何やら珍しい車両がやって来たので、さっそく「あじさい列車」として捉えてみた。
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 ところで、ここのあじさいは、線路と車道の間の植え込みに咲いている。車道はロータリーに面していて、そこには客待ちのタクシーが列をなしていた。私は、できればあじさいに近付いて、花越しの電車を捉えたかったが、タクシーの邪魔になりそうだったので、それは我慢し、少し遠くの歩道から「あじさい列車」を狙っていた。

 ところが、そのタクシーの並ぶ車道に、突如ママチャリに乗ったオバサンが乗り付け、植え込みのところへ自転車を置くやいなや、携帯電話をサッと取り出し、荒川線の線路内に踏み込んで、あじさいを接写し始めた。私は、あっけにとられた。

 私は普段あまり都電に関わりがないのでよくわからないが、路面電車の軌道内というのは、人が容易に立ち寄っていいものなのだろうか。見ていると、場所によっては、軌道とそれ以外の場所との境界が不明確であったりする。そして通行人も、わりと自由に軌道を横断している。しかも、電車が来ていても急ぐそぶりがなく、悠々と渡っている。これにはある意味、カルチャーショックであった。

 とは言え、突如現れたオバサンのように、道床に踏み込むのはどうかという気がした。それでも、車道側から花に近付くのは問題なさそうな気がしてきた。幸い、客待ちのタクシーの列も短くなって、邪魔になることもなさそうであった。

 そこで私は、思い切って花に近付いた。これで思い描いた通りに、花越しの路面電車を捉えられるようになった。
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 そして、電車が大塚駅前の停留場から出て来ようかという状態になったので、線路内にいたオバサンも、車道の方へ出てきた。私は、携帯のオバサンと並んで「あじさい列車」を迎えることになった。
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 こうしてまた、私の「あじさい列車」は一つ増えた。探すとなかなか見つからない「あじさい列車」であるが、とにかくこの花の時期に、いろいろな路線の線路際へ行ってみることは大事だなと感じた。

都電荒川線巣鴨新田停留場~大塚駅前停留場にて 2010.6.19



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by railwaylife | 2010-06-20 23:56 | 路面電車 | Comments(0)
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